第四話 狩猟ハンター組合
結局、あれからも次から次へと湧いてくる魔物を撃破していたら、やっと湧いてこなくなったので適当な町に向かうことにした。
今私は艦橋にいる。レベルも上がったのでついに艦全体を呼び出すことが出来たのである。実際に呼び出してみると駆逐艦が地面を喫水線にして浮かんでいるさまは奇妙である。ウォーターラインの実物大艦船模型でも見ているかのようだ。一応浮かんでいるらしくてプカプカしている。
そして目の前に海図台がある。地図上で副長猫のオスカー、航海科の航海長猫であるブラッキーと検討しているところだ。レベルの上昇で猫達も呼び出せるようになったのだ。オスカーは黒猫だが鼻の辺りから首と胸のあたりが白い猫だ。ブラッキーは名前の通り黒猫だが喉の辺りと足はソックスをはいているかのように白毛だ。
「一番近い町は何処だ?」
「うにゃにゃにゃーん(ここから北北西にあるウルトという町です)」
「にゃーごにゃーにゃー(ハンター組合に行くなら南南西にあるナンテスが良いかと思います)」
「ふむ、今回の目的はハンター組合に行くことだからナンテスにしよう」
「「うー、にゃー!(アイ、キャプ!)」」
「針路を南南西に、両舷微速前進」
「にゃーにゃー、うーにゃーにゃー」
艦全体を出せたことで自前の足で歩き回らなくても良いのが有り難い。このまま順調に航海?が進めばいいが。副長に艦橋は任せて食事でもしよう。レベルが上ったことで食堂も開放されたのだ。食堂に行くとカフェテリア形式になっていてトレーに食べたいものを順番に乗せていく感じだ。
メニューはステーキとかマッシュポテトとかコーンとかミネストローネとかそんな感じのラインナップだ。まぁ、味は普通かな?食べられないことは無いし、味が無いものは自分で味付けして食べれば良いのでなんとかなる。米軍の基地祭とかで食べた味だよ。
異世界に来てアメリカンな食事になるとは思ってもなかったよ……。主計科の猫にお礼を言って食事をかき込んだ。猫が料理を作っているのも驚きだったけれど腹が減っては戦は出来ぬとも言うので気にしたら負けだ。ちゃんと薄手のグローブをして料理をしているところは現代的だと思ったよ。
食後にドーナツとコーヒーを飲んで落ち着いたところに副長のオスカーから呼び出しがあったので艦橋に登る。
「うーにゃにゃにゃお(艦長!もうそろそろ予定地点に到着します)」
「うむ、ご苦労」
艦は小高い丘の頂上付近で艦体を隠すようにして停止している。艦橋の部分だけは頂上から露出して観測できるようになっている。
私は双眼鏡で進行方向を覗いてみる。街の中心部には川が流れていて、その川を中心に街が発展したように見える。街の大きさは町と言うより市と言ったレベルかな?
「よし、いったん艦を隠すか」
私は艦を下船すると駆逐艦を亜空間へと移送する。見た感じは沈没していくように見えるが亜空間に隠れているだけだ。
ここからは歩きだ。流石に駆逐艦で市街地まで乗り付ければ問題が起きることぐらいは容易に想像できる。おっさんに戻りたいのだが魔物を亜空間に収納しているので魔物を売り払うまでは現状維持だ。
市街に入るには特に検問とかはない。魔物とかの対策はどうなっているのだろう?ラノベとかでは城塞を築いて魔物対策している話が多い。この市では外壁で囲むという事はしておらず中心にある領主の城が城壁と堀に囲まれているぐらいのようだ。街並みの感じではヨーロッパの古い家並みに似ている。
航海長のサポートを受けながら狩猟ハンター組合の方に向かう。ハンター組合は街の中心からやや外れの方にある。
レンガ造りの大きな建物がハンター組合のようだ。扉を開けて中に入ると酒場も無く、役所とか銀行の受付という感じの空間が広がっている。待合室のソファーで雑談しているハンターを数人見かける。
総合受付のところに誰も並んでなかったので行ってみる。
「こんにちは、初めて来たのですが……」
「今日はどういった御用ですか?」
受付のお姉さんは古風なドレスを着ている。
「狩った魔物を売りたいのですがこちらで良いですか?」
「狩った魔物の買取と査定は三番の魔物買取査定カウンターになります。ハンターライセンスはお持ちですか?」
(ライセンスは既に習得済みです)
おっと、副長から連絡が来た。心の方に聞こえてくる場合は猫語は聞こえないのだよね。最初の頃に色々と教えてくれたのも副長だっんだ。
(召喚された時に渡された手帳が身分証明とライセンスを兼ねています)
えっ、あれがそうだったんだ。召喚されたのでこの世界の身分証明とか無いと思っていたから助かったよ。ちなみにスキルを使っていない状態でも使っている状態。つまり、おっさん状態でも女性状態でも問題なく使えるようだ。そこは未知の技術なんだろうな。
「ライセンスは持っています」
「それなら三番にお進みください」
三番のカウンターに行って並ぶと整理札と申込用紙を渡されたので記入してからソファーで待つことにした。今まで現地人と普通に会話したり読み書きしていたけれど、なんかアシストされているようで普通にできている。便利だから良いか。
先程から、こんな場所に女子が珍しいのか周囲の男共から見られているような気がするな。私は本当はおっさんさ、残念だったね!周囲の男共!!
順番が来たので受付に行く。
「こんにちは」と申込書を渡しながら言う。
「ライセンスはお持ちですか?」
「はい」
「それではこちらに手を当ててください」
言われた通りに石版に手を当てると変な空間で渡された手帳が石版上に浮かび上がる。タブレットで本をめくる感じで中身を確認する受付嬢。
その上に申込書を置くと自動的に受付印が押された。
「では、この書類を持って次の受付に行ってください」
なんか役所てこんな感じだよなーと思いながら別の棟にある受付に。
そこは広い体育館ぐらいの大きさ。大きな魔物を運び込んでも大丈夫な感じだね。全体にひんやりしているので冷房でもあるのかな?受付のおじさんに書類を渡すと怪訝な表情を浮かべながら尋ねてきた。
「お嬢ちゃん、本当にこのリストにある魔物を狩ってきたのか?」
お嬢ちゃん?中身はおっさんなので違和感があるな。
「そうだ」
「で、どこにある?裏に馬車でも回してあるのかな?」
「ここに出してもいいの?」
「ここは冷却魔法で室温下げているから遠慮なく持ち込んでくれ」
ひんやりしていたのは魔法で室温下げているのか。
「すぐに出そう」
私は亜空間のシップヤードから取り出す。いきなり空いている場所に大量の魔物の山が出来た。
「お、お嬢ちゃんは空間魔法持ちだったのか……」
空間魔法?この世界には魔法なんて物があるのね。私のは魔法なんだろうか?ちょっと違う気がする。言ってみても分からないだろうから黙っておいた。
「しかし一体どうやって倒したんだか、穴だらけだぞ」
「それは秘密だ」
「まぁ、ハンターの手の内は基本的には口外しないものだからな」
おじさんは暫く思案した後に。
「これだけの量だと査定に時間掛かるな。三日後に来てくれるかな?」
そう言ってカードを渡してきた。
「次来る時には、この控えカードを受付で見せれば直ぐに取り次いでくれるから」
「わかった」
三日後か、どうしよう。金もないので街には泊まれないし……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます