再会警戒
「久し振りだな!」
「ケビン、何でこんなところに?」
「一人じゃないぞ!」
城の至るところから見知った顔がぞろぞろと現れ此方を眺める。
「ルータス、サジロウ..カスミ!」
「嘘..カズキくんまで?」
「ケープの奴寝返りコイテルッ!
ミテミテみてみろジョージ!」
「今そういう感じじゃないのってわかんないの?」
パリピに現状など関係は無い。リズムとノリさえあればどこででも踊り狂うそういう生き物だ。
「櫓を内側から破り破壊したのはお
前たちか?」
「なんだ、わかってたか。」
「櫓を破壊した..お前たちがか?」
「そうだよ文句あるかぁ⁉︎」
初見の衝撃、破壊した事実もそうだが開き直り豪語する姿に度肝を抜かれる
「そうか、だから記録を取られないように透明な身体に。」
「そゆこと、エミュールは厄介だ。
証拠を残すと面倒だから」
情報タイプの阻害も充分に揃えた確信的襲撃その後の離脱と考えると都合が良い。〝何者かに襲われた〟という危機的事実をつくり、対立をする。その上で外に出るきっかけを生み出せばまんまと敵同士という訳だ。
「いつから裏切っていた?」
「いつから?
そもそもいつ味方だと言った」
「古いよねそういう考え。
一緒にいるから仲間、みたいな」
「時代遅れだな。」
「お前が時代を語るなよ」
12星座は皆一緒で味方だという固定観念が分裂をさせた。行動を起こす者は意志が強く、現状を変化させたいと思う気持ちが強い。その分動き出すと歯止めが効かなくなる。
「たいへんだね〜」
「このお城、大きいですねぇ..」
「呑気だな..自分もだけど。」
そもそもの関わりが薄かった人物は大した思い入れも無い為反応も危機感も薄いのだ。
「時代が古い、か..」「なんだよ?」
12星座と共にいながら関心を持たず、組織だといった認識も無いシルマにとっては酷く理解しがたい疑問だった。
「会議に参加をしたく無いのであれ
ば、どこぞの科学者のように籠っていればいい。部屋はしっかりと用意されている事だしな」
「あんな学者と一緒にすんなよ!」
ワードだけに引っ掛かる。話を余り聞いてない証拠だ。
「少し工夫をすれば幾らでも自由はある。しかしそれを思考せず、外に任せて放棄する。お前たちは恵まれた環境にいながら使い方を見誤ったのだ。その上で徒党を組むとは、余程〝仲間〟が好きらしいな。」
時間と手間を無駄に浪費し奴等が得ようとしているものを既に持っている。
なので珍しく親切に手に入れる方法を教えているのだが、感謝される事は無かった。
「喧嘩売ってんのかよ?
上等だ、上がってこいよオラァ!」
「だそうだぞ?」
「やむを得ん、詳しい訳は後で聞く」
「争いか、初めてだな!
お前たちと
「なんで好戦的なんだよ..?」
城の中には其々の部屋を持ち、今もそこから顔を出している。戦うとなると自ずとその場が戦場と化すのだが。
『そんな事はさせないよ♪』
空に大きなモニターが現れ、忌み嫌う顔面が映し出される。
「ソルドか!」
「あの野郎..!」「ソルド様♡」
『城の中で暴れられちゃ困るよ、せっ
かく面白そうな場所なのに。』
地響きが唸り、一つ一つの部屋を包んで新たなステージが構築される。
「何をしたんだ?」
『コーティングフィールドだよ、この
中で戦えば城や敷地は崩れない』
12星座程の力がぶつかり合えば、成長を遂げた特殊な地形は跡形も無く消し飛び消滅する。そうなっては科学者の立ち入る隙は無く、発見の喜びも見出す事は出来なくなる。
「やっぱ嫌な奴だな、あいつ..」
「コーティング〜」「わかってる?」
「ところでお前は何処にいる」
『僕?』
「僕はまぁ..暇ではないかな?」
緑の尾の無い獣達が睨みをきかす。既に新たな実験台を抱え済みだ。
●●●●●
恐竜は然程強くは無かった、羽毛が実は生えていた。などと様々な憶測がされているが、結局のところは同じ形状同じ存在。とかげからうまれた疑似態なのであればより一層違いは無い。
「そんなもんか森のくまさんよ?」
「まだまだ、爪を研いでるところ!」
「Tレックス相手にかよ」
流石にジュラ紀と戯れた事は無いので爪が痛むがレックスの表面には薄く傷が付いている。
「もうちょっとかもしれない!」
「なにがだよ。」「わっ!」
胴体を口に挟み、歯を突き立てる。強化されるのは腕のみなので無防備そのもの、ユウヘイのままの姿が噛み付かれている。
「いたたたたっ..!」
「どうにかしろよ、じゃねぇとエサになっちまうぞー?」
「どうにかって言われたって..」
押しても閉まる重たい口になす術無しと諦めかけたその時、牙が緩み、徐々に腹から上顎が離れ始める。
「なんだ?」「バーイッ!」
成長したおおぐまのベアクルが、一体化を解き顎を持ち上げていた。
「ベアクル!」
「おおいなんだなんだ?
