星を眺めて見てみよう。

 異例の後始末の速さから空いた口が塞がらないが、今更いう事も無い。役目を終えれば帰還する、それが自然で適切な判断だ。

 「まだ近くにいるのかな?」

 「感知します..。」

「案内してくれるかな、この先にいるなら。絶対仕留めるべきだから」

一人残り探索を続けるコースケ。探すは元凶、一つの絶望、韻を踏むほど清々しい悪。

「どこにいる、カメレオン!」

➖➖➖➖

 「お前は本当に厄介な奴だった!」

 「そうか、悪いが自覚は無いな」

自称リーダーは正式なリーダー格の鋭い眼や感性に度肝を抜かれていた。

 「敵の目的が〝12星座の分散〟だと豪語された日には流石に冷や汗を掻いた、恐ろしい漢よ!」

「男だよ、買い被るな。」

コーティングフィールドは覆った場所をそのままトレースする。現在両者の顔を合わせるステージは見た目だけを目に入れれば元の城の一室と同じ。


「加減はいらんぞ、ジェイビス!」

「やれやれ、やるしかないのか..。」

共に一体化をした本腰の戦闘を開始、

偶然かこの二人は極端に相性が悪い。

「いくぞ!」

牛の頭部を模した大きな槌、対してジェイビスは単純な弓を用いる。充分な距離を持って魅せる弓にとって接近戦の打撃武器は強敵と言っていい。


「ふっ!」「効かんわ!」

射ったところで弾かれる、強度も威力もまるで足りない。

「連写数を増やすか?

 しかしそれでは一度の威力は変わらない。となれば...」

弓を大いに引く。数より質を取り、一発を極限に高めて、射ち放つ。

 「射ぬけ、トライデント」

「くうぉっ!」

重みのある一撃、しかし元々重量の槌はそれに耐えうる力有す。

「ふぬあっ!」「ダメか..」

矢は尽力するも散っていく。繊細な武器では圧されて負ける。

「どうしたものかな..?」

射手座というだけあって武器は弓のみ

多様な戦闘に望めないのは、指揮者としては恥ずべき力不足だ。

「曇るなジェイビス」「アローズか」

一体化した召喚獣は基本的に武器に成り代わるので意識はなくなるが、射手座の獣アローズは弓とは別に意識を背後に置ける。


「目立つものばかり目で追うと勝ちを流すぜ?」

「博打と同じにするなよ..。」

「多様な遣り方があるだろっていってんだ、アイツばかり直接狙うな」

目当ての馬が不調なら、他のアプローチをすればいい。力が足りなければ、タイミングに任せればいい。

「やってみるよ、セットを頼めるか」

「了解だ。

俺のセンスは利益を生むぜ」

「我は攻め入る、ブルハンマー!」

槌はモーションが大きい。一振りする度に、周囲に隙が生まれる。

「麻痺矢フォーポイント!」

足元の四隅を四角く囲い矢を放つ。


「なんだこれは、何処を狙ってる?」

「直ぐにわかる。」

「なっ...カラダが、動かん!」

〝フェアじゃない〟とジェイビスは頑なに使うのを拒んできたがアローズにとっては専売特許。足元に陣を張り、全体を痺れさせるトラップ矢法。

「続いていくぞ、陣の上に乗せろ」

「素直言う事聞くべきか?」

四隅に上から矢を重ね、新たに効果を付与していく。

「今度はなんだ」「まぁ見てろ。」

「うおっ、カラダが熱い!

熱い、いや...燃えているのか?」

「違うな、爆破するんだ。」「何⁉︎」

足元を爆源として火花が炸裂。

一気に爆風に呑まれ弾け悶える。

「貴様、やってくれたな..。」

「お前が勝負に負けてるんだぜ」

弓でも充分戦える。リーダーの威厳を見せつけたがその殆どがアローズによるもの。次は確実に、ジェイビスが力を発揮する番だ。


 「一つ、聞いていいか?」

 「..なんだ。」

「何故寝返った?

お前は、誰に従っているんだ」

場を纏める力。疑問を明確な理解に変換する役目、指揮者としての力で真実を暴く。

「正体はわからん

だが面白いと感じ乗った!」

「正体がわからない?

