第二話 勇者のお披露目
そしてトリオが異世界にやって来てから暫く経ったある日。勇者の披露会を大々的に執り行う事になった。
ドイツェット王国の王都ヴァリンにあるヴァリン城内の中庭を一般に開放して中庭に面したバルコニーでトリオが勇者として挨拶するという段取りである。
早朝から衣装の支度が始まり、三人の勇者は朝早くに叩き起こされたが、元々地球にいる時も祖父達の朝稽古に付き合っていたので三人共朝は平気だった。見栄え的に磨き上げられた全身金属鎧を着せられたが勇者の補正もあって軽く感じるほどだ。ただ動きに制限が出来るので実戦向きではないというのが三人の一致した意見だった。
朝の十時頃には全ての準備が整い、まずは国王陛下がバルコニーに登壇すると城内に集まった民衆は歓声で迎えた。
「皆の者、よくぞ集まって参った。本日は異世界から呼び寄せた勇者たちを皆に紹介したいと思う」
「では、勇者たちよ参られよ」
陛下の合図と共に盛大なファンファーレが鳴り、トリオ達は手を振りながらバルコニーに登壇する。
「「「ちぃーす」」」
会場は一瞬、キョトンとしたが歓声が沸き上がった。
「斗有慎平だ」
「力丸依千也でーす」
「笈川涼」
「「「三人揃ってトリオでーす」」」
会場は一瞬静かになったが直ぐに大歓声に包まれた。
トリオは決まったという感じで披露会が終わると下がってきて関係者と握手していたりする。関係者は微妙な顔をしてはいたがトリオは全く気にしないでハイタッチ!していた。
披露会もその後にあった貴族を集めて行われた数々の披露会も無事に終わり数日後の夜にトリオは打ち上げに出かけるために街に繰り出した。
「打ち上げと言ったら酒だよな」
「それな!」
「よし、行こうぜ!」
一応、この世界では一五歳で成人で飲酒も一五歳から公の場では解禁されている。基本的に生水は飲まない世界なので子供の頃から薄めたワインとかを飲んでいる世界なので飲酒年齢は比較的に早い。トリオもこっそり宴会の席で祖父に酒を飲まされたりはしているのだが……。
宰相から事前に良い店を紹介してもらっているので抜かりはない。目的の店の前に来ると高級そうなファサードで普通は高校生では入れないような店であった。
「ヤバイな」
「ゲキヤバだよ」
「ゲロヤバ?」
宰相からの紹介状をドアボーイに見せると問題なく入れた。今夜は国庫からでは無く宰相個人の持ちなので支払いも心配ないのであった。
中に入ると大きな円形の室内の真ん中は円形の舞台となっておりその舞台を囲むようにボックス席が設置されている。舞台に近い席に案内されてトリオが革張りの高級ソファーに腰掛けると直ぐにホステスが三人やって来た。
「お客様、当店トップ三のホステスで御座います」
執事のような支配人がホステスをトリオに紹介した。
「アニカです」
「ビルギットです」
「コリーナです」
それぞれ朱、蒼、翠のナイトドレスに身を包んだ
「マジヤバ〜」
「マブイ!」
「ゲキマブ〜!」
この世界のドレスは胸の辺りが大きく開いておりドレスから溢れそうな双丘と何でも入りそうな深い谷間がトリオたちを魅了する。そんな感じでウェイ系の面目躍如の活躍で、どんちゃん騒ぎに突入したトリオ達。飲めや歌えやの大騒ぎをしていると……。
先程の執事さんに見えた支配人さんがやって来てトリオに耳打ちする。
「「「なんだって?」」」
とか言っているうちに宰相の部下たちが一斉にやって来てトリオを嵐のように連れ去っていった。
城に戻った所で宰相の部屋に通された。アルコール程度では勇者の毒耐性の前では片端から解毒分解されてしまうので実は酔わないのだ。ウェイ系の乗りで盛り上がっていただけである。
待っていた宰相の顔色は緊張の為か少しだけ青ざめている。
「勇者様方お楽しみのところ申し訳ありません。緊急事態です」
「一体何が起きたのですか?」と慎平がトリオを代表して宰相に尋ねた。
「……魔族の大攻勢が始まりました」と宰相はトリオに告げたのであった。
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