情報不足

 「103匹、撃破完了」

背後には召喚獣の代わりに白目を剥いたとかげの山が積もる。拳には生々しく赤い血が付着している。

「..やむを得ないといえど、この感覚は余り好きにはなれませんね。」


「ぐあ..」「残党ですか?」

山の一粒ずつが起き上がり、ゾロゾロと気配を逆立てる。

「...尾がありませんね」

とかげ座は尾を千切る事で傷を治し、身体能力を向上させる。

「第二ラウンドといこうぜ?」

「アサシンカッター」

両手首から刃が突出する。

「うらぁっ!」

左肩を力の限り噛み潰す。痛みは無いが大きな破損か生じる。コーリンは破壊を防ぐ為、食い込むとかげの顔の表面を斬り裂く。

「左腕大破46%、戦闘力大幅低下」

尻尾を捨てたとかげの威力さ凄まじく腕を破壊された後右脚、脇腹を同じように砕かれた。

「不覚です、もう少し鍛錬をしておく

 べきでした。」

襲撃に不警戒、加えての力不足による戦闘力の低下、全てが裏目に周る。

 「ぶっ壊れなオンボロ!」

薄ら笑うとかげの嫌な声が聞こえる。

何度か死を考えた事はあるが、まさかとかげに噛み殺されるとは。


 「そんな死に方で良い訳が無い」

笑い声が止まる。代わりにしたのは、カラダが地面に叩かれる音。

「誰だテメェは⁉︎」

「砂漠のやまねこテイマーリント!」

「…リント様。」

道中でずっと掛け声を考えてた。渾身の出来だと自負している。

「眠っている筈では?」

「..薬の類はまるで効かなくて、嫌なヤブ医者のお陰で。」

闇夜に紛れる黒い猫、瞳が怪しく緑を睨む。

 「だがお陰で、随分と動きやすくな

 った。見てみるか?」

鱗の化身達が次々と土に頭を触らせていく。養殖のとかげは所詮野性の獣には歯を立てられないのだ。

「申し訳御座いません、向いていない

 事をするべきではありませんね」


「いや、充分だ。」「...何よりです」

彼等は気付いていなかった。敵を見過ぎたか、抜けた尻尾の在り処を探る事をすら忘れていたのだ。

➖➖➖➖

 「救護室はどうなってる!?」

「完全に破壊されてる..原型を留めていない!」

緊急の怪我人を運ぶ治療部屋には幸い患者はいなかったが一室ごと潰されている。

「アローズ、奴らを射抜け!

一人たりとも逃げ場を作るな!」

「無理だ。」「...なんだと?」

「何処にいるか見えねぇんだ、誰を射てって言うんだよ!?」

見えざる敵に、壊れる櫓。

危惧していた事が遂に巻き起こる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る