実体の無いものに従うのか。」

「我々が付いている者は、この城と同様成長し続けている。徐々に大きく、やがて世界を呑み込む強大な力となるだろう!」

「あの光の大きさは地域では無く、星座の輝きだったのか?」

「世界を呑み込むか..アホくさ。」

〝見た事の無いものを見てみたい〟という無邪気な感覚で世界を滅ぼそうというのだ。やはり仕切りには向いてない、独りよがりの牡牛座だ。


「それを仮に〝アレ〟と呼んでいるがアレが成長し続けるには充分な時間経過と、強い星座のエネルギーが要る」

牡牛座ケビンを含み他の連中は全て、己の意思で櫓を出たという。

「引き止めても無駄ということか..」

「その通りだぁ!」

「雨時雨」 「くっ、こざかしい!」

降らした矢の雨は宣戦布告。これより12星座筆頭では無く、一テイマーとしての戦闘へ入る。

「正面ストレート」「当たるか!」

挑発に放った一撃は平然と避けられ、牡牛を焚きつける要因となった。


「ブルストライク!」

躱して右にスライド後のサイドストレート、正面同様軽く避けられ不発に消える。

「柔いわジェイビス!」

「ハンマー持ちに言われてもね。」

その後身を左にスライド、同じく矢を射る避けられるという悪循環。

「馬鹿にしているのか!?」

「ブチ切れたぜ、暴れ牛かよ。」

「言ってる場合じゃない、危険も良いところだ」

槌を無造作に振り回す。数打ちゃ当たるは鉄砲の話、打撃は当てるべくして当たるものだ。

「どうするんだジェイビス?」

「厄介な事になった、まさか暴れ回るとは。仕方ない..直接やるしか。」

暴君に身一つで攻め入る。一先ずの目的は位置を設定し、定めた箇所に設置する事。

「はあっ!」「接近戦だと、バカか」

「潰れ砕けろ!」

ハンマー狂いに肉弾戦とは遂に判断を見誤ったか。生身で槌を受ける事があれば、確実に怪我では済まされない。


 「格闘はそこそこできるだろうが、

バリバリの肉弾戦じゃ押し負ける。

勝負事などしねぇアイツがそこまで無謀な事をするのか?」

「よし、見える。」「甘くみるな!」

「ふぅんっ!!」「かっ..。」

瞬間隙を生んだジェイビスに、渾身の槌が振り降りる。

「ジェイビスッ!」

打たれた左肩で、複数の矢が砕ける。

「此奴、矢をかまして衝撃を..。

無駄な事だ、そんなもので防げるとでも思ったのか?」

「多少は..防げるぞ...。」「むっ?」

ケビンの胸に直接矢を突き刺す。己で入れた、初めての一撃。

「無様だか受けてやろう、争いの礼儀だ。決して折りはしない」

「そう言ってくれると思っていた、感謝する。だからこそ..打撃を受け入れたというものだ。」

「なんだと?」「セット。」

ケビンの足元に、矢が屈折した角度で放たれる。

「随分と手間がかかるからな、覚悟はしていたが。」

「なにをするつもりだ!?」

「その足元の矢は避雷針だ。

しかし小さ過ぎて、他に場所にも伝染させる。」

火花が生じ、電流が走る。電気は正面ストレートの壁に刺さる弓に伝わり、その後右、左と繋がり上へ。

「雷は上からと決まってる、そこで決め手となるのがオレの一矢。」


「まさか貴様..!」

「だから言ったろう?

お前には〝感謝する〟って。」

「流石リーダー、やりおるわ!

フハハハハハハッ!!」

裁きの落雷は総てを赦す。

➖➖➖➖➖➖

 とある外れ

 「よし、こんなもんかなー。」

パーソナルデータやスケッチや己の腕で、そうしなければ正しい情報が得られないらしい。

「これだけ作ればもう充分だ。後は...プテラノドンを移動用に残して廃棄しちゃおうか、邪魔だしね♪」

薬やデータを組み込んで、己で造った古代のとかげ達は既に用済みらしい。


「数が多いね、久しぶりに一体化しようかな?」

サソリを怪しく身体に纏う。

➖➖➖➖➖➖


 「何やら気配を感じます。」

 「ホント?

 何も見えないけど..」

以前と比べて気配を感知する機能は向上せず元のまま。その上で判断可能とあらばテリトリーにて油断をしている可能性がある。

「詳しく場所はわからない?」

「..仕方ありません。危険を伴いますが、発信を送ります」

大地に反響する程の音波を送る。建物も高台も無く、木が幾つか生えているだけの殺風景な景色では、煩わしい程音が映え、広がる。

「耳をお塞ぎ下さい」

「早く言ってくれない、それ!」

轟音は金切り声のような不快な音へ変わりより一層大地を騒つかせる。

「まだー⁉︎」「もう少しです」

根拠があるのか曖昧な言葉に不安感を覚えるも遠くの木々が揺れている。初めは音による振動かと思ったがそうでも無い。何かが動いて揺さぶられている、そんな感じがした。


「そこ!」「出た、レーザービーム」

目から衝撃のレーザーがここで出るとは、驚きの連続だ。

「ぐへっ!」「なんか落ちた。」

最早見慣れた緑の爬虫類。しかし少しばかり形状が異なる。

「カメレオンですね」「当たりだ!」


「イテテテ、ちょっと待ってくれよ!

