新居×新居
大地を調査したところ、引っ越し先に申し分は無いとみなされ確保され、今は周囲に竜を羽ばたかせ防御網を張っている。
実動隊は調査を終えてからというものこれといった出動命令も無く穏やかな時間を過ごしていた。
「使えねぇゴミ人材共、こちらへ向き直れカスが。」
「口悪っ..何コーリンさん?」
「...申し訳御座いません。
録音機能が再生されていました」
「誰の声!?怖っ!」
久々に集められたと思えばアンドロメダの超絶批評からスタートだ。
「それで何の用よ?
その使えないゴミとやらに」
「エリンちゃん、タフだね..。」
「とある事が判明しました。
エミュール様の足跡記録をより詳しく解析したところ、とかげ座の大型獣のものでした。」
「とかげ座..一緒に倒した筈じゃ?」
「ええ、ですから何らかの形で復活した可能性が高いと。」
「どこからやって来たんだ?」
『それは僕が教えよう、使えない凡人テイマー達?』
「お前は..!」
誰よりも情報を持ち、恐らく録音の張本人。
さそり座の男、ソルド・デ・ティサラ
『君たちが調査した秩序の大地のもっと向こうにおかしな反応を見せるポイントがある。初めは小さな点だったけど徐々に大きくなっていってる』
「場所が、成長しているのか..?」
『鋭いねモルモットくん』
「お陰さまでな」『ンフフ!』
「何かあったの?」「さぁ..」
彼も成長している。全く意図はしてないが、不本意に。
「そこにとかげがいるのか?」
『可能性は高い、何があるのかまでは分からないけど重要なモノが眠っていそうな気がするよ、ンフフフフッ!』
「嫌な奴ね。」「そういう奴だ..」
要は調査するのに邪魔が有るので取っ払うのに実働隊を使うのが都合良いと判断した訳だ。
「やっぱりあの子何かあったの?」
「いや、知らないけど..。」
『これは全員に話をしてある。
準備が出来次第、家を大地にセット
して本格的に向かうから』
「家をカラにしてもいいのか?」
『何でダメなの?
僕のセキュリティ舐めんなよ。』
〝人如きに頼るなら、技術で補う〟
それが彼のモットーだ。
『あ、移動はコーリンちゃん一人に任せるから。間違っても外出ないでね、死んでも知らないよ♪』
短距離ではあるが飛行機能を搭載し、谷や崖を越える。出来ない事は最早無いので奢る者から命を落としていく。
『て訳なんで、じゃーねー!』
「勝手に切りやがった..。」
「はしゃぎ倒すな、はっ倒すぞ..」
「え?」
「申し訳御座いません。」
「また録音⁉︎ 誰の声それっ!」
会議室
「とかげが復活したのか?」
「エミュールの記録した通りだとそうらしい。」
「とかげってなに〜」「緑の獣だよ」
「恐ろしいです..しかも巨大化?」
こぐま座やこいぬ座のような成長系の星座とは違い、肥大化しているような形で姿が増大しているという。
「ウチにもデカい獣がいるけど..」
「それってビックってコトか!?
ジョージお前ってヤツはホントー...」
「出てこなくていいから..もう。」
溜息を零しながらぐいと中へ押し込んでしまう。声のトーンの低さから苦労の量が伺える。
「シルマどう思ウ?」
「..何故俺に聞く。
トカゲなど尻尾を切って逃げ出す姑息な連中だ、生き存えた何匹かが集まって新たな身体を作ってもおかしくは無いだろう。」
的確かつ明確な答え。確実に聞いて正解だった。
『到着致します』「もうか、早いな」
話している間もコーリンは移動をし続ける。これならば引っ越しと会議を並行できる。
「有難う御座います。」
飛び回り確保していた竜がコーリンを先導する。
「ソルド様、認知しました」
『はーい、それじゃセットするね』
モニターの中でスイッチを押すと、腹部のライトが点滅し大地の上に家が展開する。屋外が、室内に変わった。
『上書き完了です』
「もうか、早いな。」
「お前本当にリーダーか?」
『さて、みんなわかってるかな。
暫くここには戻れない、準備を忘れずに!』
「仕切るなよ..変態学者。」
「ジョージッ!