容赦すんなよ噛んじまって」
「バイ!」「ベアクル!」
一命は免れた、しかし今度は獣が危ない。これ以上口が緩む事も無い。
「...これしかないか、ベアクル!
一緒に付いて来てくれる?」
「バーイ!」
口が完全に閉じる。
「嘘だろアイツ!?
自分から腹ん中へ、マジかよ...。」
「ベアクル腕へ!」「バイ!」
体内で一体化、食道に爪を立て滑走を防ぐ。暫く突き立て落下していると動きは止まり、どうにか両手で身体を支えて宙ぶらりんの状態に至る。
「ここから下は胃液が何か、とにか
く進めば原型は留めない。」
爪の位置を刺し変え登ってみようと試みるも粘液が阻害する。
「体力に不安があるけど、アレをやってみるか..。」
爪の位置を変えるではなく形状を変え細く、鋭くする。以前より腕を振りやすくなり運動量を増加させ、深呼吸をして整える。
「熊手総本山..開始っ!」
上部に向かって食道の壁を引っ掻き進み、牙のある入り口を目指す。粘液が爪を刺激する前に爪を下げ、再度振り斬り刻む。そうする事で振動を生み身体を持ち上げる。荒々しさの過ぎる雑な遣り方だが、家にいた二週間の間試行錯誤して考えた。まさかこんな状況で使用するとは思ってもいなかった事だが。
「様子がヘンだな、どうした?」
熊手の少年が食道を登っているなど思いもしないだろう。
「あった、牙!
ここが出口だ、開かせて貰うよ?」
ポケットから取り出した電球をかち割り爪に帯電させる。部屋で材料を用いて独自に作り上げた電撃装置だ。
「うおっなんだ急に、あくびかオイ」
口から出たのは電撃を帯びた熊手男、残った電気さテイマーに向けられる。
「なんだお前らかよ!
..ってなんだその腕?」
「直ぐにわかるよ!」「痛っ...!」
腹にささる爪の痛みか身体に走る電流か、どちらの痛みか定かで無いがティラノの上で延びている。
「なんだってんだよ...?」
痛みを伴う感覚は全てテイマーに帰属する。獣はハリボテに過ぎない。
「なかなかやるわね、あの男の子
こっちはまずまずのようだけど...。」
「誰がまずまずですって!?」
「あら、聞こえてたの。」
バレーボールのトスのように、ぴょんぴょこ跳ねる少女をトリケラトプスが角で飛ばしている。
「つまらないわ、紅一点と言うから期待したけど一番の外れね、そういう意味なのかしら。「紅一点」って」
「だれが赤点ですってぇ..?」
「そんな事言いましたかしら、何の事かわかりませんわ!」
「覚悟しなさい...許さないからっ!」
ローラーシューズは刃の生えたスケートシューズに変化し、空を氷上のように優雅に滑る。
「あら、面白い見ものね」
シューズの刃は滑る度に大きく鋭く研がれ、やがて鋭利な鎌となる。
「これだけは使いたく無かった。
スケートなんてやりたくはないしそれに、脚で振るう武器なんてカッコ悪いでしょ?」
「さぁ、知らないわそんな事。
トリケラちゃん、相手してあげて」
トリケラトプスの際たるは頑強な耐久にある。防御を最大の攻撃にしていて防ぐ動作がそのまま攻撃に変わる都合の良い獣だ。
「逆に言えば、攻撃は出来ないって
事よね。」
「違うわ、する必要がないのよ」
「そう、なら斬らせて貰うわ!」
打撃や斬撃に対し、ギリギリの接地面を用い防ぐ事を無意識的に行うトリケラにとってこの武器は相性が悪い。
「そらっ!」
サイスシューズは、定めた空間を範囲的にカットし、傷を与える武器。斬るというより〝斬らされる〟鎌。
「トリケラちゃんが、固まった..?」
「凍ったのよ、まんまと氷河期ね。」
防ぎきらねば傷を負う、単純な道理だ
「あ〜あぁ見ろよ、散々だな。
せっかく生き返ったってのにさ」
「とりゃっ!」「な、ブラキオ?」
重機のように首を操り大きな反発の攻撃を繰り広げるテイマーに、二人掛かりとて歯が立たない。
「それに比べてお前ら頑張れよ、な」
「おうっ!」
「..素直か、貶させてるんだ。」
「そうなのか!?」「はぁ..」
「お前ら愉快だなぁ、面白れーから踊ってくれよ。な?」
首を振り上げ思い切り地面に叩きつける。すると反動で身体は大幅に宙に浮き、自由のままならない状態。
「んでもって横から..カキーンと!」
横向きに振りかぶった長い首が、小さな球を纏めて吹き飛ばす。
「ウッソだろ..?」
「残念ながら、真実だ。」
くるりと回転し身を整え、鳳翼剣を蹴り飛ばしブラキオの元へ帰還する。
「首は首だ、掻っ切るっ!」
「無駄だね読んでる。」
真上に待機した首がエントをストンプ
勢いを殺し土へ減り込む。
「エント!」「くっ...」
「大口だと思っただろ?
