第8話 不思議なこと

 加賀は日記のしまってある机の中がごちゃごちゃになっていることに気づいた。万が一両親に見つからないように数あるノートの一番下に隠してあるのに、なぜか一番上にあった。

 母には部屋に入らないように厳重に言ってあるが、なにかの拍子に見てしまうこともあるのかもしれない。

 リビングへ降りた。

 母が慌ただしく冷蔵庫へ開けたり閉めたりしている。

「どうしたの?」

「近所の山本さんと立ち話していたら、アイスを冷凍庫に入れるのを忘れてね」

「ふうん、そう。だいたいあのオバさん話長すぎるんだよ」

「まあそうなんだけどね」

「早く撤退すればいいのに。絶対いらないしょっぱすぎる漬物とかくれるでしょ」

「子供にはわからないわね。大人には大人の事情があんのよ」

「ふうん。ところでさ、俺の部屋に入って机の引き出し開けた?」

「引き出し? 開けてないわよ。開けるわけないでしょ。そもそも部屋に入ったらアンタ怒るし」

「だよなー」

 では自分の思い過ごしだろうか。そうかもしれない。こういう細かい記憶違いというのはよくあることだろう。

「ところでさ、最近、家の近くでスゴい美少女をよく見かけるのよ」

「美少女? 変態じゃなくて?」

「そ、美少女。スッゴいびっくりするくらいの美少女よ」

「へえ、この近くにそんなスッゴい美少女が住んでるんだ。引っ越してきたのかな。高校生?」

「アンタと同じくらいの歳の子だと思うわよ」

 しばらくその美少女がどれくらいのレベルなのか、いつまで続くかわからない熱弁をふるった母から強制離脱した。

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