流星

道々で息絶えるインディアン座やりゅう座の獣達が内部の惨状を物語る。修復しきれない穴が空き気配が見えず攻撃方法も分からない。

「キャサリン、常に通信を櫓内へ。何かあれば直ぐに全域に伝えてくれ」


「はい、カシコマリマシタ!」

指揮はジェイビスが担当。櫓中を走りまわり指示をしていく。

 「シルマ!」「..やられたな」

「これは罠か?」

「知らんが恐らくコースケ達とリンクしている。あいつらが向かってから直ぐの侵攻など、確実に狙った行動だ」

「他の星座はどこに?」

「半分は無謀にも、外へ侵入者を探しにいった。といっても届く範囲だが」

12星座ともあろうもの達が、形無いものを追っている。残る半分は怯えて縮まる者、次なる侵攻に備え構えるものと色々だ。

「どれ程の箇所が壊れている?」

「キャサリンの情報によればほぼ手を付けられている。食糧党も各寝室に至るまで。無事なのは研究室だけだ」

「傷一つ付けず我関せずか。

..白々しいにも程があるな」

誰よりも危険信号に警戒しているでたろう彼が事態に気付いていない筈が無いのだが、本人にとっては関心が無く〝興味の無い事〟なのである。

「このままではマズイ、どうにか態勢を立て直さないと。」

「..もう一つ聞いてもいいか?」

「何だ」


「お前は誰だ?」「何..?...。」

「なんだ..バレてたか...」

ジェイビスの顔がドロドロに崩れカメレオンのような姿へ変わる。

 「どうヨ変幻自在っ!

 スペシャルチェンジアニマル♪」

「お前が侵入者か?」

「ソウ、ばりばりインベーダーヨ!」

名乗られれば挨拶をする。侵入者と丁寧に紹介してくれるのだ、深い礼をいわねばとキャンサーの水砲大放出。

「に、すんだよ危ねぇっ!」

スレスレでかわし、新たな穴を櫓に開けた。

「お〜コエーコエぇ!

冗談通じネェ奴なんだな!」

穴に身を乗り出し外へ出ようとする男を逃すまいと再度流水を飛ばす。

「お、危ねぇっ!

見境無しかよアンタ!」

「何で当たらん。」

確実に当たる角度の攻撃が透かされ避けられる。寸前で動きを止めるように軌道を変えるのだ。

 「おぉイイねぇ!

 オレっちに疑問を待ったらお前もブラザーだ、おめっとさんヒアッ!」

拳を突き立てるも合わせる訳も無し。

「俺と貴様が兄弟だと?」

「あぁソウだぜ、嬉しいだろ!」


「殺す..!」「何でだよっ!?」

「キャンサー!」「はいヨ!」

水柱から刀を造り、握る。穴を抜け、カメレオンに斬り立てる。

「チョット待てよブラザー!

じゃれあいのツモリかよソリャ⁉︎」

「殺し合いだ!」

「ダメだ話通じねぇっ!」

上辺だけで接する事をモットーとしているシルマにとって馴れ馴れしい者は忌み嫌う存在であり、そんな奴に兄弟認定をされたとあればやる事は一つ。

日本刀で叩っ斬る事だ。

「んだよコイツおっかねぇっ!

逃げるが勝ちってモンだぜ」

カメレオンは姿を変え、プロペラに生えた飛行体になり空に飛び立つ。


「へっへ!

流石に空の向こうまではついてこれねぇだろうか....ナァ!?」

流水に乗って、後を追ってくるシルマの姿が足元まで来ていた。

「お前空まで飛ベンのかよっ!?」

「知ったことか。」

「離れろマイブラザー!」

口から黒い煙幕を吐き、目を眩ます。

「暗い夜に煙幕か、面倒だな」

煙が晴れると男の姿は無く、追おうにも視界は黒く狭い。

「逃げられたか..しかし何故俺だけに姿を晒す」

ランダムで選ばれたか、意図して近付いてきたか。

「緊急会議を開くか..」

➖➖➖➖

 水辺の事故の大半はワニが原因という地域が存在するらしいが、街でトカゲが暴れるという話を聞いた事があるだろうか?

