第二話 ダンケルン上陸
さて私こと山本イソナも連合艦隊を追いかけるか。街から離れた視界を遮る開けた場所でSH−二Fヘリコプターを呼び出す。艦長から司令官となったのに伴って副長から副官となったオスカーが出迎えてくれる。機長とコパイロットも、もちろん猫だ。
「提督、お待ちしておりました」
「ご苦労、状況はどうなっている?」
私はヘリに乗り込みながら確認をする。ヘリ内部は対潜用の装備品が積まれているので狭い。私達が乗り込んだのを機長が確認すると直ちに離陸した。
「集結した艦隊はプライマウスから南の海岸に向かって航行しているようです。向かう先はノルマンドではないかと思われます」
私達は周辺の海図を広げて見ながら今後の方針を検討する。
「私達が向かうのは北側の海岸が良いかと思う」
「では、ダンケルンはいかがでしょうか?」
ノルマンドからは適度に離れていて丁度良いかもしれない。
「よし、ダンケルンから上陸しよう」
SH−二Fヘリコプターの航続距離なら問題なくダンケルンへと到達できるのでこのまま海峡を渡って連合艦隊を先回りする予定だ。
我々の目的は先回りして連合軍の進攻進路上にある敵をあらかじめ間引いておこうと言う作戦である。間接的に連合軍に助力して連合軍が勇者チームと合流すれば魔王を叩くことが早めに出来る。スケジュールが早まれば元いた世界への帰還も早くなるという
ダンケルンに着陸する時に駆逐艦〈スプルーアンス〉を呼び出して、そこにSH−2Fを着艦させる。
私は艦長室でネイビーブルー色デジタル迷彩柄の作業服に着替えると、そのままスプルーアンスの
「艦隊を輪形陣に組んで南下する」
「アイアイ、コマンダー」
現在、〈スプルーアンス〉を旗艦に〈フォレスト・シャーマン〉、〈ギアリング〉、〈フレッチャー〉、〈ありあけ〉、〈はるかぜ〉、〈あまつかぜ〉、〈はたかぜ〉の八隻で〈スプルーアンス〉を中心に前方を〈フォレスト・シャーマン〉と〈あまつかぜ〉。
〈あまつかぜ〉と〈はたかぜ〉は新たに建造した艦だ。スペックシートは以下のようになっている。
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護衛艦 あまつかぜ(DDG-163)
満載排水量 4000トン
全長 131メートル
全幅 13.4メートル
ボイラー IHI・FW式D型2胴水管ボイラー×2
主機 IHI/GE衝動型蒸気タービン×2
出力 3万馬力
速力 33ノット
兵装
Mk.33 50口径76mm連装速射砲×2
Mk.13 単装ターター発射機×1
アスロック8連装発射機×1
Mk.15 ヘッジホッグ×2
Mk.2 短魚雷落射機×2
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護衛艦 はたかぜ(DDG-171)
満載排水量 5900トン
全長 150メートル
全幅 16.4メートル
主機 ロールス・ロイス オリンパスTM3B×2
ロールス・ロイス スペイSM1A×2
出力 7万馬力
速力 30ノット
兵装
73式54口径5インチ単装速射砲×2
Mk.15 高性能20mm機関砲 × 2
Mk.13 Mod4 スタンダードミサイル単装発射機 × 1
ハープーンSSM 4連装発射筒 × 2
74式アスロック 8連装発射機 × 1
68式3連装短魚雷発射管 × 2
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途中、魔物狩りをしながら進む。単独行動している魔物なら駆逐艦一隻でも事足りるので特に問題もなく航海は続く。
「艦長!水上レーダーに感あり!二時方向一〇キロに魔物の反応です!数は……かなり多いです!少なくとも千以上はいます!」
「確認を急げ!」
見張りから報告が入る。
「オークの軍団です!野営中と思われます!数はおよそ一万以上!」
「オークだと?オークて豚に似た魔物だったか?」私は独り言を呟くと、それを拾ったオスカー副官が詳細を報告する。
「軍旗からするとシンシナーン魔国のオークのようです」
「シンシナーンと言うとオークの国で、ここから南方でかなり遠い国だよな?」
「そうですね、やつらは侵攻する時にワイバーンを使っていましたからワイバーンから空挺降下してきたのかもしれません」
既に主砲の射程圏内だ、ここはやられる前にやるべきだろう。私達の目的は障害の排除だ。私はキャップを被り直すと各艦へ命令を伝達するためにハンドマイクを取る。
「全艦第一級戦闘配備に付け!これは訓練ではない、繰り返すこれは訓練ではない」
私はオスカー副官に向き直ると命令を下す。
「よし、殲滅するぞ各艦連携して目標の重複は避けろ、各艦への割当や詳細は副官に任せる」
「アイアイ、コマンダー!」
「各艦へ個別目標を伝達!」
「艦隊、右九〇度一斉回頭、単縦陣に組み直せ!」
艦隊を敵に対して横腹を見せることにより艦隊の全砲門を使えるようにするのだ。
「敵側面を抜けつつ攻撃するぞ!」
「左砲戦よーい!」
「各艦個別に攻撃始め!」
「主砲撃ち方始め!」
「ファイア!ファイア!ファイア!」
次々と敵陣に砲弾が撃ち込まれる。砲弾には炸薬が詰め込まれていて弾着する寸前に信管が作動して炸薬が爆発する事による破片効果で肉をズタボロに断ち切りオーク達をミンチへと変える。そして爆風効果で周辺を吹き飛ばし火炎は肉をこんがりと焼き上げる。
オーク達の野営地は阿鼻叫喚だ。こちらに気がついて吶喊してくる奴らもいるが機関砲の餌食となって穴だらけになる。血の匂いが遠く離れているにも関わらず、ここまで届く気がする。暫くは焼豚とか豚の生姜焼きとかは腹一杯な感じだな。
そして敵陣地があった丘は今では弾着跡と血の溜まりで埋まったのであった。
「攻撃終わり!」
「撃ち方終わり!」
砲撃の轟音が止み辺りを静寂が包み込んだ。耳栓をしていても残響が残っている気がするほどだ。
「残敵はどうだ?」
「動いている敵は見当たりません。殲滅できたようです!」
「一応、残敵を確認しつつ掃討して先に進むぞ」
「アイアイ、コマンダー」
オーク掃討作戦も終了して当初の進路に戻すと単縦陣から輪形陣に戻して警戒しつつ航海を続ける。
「艦長!一〇時方向、距離一〇〇キロメートルに
電探担当猫から報告が艦長に上がる。
「何かわかるか?」
「まだ遠いので未確認飛行物体としか……。いや速度は時速一二〇キロメートル!かなり速いです!」
「この世界の飛行生物というとドラゴンかな?」
「提督、未確認飛行物体が高速で接近中です。どうしますか?」と艦長。
「とりあえず確認しないとなんとも言えないな。とりあえず警戒態勢を維持して何時でも発砲できるようにしておこう」
「アイアイ、コマンダー」
その時、また続報が入ったのだ。
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