魔女室

人の経験をフラスコの中で

ぐつぐつ煮込んで魔女は笑う

「プフゥ、此れは全て。アグゥ、此れが唯一」

ビー玉の様に泡が浮く

赤黒く、粘着して

過去と命名された浮かび上がる煙は

間違った様な光景を繰り返す

はぐれた精神が目眩く群像するが

其れらに解答は無いのだが、

皆一つの丸い地球を巡って走り合う。

短絡的な魔女は其の中から

たった一つの指針を取り出し

其れが世界基盤を標榜する明日を夢見た

そう云って羊皮紙にがりがりと文字を刻む

現実はしかし儚く

幾分にも枝分かれした可能性

世界線の平行移動群で

何を為しても結果だけが綺麗にとんと置かれる

魔女は煙の中に潜って

又一からの経験を求めた。

非常に長い道のりが始まる

魔女は心を行ったり来たり

彼女は知るだけで学ばないのだ

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