人が木の上グースカやってりゃイキナリ攻撃か?」

「櫓を壊したのはお前だろ!」

「アン、何だアンタらテイマーか。

...ていうかお前、ブラザーか?」

「え..ブラザー?」「So.brotherさ」

聞き馴染みのあるワードを脳内で検索した。意味は兄弟、拳を交わすとなれるもの。街でよく会う...。

 「あー!あのときの親切な!」

「ソウソウそうヨ!?

覚えてるだろマイブラザーオイ!」

「なんでそんな格好してんのさ?」

「お気付きではないのですね..」

So.brotherはBut.BOYだと繋げて考えられないTricky.HeaDだ。

「お前が壊したのか!?」

「さっきソウ言ったろウェイ!」

「殺す..!」「キョクタンだねっ!」


「お手伝い致しましょうか?」

「オレっちめちゃくちゃ嫌われてんのね..謝ってもダメぇ!?」

既に鳳翼剣は焔を帯びてつらつらと燃え滾っている。

「斬れろっ!」「ウウッ!」

実体が消えて厄介なのは、カラダという概念が消える事。消滅している間はこの世から消えているように影響を受け流す。

「ゴメンな無駄ナノヨ!

ついでにお前の炎貰うゼ?」

指先をちょいと出し、炎を吸い出す。

赤い翼が剥き出して突出し、寒い思いをしている。

「うおォ結構熱いナ!

でもコレデ良いチェンジ出来んゼ!」

大砲のような銃口が向けられる。火に触れた腕が太い重火器と化している。


「大放出してヤんヨ?」

「シエン!」 「ふん。」

一度一体化を解き、焔を帰還する事で無の状態を作る。

「へっ?」「よっと、行くよ!」

鳳翼剣の一撃、間一髪透明化を挟む。

「うひーコエーッ!」

「くっそ、またダメか!」

透明になる事で隙が生まれない。間を縫ってという戦術を使うことが出来ず堂々とした戦いが望まれる為、どうしても与えるダメージ量は大幅に減る。


「わかりました。」

「え、何か考えてたのコーリンさん」

「通常は考えますよ?

負けたら死んでしまうので」

本能で戦うのは最強か馬鹿か。後の凡人は考え思考し、武器を構える。

「彼の姿を良く見てください、普段は

常に消えています。しかし攻撃する際

何かモーションに入る際は姿を晒すの

です。恐らく消滅と攻撃を同時に行え

ないのでしょう。」

「そういえばシルマさんが櫓で姿を見たってときもそんな感じだったかも」

自らが消え、同時に複数を消しておけば他の連中に攻撃させ、姿を晒さなくて済む。


「なるほどそういう事なら。

鳳翼一閃円獄火炙ほうよくいっせんえんごくひあぶり!」

円状に燃え上げる範囲技

「うおなんだっ?

あちぃ、めちゃアチーぞ!」

「温度や熱気は伝わるようですね。」

「よし、姿が見えればこっちのものだ

もっと熱くなってもらうぜ!」

「ヤラせるカヨ!」

飛行形態になり空へ逃げる。燃えているのは床なので足が付かなければいいと安易な考えに走る。

「逃がさないって!炎熱網煉獄!」

空を捕らえる灼熱の網が眼前に広がる

「アチィアチッ、アチチチチッ!

ひでぇ事するぜオイ..!」

焼け焦げ落ちるカラダに更に追い討ちをかけ、コースケは跳ぶ。

「まだ何かアンのカヨ!?」

「ブラキオがやってて面白そうだったからさ、鳳翼バット!!」

燃えるバットがかっとばす。カメレオンは消える魔球と成り果てた。

「ホームラン!」

「野球のルールをご存知ですか?」

「やった事ない...。」

恐らくブラキオもルールは知らない。

➖➖➖➖➖➖


 「アオ!ワテらの時間!

 タイムタイムタイムタイムッ!!」

「……。」「ドシタノジョージ?」

信頼のおけるテイマーと召喚獣という関係性を築き共に歩む12星座の中で、獅子座は確実に獣の一方的な片思い。テイマーは寧ろ忌み嫌っている。

 「お互い苦労するな」「...まぁね」

正反対が極端であるとオセロの法則は機能せず反発して終わるのだ。


「それはいいんだけどさ。

なんで君ソッチ側にいるの?」

ライオンが羊に牙を剥く。

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