第四話 魔族の反応
フランチェスカから見て大陸の南東にあるシンシナーン魔国の首都ムクデン。高級料理店内のVIP室にてシンシナーン魔国軍幹部達が親睦を兼ねた昼食会を開いていた。食卓は円形でハイオークが骨付き肉を齧っては骨は床に捨てているので床は捨てられた骨でいっぱいだ。そして昼間から酒臭い。
卓についているのはジンピン軍委主席、キリアン軍委副主席、ユーキシア軍委副主席の三名である。ジンピン軍委主席は国家主席も兼ねている軍事独裁国家だ。
そんな時にフランチェスカより凶報がもたらされた。この時の軍幹部達のコメントを紹介しよう。
…………
「例の作戦の方はどうなっている?」
ジンピン軍委主席が骨付き肉を咀嚼しながら尋ねる。
「今の所は順調に進んでいる。全ては計画通り」
キリアン軍委副主席が両手を顔の前で組みながら答えた。
「これがうまく行けば魔王を出し抜いて魔族統一も夢ではない」
満足そうにジンピン軍委主席は頷くと酒を飲み干して、新たな酒を注文する。
新たな酒が来たので飲みながら今後について雑談していると、そこに外で待機していた従卒が入ってきて、ユーキシア軍委副主席にメモを渡す。メモを一読したユーキシア軍委副主席は表情を歪めて思案してから発言した。
「少し不味いことになった」
「不味いとは何だ?」
不機嫌そうに問うジンピン軍委主席。
「……信じられないことだが、フランチェスカに派遣していた第八歩兵師団が壊滅したようだ」
「なっ、なんだと!?第八は精鋭部隊のはずだ!!」
ダンッ!とジンピン軍委主席が卓を激しく叩いたので卓上のジョッキが倒れて床が酒を飲み込んでいく。
「俺も俄に信じられないが、報告によると僅かに生き残ったものしかいなかったそうだ。生き残っても重傷者だけだったとある」
「まったく信じられないな……」とキリアン軍委副主席はこぼす。
「しかし、困ったことになったな。第八はルシアーナとドイツェットとの戦で混乱に陥ったルシアーナを強襲して占領するための切り札だったんだぞ!」
忌々しそうに歯軋りしながらジンピン軍委主席は怒鳴る。
「何処のどいつか知らないが、必ず報いを受けさせてやるぞ!」とジンピン軍委主席は己に誓ったのだ。
…………
ドイツェット王国から見て東側にある魔森を挟んで国境を接するルシアーナ魔帝国の帝都ピエタリ。魔帝国中枢であるピエタリ宮殿内にある魔帝執務室にて魔王及びルシアーナ魔帝が執務を執り行っていたところに軍務省大臣が参上してフランチェスカとシンシナーンからの情報がもたらされた。この時の魔王達のコメントを紹介しよう。
…………
「陛下、執務中のところを失礼します。シンシナーンからの情報が入りました」と軍務省大臣が告げる。
「よし、聴こうではないか」魔王は読んでいた書類を置くと大臣に応接用のソファに座るように勧めると魔王は従卒に珈琲を二人分頼んだ。そして従卒が珈琲をテーブルに置いて部屋から退室すると魔王は大臣の対面に座って話すように
珈琲にて口を湿らしてから軍務省大臣は報告を始めた。
「信頼できる情報源からによりますとシンシナーン軍の北部戦区、五二軍団、第八師団がフランチェスカにおいて壊滅したそうです」と軍務省大臣。
信頼できる情報源とは実際のところ諜報部隊がシンシナーンに潜り込んでいるのである。いわゆるヒューミントと言う奴である。
「第八だと?記憶が確かなら……、あの師団は侵攻部隊の精鋭ではなかったか?」記憶の奥からすぐに情報を引き出す魔王。
「左様でございます」軍務省大臣は直ちに肯定する。
「相手はわかるのか?」
「何分、生き残りがわずかで重傷者ばかりなので情報が錯綜しており確かなことは分かりません」すました顔で答える軍務省大臣。
「お前がそれだけしか情報を持ってこないわけはないだろう?」魔王は少し考えてから不敵に笑う。
「こちらの情報網では遠距離の魔法攻撃があったのではと思われますが、現場には広範囲殲滅系魔法攻撃を匂わすような痕跡はなかったようです」
「ふむ、攻撃者は魔法以外の手段を使っている可能性があるということか」流石の魔王にも情報が不足していては見当がつかない。
「他には?」大臣の様子から魔王は次の報告を促す。
「今回の第八壊滅騒ぎで色々と探りを入れたところ、第八を使って我らの後背を突こうとしていたようです」
「ほぅ、泥豚のくせに小賢しいことを……。そちらの対策も任せる。新しい情報が入ったらすぐに知らせてくれ」
「はっ!」大臣は一礼すると退室していった。
「ふむ、どうやら何か動いているようだな……。この世界も面白くなりそうだ……」魔王は不敵な笑みを浮かべて独り言を呟くと、また書類の続きに目を通し始めたのであった。
…………
魔族側の二カ国の反応を見てきたが、人族側からは一枚岩に見える大魔族同盟国側にも色々と事情があるようだ。
(作者注)コリアーナ魔国の反応は一八禁のため割愛しました。
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