第2話

 拾った獣人の子供はウリルと名付けました。


 ウリルは獣人の血のせいか成長が早く、たった三年で人間で言う所の10歳児までに成長して私を驚かせました。

 文献では獣人は野生でいきるため成長が早いといいます、彼らは三年ほどで成人するのです。

 だけどウリルは三年で10歳位までしか成長しませんでした。考えれば考えるほどウリルと言う存在が分からなくなります。


「クラリス、クラリスただいま」

 


「また泥んこだらけになって」


「泥で遊ぶの楽しい!」

 そう言って屈託なく笑う顔はまるで天使です。

 身体は大きくても、まだ三歳相当なのだからある意味仕方ないと割りきっています。


「楽しいなら仕方ないか、ほら身体洗っておいで」


「うん!」

 井戸水を浴びてキャッキャと喜ぶ姿を見ているとほっこりします。一人でここで暮らしていたらこの幸せは絶対に味わえなかったのだなと少し恐ろしくなることもありますが。


 お分かりのとおり、ウリルはすぐ泥んこになるので白物は絶対に着させられないのです、泥がついた服を洗うと全部ピンク色になってしまいますからね。

 そして井戸水は絶望的に汚れが落ちないんです。洗濯は雨水をためたもので行うのが一番良いようです、三年で得た経験値はダテじゃありません。エッへん!


「クラリス洗ったよ」

 ですが、私は母親のつもりはないのでウリルにはクラリスと呼ばせています。

 母親なんかやったらいつかウリルが結婚する時に辛くなりますからね。

 成長するまで預かっている子と言う風に思っているのです。


 ただ、問題は尻尾と耳です、人間社会で生きていくには隠さなければいけないし、たぶんウリルは獣人の社会ではその容姿から受け入れてもらえないでしょう。

 結婚相手が見つかれば良いけどと考えるのは早すぎだろうかと私は苦笑して水濡れのままのウリルの体を優しくタオルで包み込んだのでした。


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婚約破棄された公爵令嬢が人里離れた山奥で拾った獣人の子と暮らすようです 白濁壺 @white_pot

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