珍しくポイズンタン(毒舌)ッ!!」
実働隊はとかげの残党を、12星座は成長を続ける大きな光を、それぞれ探索に向かう。その間家は間抜けの殻だが
ソルド曰く形態を変えた家は、文字通りの要塞と成るらしい。
ちなみに家と書いて「やぐら」と読む
「いくぞコースケ」「おう!」
「張り切っているな。」
「シルマさん!」
「オレもいるゼ!」「キャンサー!」
実働隊になってからというものとんと顔を合わせていなかった。シルマはやはり威厳を放ち愛想は無い。
「悪いが行く当てが違うのでな」
「調査っテのモひさびさダ!」
「そうなのか、気をつけてよ?」
「..お前こそ死ぬなよ、知らんがな」
上辺の気遣いをやってみたが、思ってもいない事は言えない。直ぐに言葉を誤魔化した。
「お前、調査に行くのか..?」
「当たり前じゃないか、部屋になんて籠っていられないよ、ンフフフフ!」
「この先にも犠牲者が...気の毒だ。」
偶々生きているだけだ、彼だけが強烈に運が良い、それだけだ。
「はやくいかない?
正直君たち要領悪いよ」
「二手に分かれてください。」
以前に向かった街はごっそりと無くなり消えていた。分布を見ると、成長する地域の少し西側に同じ面積の場所が在る。
「あの科学者、本当は何があるか全部わかってるんじゃないの?」
「ドウデショー!」
「人を疑うのは良くないよ。」
「いや、そういう奴だ..」
「なんだっていい、いくぜシエン?
鳳翼剣!」
「こちらです。」
コーリンは実働隊の方へつき、とかげの除去へ回る。偶々の配置だが、結果的に後処理となってしまった。
➖➖➖➖
「なんかいっぱい来てるぜ?」
「放っとけば
どうせ戦う事になるんだしね。」
指にネイルを塗りながら、トリケラトプスをテーブルにしている。信頼を置く、というよりは道具の意味合いが強い関係性だ。
「だがまぁコッチでまだ当たりだろ
〝あっち〟はもうとんでもねぇ事になってるからな、やってられんぜ。」
オオトカゲ達は驚く程に話さない。声や知識といった優れた機能は全てテイマーに割り当てられている。典型的な〝ただいるだけ〟の獣たちだ。
「ツインベアクロー!」
「いきなりなんだよ!?」
二つの熊手が岩を投げ飛ばす。
「攻めて来たんでしょ。屋外でフラフラしてればそりゃ来るわよ」
「わかってるじゃない、やるわね」
「だから尻尾を振ったのよ?」
岩を破壊した尾を真上へ振って蹴りを防いだ。身体の割に動きは速い。
「いくぞ、コースケ..」「おう!」
「
「
「あ、オレ?」
目立つブラキオに同時斬り上げ攻撃。
「悪いな、避けるぜ。」
頭に乗り横に揺らすと柔軟に首が屈折する。
「んでもって..よっと!」
頭を離す事で反発を利用し、首を武器に変える。
「ぐぅっ..!
こいつら、獣の使い方が上手い。」
「たりめぇよ!
俺たちゃ元々一つだからな」
「一つ?なにそれ?」
「成る程、死骸を集めて重ねる事で新たな生命を作りあげた」
「そんな事できるのか?」
「良くみろよ、こうして出来てるぜ」
道具どころか己の一部、使いこなせるに決まっている。
「さて、反撃といこうかしら?」
➖➖➖➖➖➖
「これはどういう事だ?」
「点はここまで大きく..正気か。」
小屋程度の規模だった反応は一国に聳える程大土地の城になっていた。
「解析してからどれくらい経つ?」
「確か、二週間くらいか」
解析したのはソルドだが、何故かここにはいない。代わりにいたのは、新しい城の住人たち。
「よう!」「お前...!」
「やはりか。」
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