第三話 レインストーム作戦
全ての作戦計画書が揃い。全てを承認することで作戦が発動された。艦隊は作戦に従って最適の攻撃場所に移動した。
そしてとある月のない深夜。人工的な明かりもなく艦隊は灯火管制にあるために海面も空も真っ黒だが星明かりで仄かに明るい。
「提督、全艦隊所定の位置に付きました」
私は
「よし、レインストーム作戦開始!」
「第一郡、攻撃開始せよ!」
事前に通達された作戦計画書に従って各艦隊が攻撃を開始。今回の作戦はタイミングが肝だ。攻撃に使うのはお馴染みのトマホーク巡航ミサイル。トマホークを使うので攻撃に参加するのは〈アーレイ・バーク〉級のみとなる。本陣たる第一と第二艦隊は予備戦力となる。全一〇艦隊ある〈アーレイ・バーク〉級を五艦隊ずつ分けてコリアーナ魔国とシンシナーン魔国に派遣。一艦隊ずつを一駐屯地に分けて攻撃を分担する計画だ。
そして攻撃初弾の弾着は全駐屯地同時としている。これはどこかに連絡が行って駐屯地が防御態勢に移ることを防ぐ為だ。
一艦隊に二戦隊いるので第一群と第二郡に分けて交互に攻撃することによって待機している郡はミサイル等の補給も行いトマホークによる連続飽和攻撃が可能となっている。日本史を学べば必ず出てくる織田信長による長篠の戦いを戦訓に取り入れた作戦である。
長篠の戦いを知らない人に説明するとすれば、日本の戦国時代に織田信長が鉄砲を数多く用意して(通説では三千丁だが正確な数は不明)鉄砲隊を三組に分けて順番に撃つことで、火縄銃であるがための欠点である次発を装填する手間がかかるのを解消したという三段撃ち戦法が有名であるが後世に脚色されたのではという話もあって現代では真相ははっきりとはしてないようである。
何が言いたいかと言うと休まず続けてミサイルを撃ち込めるので、敵はトマホークの
発令は終わったので後は作戦の推移を見守るだけだ。今は発射して飛んでいくトマホークの映像を眺めながら観測ヘリとして飛ばしているSH‐六〇BやSH‐六〇Jからの弾着観測を待つばかりである。
ミサイルが飛んでいく姿はロケットの打ち上げとか中東で起きた戦争映像とかで見たことは有る。戦艦ミズーリがトマホークを発射している姿は色々な意味で印象に残っている。
さて当事者として轟音と激しい輝きを伴ってトマホークが飛翔する様子は味方なら頼もしいという感じだよな。撃たれる方には成りたくないものだ。
トマホークは発射時は固体ロケットブースターにて発射されるが、初期加速を終えた後は固体ロケットブースターは切り離されて内臓のターボファンエンジン。つまりはジェットエンジンにて亜音速で巡航飛行する。ロケットのように派手に火を噴いているわけではないので夜間の今は音はすれど見つけるのは困難であろう。
「提督、そろそろ弾着します」
オスカー副官から報告が入る。
私は前面の大スクリーンに固唾を呑んで注視する。緊張の一瞬である……。
「弾着、今!」
爆撃地点の駐屯地を映す観測ヘリからの白黒映像に一瞬何かが飛び込んだ後、爆炎と爆煙が上がる。他の駐屯地も同様の結果が映像として送られてくる。
「よし成功だ!」
船乗り猫達はハイファイブして喜び合っている。多くの猫の指は前足が五本で後ろ足が四本らしいのでハイファイブと言って間違いはないだろう。
「まだまだ気を抜くなよ。攻撃はまだ始まったばかりだぞ」
「イエス、マム!」
大スクリーンには次々と主要な建造物にトマホークが弾着する様子が何時までも映されていた。
第一郡の攻撃が終了して第二郡の攻撃が開始されたので私はオスカー副官に任せて休憩に入った。
戦闘配食を食べたりコーヒー飲んだりシャワーを浴びてリフレッシュした後に休憩も終わって戦闘指揮所に戻ってオスカー副官と交代する。
戦闘配食というのは戦闘中に食べる食事のことで昔の日本海軍は握り飯や牡丹餅だったらしいが現代では軍用に作られたレトルト食品を食べるようだ。
戦闘状況は既に終盤に差し掛かっている。主要な駐屯地を攻撃した後は政府関連施設。つまり王城とか高貴な身分の屋敷とかを爆撃。それが終わると軍需系の工場を爆撃。次に砦とか戦略的要衝を爆撃。今は主要交通網の中で戦略的な要衝となる橋などを爆撃中だ。
まぁ、こんな映像ばかり見ていると心が擦り切れる感じがするね。
そんな事をつらつらと考えているうちにオスカー副官も休憩が終わって帰ってきたので最後は総員で戦況を見守る。
「提督、全ての爆撃目標の破壊を確認しました」
「うむ……レインストーム作戦終了!」
船乗り猫達は立ち上がって拍手を始めた。どっと疲れたよ。
「諸君の奮闘によって初期作戦は成功裏に終わったが、まだまだこれからだ手順通りに次のキャピタルフォール作戦を開始せよ!」
次は首都制圧だ。
(作者注)
日本ではハイタッチ(和製英語)と言いますが本来の英語ではハイファイブと言います。今作では内容的にハイファイブとしています。
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