春
春霞のその奥の、山に息吹を、
桜の風が背中を押す
草のかをりを含んでる
「かゑがたい珠
とらへがたい珠
ありがたい珠」
水面下で輪舞する緑の龍
静かな時間に
河からぬっと顔だけ出すと
眠たさうな目で再びもぐる
わたしは夕方を待つことにする
かの女は御珠をやさしく持つた
女の子のやさしさで
わたしはつくづく悲しくなる
また河に行こうと思つた
「かゑがたい珠
とらへがたい珠
ありがたい珠」
昨日は無い
後悔は遠のいた
大きな橋の影が僕にのしかかる
かたい影の、暗い黄色の、土の上に
わたしは坐り込む
ついに緑の龍があらわれた
長い胴をすべらせて
わたしの頭上を泳いでゆく
龍は先の山にぶつかつて
その先の国へと辿つてゆく
まだ尾は見へず
わたしは橋の影に覆われて
疲れた町を見あげる
隠れた夕日が塔には映る
白い花が風に揺れる
ほのかに揺れる
「かゑがたい珠
とらへがたい珠
ありがたい珠」
物事の裏に眠つた
白い世界を見てみたい
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