第二話 今は雌伏して時が至るのを待つ

 私と猫共達とナンテスを出港して海へ退避してから数日が経った。現在はローリエ川の河口から、おおよそ六〇キロメートルの所にある島の湾岸に停泊している。近くには小さな砂浜があるので時々上陸しては情報収集したりしている。現在は電探にて監視任務を続行中だ。


 監視結果や各地に潜入して情報を集めた結果はかなり悲観的なものだった。フランチェスカ王国の王都は陥落した模様。ただ王族は隣の島国であるエンゲルシュ連合王国に亡命政府を立ち上げているようだ。フランチェスカ王国の国土は三分の二が敵国に奪われて今も地下に潜って激しい抵抗活動が続いている。敵も全ての土地を支配下に置いておくのは無理らしく幾つかの占領地は殲滅して焦土化して後は放置しているようだ。


 ドイツェット王国には勇者がいるのでなんとか戦線を維持しているようだがフランチェスカ王国が陥落した影響で周囲を包囲されてしまい苦戦しているようだ。あの高校生三人組は元気にやっているようで何よりだ。是非とも盛り返して魔王を討伐して欲しい。


 状況が見えてきたのでそろそろ私も動きたいが今は待機状態だ。何故ならこれまでの戦闘で駆逐艦フレッチャーのレベルがカンストして別の駆逐艦が建造できるようになったんだよね。おまけに海上自衛隊の護衛艦〈DD−一八三ありあけ〉も建造出来るようになった。これは〈フレッチャー〉級なんだけれど自衛隊に貸与された艦があったようで別のツリーが出来たようだ。


 とりあえず海自は置いといて米海軍駆逐艦の次級の建造が出来るようになったので現在は亜空間工廠にて建造中だ。それをのんびり待っているところである。今は甲板にてデッキチェアを持ち出して日光浴中だ。こうしているとビーチに保養に来たセレブみたいだが今は戦時中である。電探で警戒してなかったらこうしてのんびりは出来なかったので、この様な時にはスキルにありがたみを感じる。女性にならなければ最高なんだけれどな!


「艦長!艦の建造が終了しました」

「ご苦労。今行く」

 副長の知らせを受けて艦橋に赴く。

「建造終了したらどうすれば良いのだ?」

「艦長の現在のレベルでは同時に出すことが出来ませんので一度本艦を収納してから取り出すことになります」

 同時に?今後複数の艦を出せるようになるのか、ちょっと楽しみ。ちなみに現在の艦長レベルは六四である。

「じゃ、砂浜に上陸してから本艦を一度収納する」

「イエス、マム!」


 駆逐艦〈フレッチャー〉は微速前進すると砂浜に乗り上げてそのまま進んで完全に丘に上がった所で駆逐艦〈フレッチャー〉を亜空間に退避させる。

「では、進水」

 厳密には既に艤装済みなので進水とは違うのだけれど気分的に進水式の気分だ。


 海上のちょっと上の亜空間から新しい駆逐艦が右舷側からヌルっと出てきてそのまま海上に落下するように着水して着水の影響で波が砂浜に押し寄せる。亜空間の効果が親切にも切られているので純粋に艦の体積によって大量の海水が押しのけられている。


「うぁぁぁぁぁぁ!」


 驚いて全力で退避するが海水でずぶ濡れだ……。


「ふ、副長ぉぉぉぉぉ……」

「進水式と言えばサイドウェイズと有りますので仕様です」

 確かに海外とかは船台の上に乗せて岸壁まで行き。右舷側から海へ滑り落とすんだよね……。


 私はがっくりと肩を落としたが気を取り直して駆逐艦を見る。


「駆逐艦〈ギアリング〉です」


 駆逐艦〈ギアリング〉。〈フレッチャー〉の次々級の駆逐艦だ。スペックシートは以下の通りだ。


^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^

駆逐艦 USSギアリング(DD-710)

満載排水量 3460トン

全長 119.1メートル

全幅 12.22メートル

ボイラー B&W製ボイラー×4

主機 GE製蒸気タービン×2

出力 6万馬力

速力 36.8ノット


兵装

Mk.38 38口径5インチ連装砲×3基

40ミリ四連装機関砲×2基

40ミリ連装機関砲×2基

20ミリ単装機関砲×11基

21インチ5連装魚雷発射管×2基

爆雷投下軌条×2基

爆雷投射機×6基

^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^


 主砲は単装砲から連装砲になった。四〇ミリ機関砲も二〇ミリ機関砲も増設されている。今回の戦闘で竜騎兵を落とすのに対空兵装が役に立ったので増強はありがたい。

 とりあえず魔物を狩ってレベリングしないとな。そんなわけでギアリングに乗艦してシャワールームに向かう。とりあえずこの海水でベトベトなのをどうにかしないと。


 女性の姿でシャワーを浴びるのもなんだか慣れてきて今は胸とかお尻とか普通に洗っている。まぁ、最初はドキドキしたけれど自分の体に一々欲情したりはしないからね。女物の下着もドキドキしたのは最初だけで日常的に着ていれば慣れて何とも思わなくなった。所詮布だしな。シャワーを浴びてスッキリして新しい制服に着替えると艦橋に向かう。


「副長。今、狩れそうな魔物は近くにいるか?」

「電探には幾つか反応があります。ラネスター辺りを威力偵察してみてはどうでしょうか?」

「それでは行くか。出港準備!総員配置に付け!!」

「アイアイ、キャプ!」

 私達は出港準備を終えるとラネスターに向けて針路を取り出港したのであった。

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