 「ミッションコンプリート。」

「日はまだ出てないな..」

身体の半分以上が破損した状態で、500はいるとかげの役3分の一を倒した

「他の皆さんはご無事でしょうか」

「恐らくな、人に化けた獣は商店街のみ。宿街は皆普通の人間達だ」


「そうですか、安心しました。」

完全な憑依をしている為リントとピューマ交互に且つランダムで話す。無意識的にか難しい話はピューマの人格が話す事が多い。

「..驚いた、そこまで戦えるなんて」

 「元々は戦力の機能はありません。しかし私は、みたものを視覚で、聴いたものを聴覚で情報として処理しますなのでそれを組み替えて、自分で力に替えました。ただの猿真似ですよ」

力の応用はテイマーが考えるものであり獣は悪戯に使うだけ。コーリンは意識的にそれを一人で行なっている。

「しかしそれも限界ですね。

..お手数をおかけ至しますが、宿まで肩を貸して頂けますか?」

「...ああ。」

➖➖➖➖➖➖

 「会議を始める!」

 「..もういいよ、仕切れよ。」

「諦めちゃってるじゃん」

「あいつがリーダーかよ?」

天に開く穴に声が抜け、反射する事も無くなった。


「一つ聞かせて貰ってもいいか?」

「ジェイビスくんじゃん、何。」

真の指揮者ジェイビスが会議の中心を取り問いかけを促す。

「襲撃に遭い外へ出た者に聞く。

何者かの姿を見たか?」

「いや。」「見てないね」「同じく」「アタシも。」「見てない」

全員が見てないと言う。

しかし外に出てない男が手を上げた。

 「シルマ、何か見たのか?」

「カメレオンの様な男がいた。

..お前の姿に化け、俺を襲ってきた」

「おれの姿に?

敵は櫓内にいたのか」

「既に侵入済みだったって言葉か。」

閉じられた世界でも会議は行われる。


「本当かアローズ?」

「知らねぇよ、オレはしっかりジェイビスの背後にいたし気配を感じてた。そいつが同じ姿で歩いてたってんなら骨の髄まで似せれるんだろ。」

「ヘイ!面白いネソレ!

チェンジザワールド、愉快ジャン!」

「うるせぇなクソ獅子、黙れよ。」

「怖いコワイてんびんチャン!

怒らないでってバッ!!」

毒舌と目立ち屋の喧嘩、間に入るのは勝負師の弓師。止めるのは面倒なので無視を貫いている。

「ララなにか見た?」「見てないよ」

「キャンサが何かみたらしいよ?」

「そんなのキャンサ教えてキャンサ」


「今シルマが話してたロ。」

「はぁ..疲れた」

テイマーよりも意見の飛び交う筈の会議が今回は上手く回らず滞っている。水瓶座に至っては修復の疲労で言葉すら出ない。

「ていうか何だ、人数少なくねぇか」

背後に出ている訳でも無いのにおよそ半分の召喚獣が不参加。ソルドの獣であるスコルピオを抜いてもすっぽりと五体がここにいない。

「会議すらもボイコットか、クソみたいな連中だな、クソが。」

「何回言うんだお前」

この様子では話し合いは困難、しっかり行った所で採用される訳でも無いので自然と会議はお開きとなり、徐々に各々が話すのをやめた。


ところ戻し会議室

 「黙っていていいのか⁉︎

  悔しいとは思わないのか!」

話し合いが進むにつれ侵攻を恐れるのであれば〝敵を追い、根絶やしにするべき〟という意見と〝守備を固め次なる侵攻に備える〟という二つの意見に割れた。

「無闇に外へ出て、その隙に攻められたらどうする!」

「そうさせない為に先に攻める!」

「危険すぎる、早めに守備を万全にしておけばエミュールがそれを記録する

そうすれば充分備えが効く。」

 「それより早かったらどうすんの?

あんまり賛同したくないけど、今回は牡牛さんの言う事が正しいかもね」

「第一守備を固めるってどうするつもりだよ、もう一つ基地でも作るか?」


「ソルドに頼む。」

「はぁ?」「お前、正気か!」

会議に顔を出さず己以外の人やものを実験の材料程度に思っている男の協力を得るなど、前代未聞の話だ。

 「ごめんだよ!

 アタシは絶対反対だ!」

「勝手にしろ、決めた事だ。」

「ふざけんなよ何考えてんだ!」

「何がそんなに不服なんだ、至らないところを技術者に頼る。それだけの事だろ!」


「ジェイビス!

それを本気で言うのなら、お前達は人道に反している!」

「目立った事になってるな..」

「どうしようロンちゃん?」

「どうしよーわかんないな〜。」

「皆さん、あぁ..どうしたものか。」

完全な対立が生じる。

欠けた部分からヒビが深く食い込み、バリバリと音を立てて崩れる。

「もうラチが開かねぇ!

召喚獣出せ、力ずくで決める。」

「待て!

ここでそんな事をしてみろ、櫓が..」

「うるせぇ出せ!」

11の獣が姿を晒す。

衝突と対立が破壊をもたらし争いを生んだ。

「いくぞオラァ!」「やむを得ん..!」


「やめてくれないかなぁ〜?」

カツンカツンと硬い靴の歩む音が響き、嫌な匂いが鼻に抜ける。

「お前っ..!」

「ギャンギャン鳴かれると耳障りなんだよね、黙ってくれよ。」

安定しない髪色、あり得ない真白な肌

見るからに人を寄せ付けない風貌。


 「あれ、何あの穴?

