古く悪しき時代

 逆にすれば当然脚は人同然の速さに戻り、腕力が馬の蹄となる。ミノタウロスとはまた違う「馬人間」が正しい表現といえる。


「蛇刀アナコンダッ!!」

「薄過ぎるんだよ。」

馬力の拳が先端を打つと、たがまって

情けなく刀身が萎縮する。

「我が刀がっ!!

全然折れない曲がらないっ!!」

「でも斬れねぇよそんなんじゃ。」

「どぅーかな..それっ!!」

再度剣を真っ直ぐ張り、下部に思いきり伸ばす。

「痛った!」

「あしは人なぁ〜りっ!!」

「お前..許さねぇぞ。」

機転を利かせ、一度脚を馬に戻し距離を縮めた後反撃に際し上半身を馬へ。

 「ローテーションホースかっ!!」

「聞いた事ねぇよ!」

走る度に脚、殴る度に体、それを追うように下、上、下、上と蛇刀が揺れる


「てか痛ぇ!」

「馬の調教は得意でなっ!!」

「舐めんなよ..?」

馬脚飛び跳ね、馬蹄殴り。

走って跳んでのフルコースを叩き込む

「捉えたっ!!」「なっ⁉︎」

ロープの如く全体を刀身で巻く。

「秘刀、ベーゴ廻しっ!!」「か..」

回転を加えた蛇刀が引き抜き斬り裂いていく、馬も人も平等に。

「華麗なる斬撃っ!!」

バカの一勝。残りのバカは..?


「ふんぬらっ!!!」

「これで何度目だ、こいつ..」

バカが嫌われるのは〝しつこい〟という継続的デメリットが存在するから。

ヘラクレスはそれが力に現れる。

「ふんっ!!!」

「何度破ろうと鎧が生まれる。

何だこの男は?」


「ヘラクレスッ!!!」「殺す」

動作は一辺倒、突撃して角を突き立てる。それだけで殆どが壊れてきた。

「甘ーいっ!!!」「..何?」

無残に砕け続けていた鎧が硬度を増して角を弾き返す程になっていた。

「成長する鎧だぁっ!!!」

「もう付き合いきれん..」

呆れた素振りで争いを放棄して走り出す。そのまま大地を跳び越えて遠くの方へ。勝負事には珍しい〝自ら試合放棄〟での勝利を収めた。

「逃げていきおったぞっ!!!」

追いはしない、角を弾いたその時点でアドレナリンが全て漏れている。

残るはオリオン、ただ一人のみ

➖➖➖➖➖

 「お、帰ってきたぜ!」

 「奴らは秩序の大地にいる様だぜ」

「秩序の大地だと?

あんなところに何をしに行く」

「新しい家でも建てるんでしょ、櫓ボロボロだったし。」

「壊したのは俺達だけどな」

「まだ気付いてないのかアイツら。」

何も無かった鍾乳洞は、数日で小屋の様に形を変え何とか住める建物という形状にまで至っていた。


「それにしてもホントかよ〝お前ら〟

元は皆アレなのか?」


「だから何度も言ってるだろ。

オレ達三人は皆、とかげの亡骸が変化したものなんだってよ」

Tレックス座 テイマー ジュウ

トリケラ座 テイマー リョウコ

ブラキオ座 テイマー サエギシ

「これもあの方の影響かオイ?」

街で倒れたとかげの獣が数分後宿街の住人に処分され、ゴミ山のような塊が幾つかの集合体となり、それを更に獣テイマーの二つに分けた。


「テイマーはトカゲがなり変わった人物像だっていうけど、商店街にこんな子いたかしら?」

「自画自賛かリョウコ、お前も獣も同じなんだぞ。」

「誰も褒めてはいないわよ。ま、首長ブラキオよりいいケドね」

とかげの先祖に近い意味合いで形成された新たな星は「とかげ古種」と呼ばれる。

「なんだっていいだろう。

首が長かろうが身体がデカかろうがとかげはとかげ、何の違いもねぇさ。」

「当たりが言わないでくれる?」

「確かに、ティラノサウルスって..」

大古のテイマーは、竜骸護衛団とは別の違ったところを拠点とするらしい。

それが出来るまで、狭い家で待機する


「新時代のマクアケッ♪

古いも何も関係ネェ、ごちゃまぜグル混ぜリミックスダゼッ‼︎」

韻を踏んだら全てが動く、はじめの一歩とはそういう事だ。

➖➖➖➖➖

 「翼なくとも空飛べるっ!」

 風を受け過ぎたオリオン座の星が遂に空をも統べる鳥になる。


「ジャンピングキーックッ!」

しかしやる事は何一つ変わらない。

「きかんわ。」「なんだとぉっ!」

おじさんと天馬のイタチごっこが延々長引き同じ景色を写している。

「その風どこから出てるっ!」

「空は我が城、風は支配下。

動向は全て握らせて貰っている」

「なら、ウチにこいっ!」「何?」

突然の勧誘は洒落で無く、前々からオリオンの間に何かギミックを搭載したいと願っていたようだ。

「ふざけるな、誰がお前の敷地など」

「風操れないんだ」「..なんだと?」


「自分が知ってる場所じゃないとっ!

風とか空とかわかんないんだろっ!」

クラスの人気者は教室を出ると普通の子、しかし本人はそれを言われるのが一番嫌な事。

 「できるし!

 起こしてやんよ風でも嵐でもよ!」

「じゃあ来るんだなっ?

オリオンの間に来るんだなっ!」

「は、行ってやっし!

案内しろし今すぐしろし!」

オリオンが背中に乗って指示をする。

「あっちいけあっちっ!

直ぐあるから、白いデカいのっ!」

「うるせぇし!

指図すんな行くから乗ってろカス!」


「カスっていったっ!

今カスって言ったなっ!」

何となくだが気は合いそうだ。




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