結構小回りも聞くんだよねこれが」
「炎熱空羅!」「おおっと。」
隙あらば
「どうすれば..」
テイマーが選択に詰まると、バディが動く。召喚獣の役割が光る。
「やまねこ、聞こえるか?」
「鳳凰か、何処から話している」
一体化した共鳴中は獣は閉じた世界に居る。意思疎通をしようと思えば、距離を考慮し行える。
「奴の懐に、どれだけの速度で入り込む事が出来る?」
「..さぁな、傷んだ今の身体では期待されても難しいぞ」
「コースケには、お前程のスピードが無い。しかし威力は上回る。」
「成る程な、いいだろう。力を貸す」
片翼の陣形
翼を一つ主に預け、もう片方を第三者に付与する。そうする事で、鳳凰の恩恵が受けられる。
「ん、起き上がったのか?
タフだね、若い連中は。」
黒豹紅く焔を纏い、聳える獣に睨みをきかさん。
「うらぁぁぁっ!!」
「ヤベェな、ブラキオ!」
回転を利かせたバッティングヒットを大判振るもかすめる程度の距離でギリギリ躱される。
「大群が好きなのか?
なら見せてやる、大勢を..。」
疾る残像に炎が移り分身体を作る。分身体は拡散し、一斉に獣へ放たれる。
「赤豹大熱波」「やべっ!」
長首が燃え上がり色を変える。
「熱っ、そうだった痛みはオレが受けるんだった!」
「ブラキオ〜!」「馬鹿聞くな..」
「お、やっぱりか。
呼べば振り向いてくれんだな!」
理性や意思の無い巨体は機能のように備わった動作のみを行う。
「こっち向いてくれ、すぐ終わる。
赤翼一閃、十字炎筒!」
「避けろブラキオ!」「遅いよ。」
十字の斬撃から、焔が拡散していく。
「熱っ....。」
「砂漠よりマシだ。」
「確かに、あそこ暑かったもんなぁ」
斬・凍・炎
三者三様にとかげが彩り豊かな姿を見せている。増殖も治るといいが、そもそもが死骸の寄せ集め。これ以上増える事は無いと言える。
「皆さん、お疲れ様でした」
「コーリンさん」
「随分大人しかったわね、あなた。」
「記録を撮らせていただいてました」
「役に立つのかそんなもの。」
「確かに需要は無いかもね..」
今後に役立つ記録では無い。これはあくまで、後処理用のもの。
「ご機嫌じゃねぇか!」
「はしゃぎ過ぎじゃないかしら?」
「もう手加減なしだ。」
次なる一体化した猛者の為の資料。
「恐竜が身体に..!」「まだ戦うか」
先程の特徴がテイマーの手足に宿り、コンパクトな戦闘が可能となる。
「お下がり下さい、私が仕留めます」
「一人で、出来るの?」
「学習済みです、ご安心を。」
コーリン戦闘形態へ変形
「Tレックス、タイプ斬撃にて処理」
「嘘っ、一撃⁉︎」
「傷は残ります、そこを狙いました」
「私は無傷よ、どうするの!」
「経過を見るのが吉ですね。」
掌から毒ガスを噴射、針の通らないゾウと同じ倒し方だ。
「油断してますか?」「なん..」
「ブレス・ファイア」
生焼けは焼き直すと中まで火が通ります。古い肉も例外で無く。
「とかげ残党及び、とかげ座古種。
Tレックス座、トリケラ座、ブラキオ座、撃破しました。」
「コーリンさん、変わり過ぎ..」
「悪魔め。」
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