憧れに怯える少年よ

憧れに怯える少年よ

わたしはいつでもそこにいる

きれいな水だけをもって

静かにうしろをあるいている


ときに涙をこぼすなら

少年が夜に恐怖するなら

わたしは星をひとつ結んで

うつくしい吉兆となりましょう


広い景色にかがやく丘で

少年は胸をふくらませる

白いまぶたを微動させ

その風をたおやかに髪にうける

わたしは町でまっている

水瓶を透明な水で満たして

波打つ風のその下で

黄色い服を折りながら


憧れに怯える少年に

星を祈るわたしは

りょうてを合わせて口を結んで

つまらない日々を綴る


くもの巣に水玉を吊るしましょう

青葉に音楽を撫でましょう

土に窒素を振りましょう

朝に少しの陰と、二つの木の実を捧げましょう


少年は健気にあるく

わたしは静かにまっている

白くてまるい足をなげ出して

呑気に汁をのみながら

わたしのすこし膨らんだ胸の予感も

いまはまだ微弱な電流の

わずかな音にしかならないのだから

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