 まぁいいや、興味無いし。」

「..何しに来た、ソルド」

「何しにって、呼んだのは君達だよ?

迷惑してるんだよ僕も。折角愉しい研究の続きだったのにさ♪」

怪しく口角を上げ筒抜けの空を眺めて笑う。不気味をそのまま具現化したような男である。

「久し振りに見たけどやっぱ気持ち悪いわ、こっち側で良かった」

「僕も君は嫌いだよ。

だってキャラ被りしてるもんね」

「キャ..どこがだよ!」

 「ソルド、余り挑発するな。」

「言う通りだ、余計な事すんな!

下手なことしたらテメェの研究所ブチ壊すぞ!」


「...今、何ていった?」

➖➖➖➖➖➖


 「人がとかげになった?」

「眠っている間にそんな事が。」

「賑やかな人皆とかげだったの!」

日はそれ程見えないが夜を明けていた

テイマー達はすっかり目を覚まし、昨夜の事を聞かされた。

「アンタらテイマーさん達か、すまんなウチにはただの人しかいなくて応急処置しか出来ねぇが。」

「充分です、感謝致します」

「昔電気技師をやっててな、機械には強いんだ。」

宿屋のオーナーがコーリンの修理をしてくれた。回路が複雑かつ難解で苦戦しているようだがどうにか経験で奮闘している。

 「それにしてもお前タフだな、傷一

 つ付かないなんて」

「自分でも驚いてる..。」

修行の成果だと言いたいが、別の作用が働いている可能性が大いにあり罰が悪い。というよりあれは修行じゃない

 「取り敢えずは帰って報告ね。

 〝街の人はバケモノでした〟って」

「……。」

テイマーを眠らせたのは、もしもの事があったときという保護的な意味合いだったが結局は助けられた。

「せめて無事に、送り届けますね」

惨劇を知らない義務に駆られる。

➖➖➖➖➖➖

 「あわわ..これはどうしましょう」

「どっちに付くんだ?

オレは攻めはごめんだぜ、なぁ」

てんびんに掛けるまでも無い。そんな言い合いに拍車を掛けるのはさそり座のアイツ、毒々しい顔だけの奴だ。


 「何が不満、僕の?」

「元はといえばお前が櫓を作ろうって言ったんだ、素材が足りなくてもいいって!」

「..それいつの話だっけ。

覚えてないなぁ、でも実際に出来てるって事は僕に従ったって事だよね?」

「こいつ...!」

乙女座のカスミはソルドを嫌う余り極端に感情的になる。陰湿な彼にとっては糧としかならないというのに。

「そんなに怒ると怯えてしまうよ?

天使ちゃんは僕の事好きなのに」


「はっ!?」「え、いやぁ..そんな」

皮肉にも星座の獣エンジェルはホの字

「だからしょっちゅう研究所の前!」

「...うん!」

ロマンチストは花畑を飛ぶのが蝶でなく蛾だったとしても追いかける。恋は盲目なのだ。


「わかったぁっ!」「いきなり何だ」

牡牛のケビンが吠え猛る。音量のみで大概が小言だが。

「俺達は敵を探し追う、それは変わらない。貴様等がそんな態度なら、我々は勝手にここを出発するっ!」

「効く耳持たぬか...。」

他の四名の意思も変わらず、居場所も分からぬ敵を追うという。

「へーいくんだ〜。」

「大変な事だよロンちゃん!」

「止めなくていいのかジョージ!

 目立つチャンスだぞオイオイ!」

「いいよめんどくさい..」

「……」

言葉が飛び交う中で、シルマは黙っていた。言い出した事よりも大きく何か違和感があったからだ。

「…空いた穴..」「行ってくればぁ」

さそりが静止した。己の唇に人差し指を当て「言うな」と指示をしながら。

 「研究の邪魔だし、これ以上騒音ト

 ラブルはごめんだからね。」

「ソルド!」「何?」

争いを生み出した張本人が、小さく閉じた。

「最早言葉は効かん、行くぞっ!」

「だからお前が仕切んなって」

「外いっても仕切られるんだ。」

「リーダーは、アタシだ!」

「ソルドさん..待ってて。」

若干一名の名残を抱え、櫓の外へ飛び出していった。


「あーあ、僕も戻ろうかな。」

「ソルド!」

ごめん、ギリギリまで研究してて眠いんだ。話なら後にしてくれる?」

身勝手な研究者は、話を無理矢理解決に導くとまた暗い研究者で疲れを癒すつもりらしい。

「〝櫓を作れ〟か、「一応」って頭に

付けたの覚えてないんだろうなぁ..」

研究者のはしくれが、過去の事例を忘れる筈が無い。


「ま、いいけど♪」

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