第三話 威力偵察
私達は魔物狩をするために駆逐艦〈ギアリング〉でラネスターに向かって航海を続けた。
「艦長!ソナーに感あり!巨大海中生物……?いや、海洋性魔物です!」
「水雷戦用意!」
「水雷戦用意!」
「右舷魚雷戦用意!」
〈ギアリング〉には二一インチ五連装魚雷発射管が二基。爆雷投射機が六基。爆雷投下軌条が二基ある。これで仕留めようという話だ。艦体後部にある二一インチ五連装魚雷発射管が旋回して右舷に指向する。
「一番と二番の魚雷発射用意よし!」
「攻撃始め!」
「撃て!」
魚雷が二本発射されて目標に向けて進むが目標近辺を通り過ぎようとした所で魚雷の反応消失。
「やっぱり当たらないか」
激しく動く魔物に対して無誘導の魚雷ではあまり効果がない。
「次は爆雷を使ってみるか……」
思案していると敵がいた辺りで爆発音と水柱と水飛沫が上がる。
「艦長!敵を撃沈した模様!」
「えっ!?」
私も双眼鏡で目標海域を見てみると魔物が浮かび上がっている。なんか内部で爆発があったような有様だ。
「もしかして餌だと思って魚雷を食べた?」
近寄ってみると巨大なイカが浮かんでいる。クラーケンと言う奴だな。とりあえず売れるかもしれないので亜空間に収納しておく。
「この調子で魔物を片付けていこうか……」
なんとも偶然頼りである。
航海中に魔物を片付けながら進んでいると前方にラネスターのあるブラベー川の河口が見えてきた。
私はCICに入って指揮を執ることにした。
「そろそろ敵の防空圏内に入る頃だ。対空警戒を厳とせよ」
「イエス、マム!」
「対空レーダーに感あり!方位角一二度。距離は五〇キロメートル。数は三です」
「対空戦用意!」
「対空戦用意!」
四〇ミリ四連装機関砲二基と四〇ミリ連装機関砲二基の合計一二門の砲口が敵に指向する。有効射程一万メートルまで引きつける。どうやら何時ものワイバーンのようだ。
「攻撃始め!」
「打ち方始め!」
攻撃が始まると四〇×三六四ミリR弾が弾幕を作り敵に向かって吸い込まれていく。ワイバーンは狩り慣れているので狩りとしては楽な方だ。
攻撃開始して直ぐに脅威は排除されたので引き続き威力偵察を進める。
ブラベー川と支流の合流地点から上陸する前に陸上に見える魔物たちを艦砲射撃で叩くことにした。以前も見たゴリラ鬼型魔獣が多数見える。
「砲撃戦用意!」
「砲撃戦用意!」
五インチ連装砲三基が左舷側に回転する。三基六門の砲口がMk.三七GFCSの指示に従って陸上の目標に対して砲上下角度を調整する。
「攻撃始め!」
「撃て!」
連装砲なので一門ずつ間隔を開けて砲撃する。連装砲を二門同時に射撃すると音速を超える砲弾の衝撃波が隣の砲弾に干渉して照準がずれてしまうので、それを避けるために間隔を開けて砲撃しているのだ。
砲弾が次々と着弾して炸裂して周囲を魔物ごと吹き飛ばす。暫く砲撃すれば砲撃中心地は更地となって現れる。
「上陸開始せよ!」
「上陸開始!」
この場合の上陸はご存知の通り艦ごとの上陸だ。まったく地球基準で考えると非常識な話である。
艦は亜空間で陸地を切り裂くように上陸して進む。砲撃の音に驚いて逃げるのではなくて音を聞きつけて散発的に魔物がやってくる。それを電探で捕捉しては有効射程内に入ったら砲撃するという事を繰り返しつつポンタイヴィーを経由してブリエックの港まで、つまり西に突き出た半島の根本を南から北へと縦断したのであった。その間に狩った魔物は軽く千を越える。あまりにも多いので魔物の死体は必要以上に回収もしていない。
戦闘も行っていたが各地に潜んでいたパルチザンの皆さんにはチョコレートを配って回ったのでたいそう喜ばれたよ。そこで目的である情報収集も果たせたので作戦としては成功だったと言っても過言ではない。
余談だがパルチザンと接触する時にはスキルオフにして戦場サラリーマンとなって徒歩で歩いて回ったので非常に疲れた。駆逐艦で乗り付けるのはどう思われるかわからないのでオフにしたが、おっさんの方が怪しまれないで済むので正解だった。営業職で食っていたから、こっちの方が本職なので慣れているのもあるな。
パルチザンの皆さんからの情報によると、この近辺の人類側は半島に押し込められてはいるが押し込まれた後は魔物の積極的な攻撃は止まって、出ようとすると攻撃してくる感じのようだ。まぁ、餌でも確保しているつもりなのかもしれないな。
ブリエックの港についた時には〈ギアリング〉のレベルはカンストして次の建艦が可能になっていた。
「さて、次は何処に行こうか……」
「次の艦を建造するなら後方が良いかと思われます」
「するとエンゲルシュ連合王国辺りが良いかもな。あそこには戦火も及んでいないし……。よし、エンゲルシュに向かうぞ。副長、エンゲルシュのどこに行くのが適当か?」
「プライマウス辺りがよろしいかと」
プライマウスはエンゲルシュ島の南端にある西に伸びた半島にある港町だ。
「わかった。後は任せる。艦長室にいるから何かあったら起こしてくれ」
「アイ、キャプ!」
こうして〈ギアリング〉による威力偵察任務は終わったのだった。
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