第四話 魔族の反応 その二
イソナ達がレインストーム作戦を開始したが、その一方の報復対象者?被害者?でもある魔族達の反応を紹介しよう。
…………
さて、イソナ達がレインストーム作戦を開始した深夜のコリアーナ魔国の首都ピョンシーにある王宮。堅牢な石造りで無骨な造りが種族の性格を反映している。そして王宮内に有るゴブリンキングの寝所。
普通のゴブリンは人族の半分くらいの背丈ではあるがゴブリンキングは大型で背丈は人族と同じぐらいである。
情事のあとに疲れてぐっすり寝ているところ、寝所の外から呼びかける声にキングは煩そうに目を覚ました。
「キーッ、ギキ!?」
「ギ、キキー、ギッ、ギッキャッ!」
「ギーギ!?」
何やら王宮近くでよからぬことが起きたようである。ゴブリンキングは寝所から飛び出してバルコニーに出てみれば、王都にある駐屯地方面が炎上しているのが王宮からもよく見えた。
「キーッ!キッキッ、キーッ!」
ゴブリンキングは大層怒って怒鳴り散らしているので部下たちは恐れ慄いている。部下たちはゴブリンキングからの命令を受けて立ち去ろうとしたその時……。
どこからか甲高い音がしたかと思ったらバルコニーから正体不明の物体が飛び込み閃光を放つ。ゴブリン達は閃光によって目を潰されたのちにやって来た爆音、爆風によって耳が潰された。爆風とともに飛散した金属破片などによって身体はズタズタにされ絶命した。
王宮はゴブリン達には謎の爆発によって半壊。その場には生きているものは全ていなくなった……。
…………
場所は変わってシンシナーン魔国の首都ムクデン。国家主席兼軍委主席であるジンピンは何時ものように盛大に飲み食いして気持ちよく寝所に戻り安眠していたところ、安眠を妨げる爆音を聞いて何事かと飛び起きた。
「今の音は何だったんだ?」
眠気を振り払いつつ考えていると窓から強い光が差し込み新たな爆発音が発生して建物が揺れた。
「何事だ!」
ジンピンが窓に駆け寄って外を覗いてみれば駐屯地方面が燃え上がっていた。他にも幾つかの政府施設の方向が燃えている。
「何が起きているんだ?」
どの施設もこのように激しく燃える事態が想定できない。元々魔法が発達した世界なので化石燃料とかの可燃物を大規模に備蓄するような慣習はないだけに不可思議な現象だったのだ。
さらに敵対してる人族とは国境も直接は接触しておらず直接攻撃されることは一切想定していなかった。
ジンピンは急いで服を着ると外に向かって人を呼んだ。
「誰か状況を報告しろ!」
その時、一際激しい光が背後から迫った時、轟音とともに辺り一帯が崩壊。崩れゆく周囲を見ながらジンピンの意識は突然途絶えた。
そして瓦礫となった国家主席公邸だけがその場に残った……。
…………
そして激しい爆撃によって壊滅したコリアーナ魔国とシンシナーン魔国の現状の速報が壊滅から五日後にルシアーナ魔国、帝都ピエタリに届けられた。
もうすぐ昼を迎えようかという魔王城内の執務室にて魔王及びルシアーナ魔帝が決済書類を眺めているところに、その報告はもたらされた。
「陛下、シンシナーン魔国とコリアーナ魔国からの第一報が届きました」
参上したのは軍務省大臣。機密性の高い報告故に大臣自ら参上したのだ。
「ご苦労」
魔王は一言、大臣を労うと「極秘」と判が押された報告書を読み始めた。そして頷きながら暫く読んでいたが読み終えたようで報告書を机上に置いた。
「ふむ。これが全て本当だとしたら……。やっかいだな」
「はぁ、全く信じられない話ですが派遣した調査員達が全て同様の報告を上げています」
「すると報告にある人族の女に両国とも降伏の儀式を受け入れたのか……」
ここで言う降伏の儀式とは降伏側の代表者が降伏として仰向けに寝たところを勝者が足を乗せることで、それ以降は種族と国家単位で勝者に反抗しないと誓う儀式である。
「なんでもその人族の女は巨大な鉄の塊に乗って現れて火を吹く魔道具によって王都などを破壊したそうです」
「ふーむ、なるほど……」
魔王の手には現場をスケッチした絵があった。そのスケッチは遠方から描いたように思われるが、見るものが見れば一目で軍艦だとわかるシルエットだった。
…………
以上、魔族の反応でした。
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