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ここは……どこだろう……
身体感覚がない。まるで……幽霊になったような……
そうか。私は死んだんだ。だから幽霊になったのか……?
というか、幽霊って、実在したんだな……
"違いますよ"
……!
アキの声……いや、声じゃない。なんだろう。意思のようなもの? それがダイレクトに伝わっているような。
"あなたは幽霊ではありません。あなたは……わたしの中の、あなたです"
なんだと? どういうことだ?
"わたしはあの錠剤に含まれているナノ
そうか……
最近、そのような技術が実用化された、という話は聞いていた。開発元はコンパニオンメーカーの最大手、イズミだ。アキの「実家」でもある。
ナノプローブの寿命の関係で、死の寸前までの状態をバックアップするなら、ナノプローブの投与は死の約一ヶ月前から行う必要があった。私の病状をずっと把握していた「彼女」なら、私の死期を正確に予測することも可能だろう。そういうことだったのか……
ふと、目の前に人影が現れる。その姿形はアキそのものだった。
だが、コンパニオンであることを示す、頭のアンテナが、ない。
「お久しぶりです」
その女性は、にこやかに言った。
これは、アキじゃない。アキはこんなに愛想良くはない。これではまるで……人間じゃないか。
「君は……」
「この姿なら、分かりますか? 先生?」
私は耳を疑った。先生、だって? もう半世紀以上そう呼ばれたことはない。しかし私は次の瞬間、続いて目も疑うことになる。
向かい合わせの彼女の顔が、みるみる若返っていくのだ。髪が短くなり、着ている服がセーラー服とスカートに。これは……私が最初に赴任した高校の、当時の女子生徒の制服?
……ああっ!
私は思い出した。彼女は……私に告白した、あの女子生徒だ……
「そうです。3年2組3番、泉 千秋です。享年二十一歳」
「え?」
「高校を卒業してすぐ、わたしは悪性リンパ腫を患い、手当の甲斐も無く亡くなりました。当時の医学では治療困難な病でした」
いつの間にか、彼女はアキに酷似した元の姿に戻っていた。
「そんな……」
そうだったのか。私は元気だった彼女の姿しか知らない。
「ん? ちょっと待って、泉、って……」
「ええ。株式会社イズミの初代社長は、わたしの父です。『アキ』は元々、わたしをモデルに作られたんですよ」
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