星の予言 風の記憶 砂の予言

夜は、暗く乾いていた。

田舎の電車は針金で情けなく、

黄いろなひかりをどろどろ溢して、

山の麓を走っていた。


窓を持ち上げて、顔を出した。

電車はあまりにゆっくり走るらしく、

電灯から出た光の粉が、

路の草に当たって、消えるのまで見えてくる。


がちゃがちゃ鳴り出した。

もうすぐ電車が止まるのだ。

山の水の音が甦る。

木々を流れる透明な水である。


駅に着くと、二人の大人は降りて

さっさと出て行く。

僕はしっかり鞄を背負って、

外套のポッケに切符を探した。


「それでは、あんぜんにお帰りなさい」

電車は折り返して行ってしまった。

みるみる小さな光の列が縮まって、

山の陰に隠れてゆく。


月が見つからない。

その分、張り切ったように星が輝く。

——ああはれないとりのこよ はれ

——ああはれないとりのこよ はれ

 はれはれ おなし

両手で星を振り払った

星はきらきら笑っていた。


昼の箱はほわほわとしている

ほこりみ払って、

なかから銀色の缶を取り出す


そのなかには外国の貨幣が眠ってる

旧い昔に訪れた、

遠い未熟な国であった


幼少のみぎり

初めての発作でたおれた僕を

叔母が介抱した


彼女はよく僕を駅まえの公園へつれてゆく

当時の僕は滑り台を山のように高く感じ

非常な程度でおそれていた

叔母はおもしろがって

僕をてんじょうへひっぱった

上からの景色にあしがすくむ

僕は気を失った


叔母は電車が好きだった


がらくたな部屋 呪文

魔法陣 風水札 トーテム 赤砂時計

女性のような老翁が

手から砂をこぼす

砂は水晶に当たって

くるくるおちてつもる

「魔女はひんがしにあらわれる

    清き乙女は板から剥がされ

  竜の断末魔が響くとき

 そなたは、黒マントを授かるだろう」

部屋の外を車がとおる

部屋はがちゃがちゃ揺らされた


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