テイマーの櫓

 「着いたぞ、ここだ」

「泳げナイと疲れるゾ!」

大きな二つの黒い門、その先に目的があるというが開く気にもなれない。

「どういう場所ですか..ここ?」

「..いちいち驚くなよ。

ここは獣とテイマーが混合してる、門を開ければ情報量が多いぞ」

「開けるゾ?」

滑らかな扉の割にはギギギと重たい音

「何コレ!?」

「..だから驚くなと言っただろ。」

天井に羽を持つ獣が飛び交い、小人のような〝人もどき〟が歯車を回し機械を動かし物を運んでいる。

「オウ、帰ってきたかカニ公!

相変わらずアイソ無ぇナァ相棒は!」

「うるせぇヨ!」


「誰ぇ..?」

「インディアン座の雑用だ、気にするな。相手するだけ無駄だぞ」

「無駄だってさ!

失礼コくぜアイツァよぉっ!」

「ホントだぜギャハッハッハッ!」

「本当だ、気にしない方が良さそ。」

「だろ?」

ギャアギャアと騒いでは腹を抱えて笑い合う、同じ顔なら気が合いそうだ。

「シルマ様、お帰りなさい。」

「コーリンか」

「キャンサー様もお疲れ様です。」

「おうヨ!」

機械的な声で話す人間味のない女性、声というよりは音に近かった。

「そちらは?」

「外で見つけたテイマーだ名はコースケ、鳳凰座の使者だ。」

「召喚獣もいるんだゼ!」

「まぁ..まさかあの森の主を。

私、アンドロメダ座のコーリンと申します。主にこのやぐら内の案内

テイマー様と召喚獣様の管理をさせて頂いています。」

「あ、ども..コースケです。」

「ホウオウ様は、眠っておられるのですね。挨拶は後に致しましょう。」

「そういえばさっきから起きないな」

翼で顔を隠し、寝息を立てている。修復しきれなかったカラダを休息により回復させているのだ。

「他の奴らは集まっているか?」

「ほぼ..しかしソルド様が未だ。」

「あの男...また〝調合〟か」

テイマーの中にも、やはり曲者はいるようだ。

「本当は俺も、欠席したいのだがな。

コースケを部屋に案内してやれ」

「かしこまりました。」

コーリンに進行を託し、一人何処かへ向かってしまう。最後まで愛想なく軽く遇らわれた。


「こちらです。」「え、どちら?」

シンプルな白い廊下へ促され、丸い扉の前へ案内される。

「ここが、あなたのお部屋です。」

「シルマさんとは違うの?」

「あの方は12星座ですからね、残念ながら待遇は異なります。」

「ぶぅ..」

「御安心下さい、それ程嫌な部屋でもありませんよ?」

「..そうですか。」

「では、失礼致します。」

役目を終えたと突然切り替わり去っていった。

「ちぇー..」

扉を開けると言う通り、普通の住みやすそうな部屋だった。

「悪くはないな。」

➖➖➖➖

「揃ったか、なら会議を始めよう。」

「お前が仕切るな」

「いつもお前だよなー。」

「リーダーなんて最初ハナからいないだろ。」

「.....」

12星座定例会議

星の上位である12星座が意見を持ち寄り今後の端末を話し合う。邪魔になる為召喚獣は閉じてある。

「シルマがテイマーを一人獲得したそうだが?」

「..ああ、鳳凰座の使いだ。」

「鳳凰座?

またイカツい奴連れてきたねー。」

「キャンサーとの相性が良かっただけだ、大した事ではない」

「えへへ〜、すごいね〜。」

「お前はよく考えた方がいいぞ?」

「それも踏まえての話になるが..」


「だからお前仕切るなよ」

「すーぐ中心になりたがるよね〜。」

「だからリーダーなんていないだろって、別にいいけど。」

結局のところ集まると脱線し雑談となってしまう。集まって会議など時間の無駄に過ぎないのだ。

◾️◾️◾️◾️

「っていうワケでっ!

またコッチで決める事になりソーダワなんか意見くれないかね?」

「まずお前がリーダー気取ってんのをウシの飼い主に教えてやった方がいいんじゃないのか。」

「そんな事しなくて良いと思うよ?」

閉じられた空間で、召喚獣も会議を行う。ややこしいがテイマーと召喚獣は対となる組み合わせが共に正反対の要素を持つのが特徴である。


目立ちたがり屋のテイマーは大人しい召喚獣、といった風な解釈だ。

「こういうのはどうかしら。

みんな各々に力があるじゃない?」

「ああ、あるが。」

「水や他の直接的な攻撃系、環境や空間を調節する調和系、そして私みたいな..癒し系?」

星座の種類によって与える効果が異なる。性質や生まれる場所、誕生した瞬間から素材を持ち、召喚獣としてテイマーと一体化する事で、能力として昇華する。

「それを上手く使ってもっとテイマーを増やせないかしら?」

「どうやってやんだよ。」

「例えば同じ系統同士で固まって行動して引き寄せるとか」

「なかなか良い事言うじゃねぇか..」

人間よりも意見が回る、背後からの視点だとより視野が拡がって映るのか。


「オマエサンはドーヤッて鳳凰を連れてコレたんダイ!?」

「いきなりこっちカヨ..!

単純に森が騒ガしかっタから行ったラいたんだヨ」

「簡単だな..。」

そこそこの意見を言い合える話し合いではあうのだが、ここでの意見がテイマーに採用される事はほぼ無い。

「解散っ!」




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