第二話 デストロイヤーガール誕生
私は気が付くと丘陵地帯に立っていた。周囲には林が幾つか見えるだけで人工物は見当たらない。遠くには山も見える。はっきり言ってしまえば長閑な田舎だ。この世界も夏なのか日差しが暑い。眩しい日差しについ手をかざしてしまう。
「とりあえずスキルを確認してみないことには始まらないな……」
幸い周囲には人っ子一人見当たらないので独り言を言っても大丈夫だ。
「スキル・オン・デストロイヤー!」
なんとなく変身ヒーローっぽく叫んでみた。いい年したおっさんだが誰もいないし気分の問題である。
私は光に包まれると着ていた服が一瞬で塵となりリボン状に再構成される。周囲を人工衛星のように回転するリボンが幾重にも重なり、やがて体全体がリボンに巻かれた状態になる。リボンは光が解けると新たな衣服になっていく。そのプロセスは僅か〇.〇五秒で完了した。
「なんか、服が変わった!」
白い半袖の服だ。なんか腕が細い気がする。ムダ毛のない綺麗な腕だ。手先なんてまるで女性のように
下を見ると足元が胸で見えない……。
ん?胸で足元が見えないだと……?
胸にメロン大の膨らみが二つ付いていて私が動く度に揺れるのだが……?
とりあえず二つのメロンを両手で下からすくって離してみる。プリンのようにぷるんと大きく揺れる。これが世間で言うところの「たわわ」て言うやつか?
ほぅ。それではもう一度……。
て、そんなことやっている場合じゃねぇ!それも巨乳!?男だからバストサイズなんて全くわからないけれど!?
「なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
とまるで声変わりしてないような綺麗な自分の声!
両手で押さえても溢れる大きさの胸。巨乳の女性が肩がこると噂では聞くが確かに胸の重さで肩こりそうだ。
「鏡、鏡は無いかな!?」と思わず言ったら目の前に鏡が突然出てきた。状況的にありえないことが起きているので鏡が突然出現した事を気にする事もなく、とりあえず私は慌てて鏡を覗いてみる。
「……ええーー!?」
鏡の中には大学生ぐらいの美女が居るではないかっ!やだぁ!可愛いぃ!!こんな子を娘にしたいぃ!!
私が頬を撫でると鏡の中の美女も頬を撫でる。頬をつねると鏡の中の美女も頬をつねる。そして痛い。腰は柳腰というか、しなやかな細い腰つき。お尻はキュッと締まった小尻タイプ。私がお尻を突き出すと鏡の中の美女も可愛らしくお尻を突き出す。
うぇ!?もしかして私じゃないか!?
一瞬でも私にときめいた私を
「なんでおっさんの私が美女に……?」
(それは船だからです)
「なっ、なんだ!?」
誰かに話しかけられると言うより心の中に疑問に思ったことが心に浮かび上がる感じだ。心の中にどんどんとスキルについての概要が浮かび上がってくる。
(スキル・デストロイヤーとは、デストロイヤー【駆逐艦】の機能を呼び出せるスキルです。このスキルを発動すると女性となり、役職は艦長となります)
「おっさんが美女になって誰得なんだよ。艦長なら別に男でいいような……」
(仕様です)
「……仕様なら仕方ない」
職に付いたことある人なら分かると思うがクライアントから無茶振りな仕様を渡されることはよくあることである。最初のうちは、より良くするためにより現実的な提案などしては見るのだが頭の固いクライアントは絶対に仕様通りにしろと言ってくるわけで交渉が無駄になるだけなのだ。そういうクライアントに当たったら「仕様なら仕方ない」とスルーするしか無いわけだ。
(現状のレベル一では呼び出しに制限があり駆逐艦の装備単位でしか呼び出しが出来ませんので早急にレベル上げが必要です)
「もしかして、さっき鏡が出たのは駆逐艦の装備品なのか……」
しかしレベルてゲームみたいだな。一応、軍艦同士で戦うゲームはやっていたから馴染みはあると言えばあるのだが……。
もしかしてスキャンされた時にゲームを参考にしたとか……。まさかな……。
落ち着いてきたのでもう一度鏡を見てみる。服装をよく見てみたら映画とかでよく見る海軍のサマーホワイトてやつに似ている。帽子は女性用だ。髪は後ろでお団子に纏められている。
肩には階級章があるが軍装マニアではないのでなんなのか良くわからないがスキル知識によると大佐らしい。ゲームをやっている時に気になって階級制度を調べたことがあったけれど複雑で良くわからなかった。おっさんなので新しいことを覚えるのは大変なのだ。米海軍はキャプテンが大佐だから艦長のキャプテンとかけたとか……?有りそうで怖い。
下半身はスカートではなくてスラックスだ。これとは別にスカートもあるらしい。
服装を確かめていると警報が鳴り響く。
(対空レーダーに感あり!三〇の方向距離二五キロメートル)
「対空戦闘用意!」
(対空戦闘用意!)
考える前にスラスラと言葉が出てくる。これもスキルの力なのか?
同時に対空砲座が地面から出てくる。ボフォース四〇ミリ連装機関砲だ。銃座にはリアル猫型の水兵さんが配置についている。サイズは人間ぐらいの背丈だ。
猫型?
(軍艦には猫を乗せる仕様です)
確かに、第二次世界大戦まではシップ・キャットと言われる猫を載せてはいたけれどさぁ……。猫の水兵さんはちゃんと上半身だけセーラー服着ている。ちなみに下半身は履いていない。昔、そういうブロマイド流行ったよなと遠い目になる。
眼の前に出てきた双眼鏡で右に三〇度の方向を見る。北が〇度で南が一八〇度で方位を表している。
双眼鏡を覗くと大きな鳥が飛んでいる。いや鳥というより恐竜かな?プテラノドンみたいに見える。
(艦長、未確認物体はワイバーンと特定、すでにワイバーンはこちらを認識して攻撃態勢に入っています)
「ワイバーンてファンタジー世界でおなじみのドラゴンの下位種か……」
ボフォース四〇ミリ連装機関砲の有効射程距離は一万メートルなのでまだ射程距離に入ってない。
「十分に引きつけてから砲手の判断で撃て」
「うにゃにゃ!(アイアイ、キャプ!)」
猫さんの喋っているの分かっちゃったよ!猫語なのに!!ちなみに「アイアイ、キャプ」と言うのは「了解して実行します、艦長」と言う意味だ。
射程に入ったのでボフォース四〇ミリ連装機関砲が火を噴く。物凄い轟音が響き渡るので思わず両手で耳を塞ぐ。四〇×三六四ミリR弾が毎分三三〇発打ち出されてワイバーンに撃ち込まれていく。一瞬でワイバーンはボロボロになって墜落した。
「やっぱり四〇ミリ半端ねぇ……」
私はオーバーキルな威力に
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