第2話 テスト期間の過ごし方
去年の今頃はもう雪が姿を見せ始めていた気がする。
たしかどっさりと積もる訳でもなくうっすらと。
生徒たちはマフラーやらネックウォーマーなど防寒具を身につけ始めていた。
三階の教室から見るメタセコイアの樹が白と茶へと色が変わっていく。
廊下の窓からは中庭のコンクリートが見えなくなっていた。
教室のヒーターも運転する時期になり少しだけ教室が暖かいと感じた。
雪が積もったかと思えばすぐに溶けて、晴れる日がまた戻ってきた。
そんなテスト一週間前から始まるテスト期間を過ごすあの日の彼と僕
「テスト期間って部活もないし遊べるからいいよな」彼はそんな事を言ってたっけ。
僕は基本放課後は学校に残らずバイトに行く。バイトも土日を除けば基本毎日ある。
ただテスト期間は別だった。
だから放課後学校に残って居られるのが何故か嬉しくワクワクした。
もちろん隣にはいつも彼が居た。
彼には数学を聞いた。理解できない数学を真面目に聞いた。これっぽっちも理解できなかった。でも、何故か理解出来た気がしてしまう。公式も計算の仕方も覚えていないのに彼に教えてもらうと理解出来た気がした。特段教えるのが上手いわけでもない彼に。
他の日は机を向かい合わせそれぞれ違う曲を各々のイヤホンで聴きながら黙って白いノートの上を手を走らせる。
飽きたら片方がイヤホンを外す、それに合わせてもう片方もイヤホンを外す。
そしてバカ話を滝のようにこぼした。
バカ話が尽きるとまた手を走らせる。
外が暗くなって六時半を迎える頃には一緒に帰った。雨が降っていれば各々の迎えを呼ぶ。晴れていれば一緒に歩いた。学校から割と近い彼の家に僕の迎えを呼び、彼の家まで話しながら歩いた。
そこでまた話忘れていたバカ話を思い出しする。
ーそれが僕と彼のテスト期間の過ごし方だった
テストは四日間あってどれも二三時間で終わるのでその後は自由だった。
もちろんその後は彼と過ごした。学校に残り次の日の提出課題を消化したり、近くのコンビニまで飲み物や昼飯を買いに行った。基本は席に着いてゲームをして過ごした。合唱曲を歌ったりもした。その度彼に音痴と言われたのを覚えている。
数日後に返ってくる答案を比べ彼より僕の点が低いとバカにされた。ただ、基本的には僕が勝っていたため僕の点は聞きたくないと言われた。
そんな僕だけど、数学だけは適わなかった。二点の差すら「実力の違いだ。負けは負け」と笑いながら言われたのをハッキリ覚えている。
そして彼はその自分が勝ったという結果だけを覚えている。
何日経っても「この前のテストで勝った」と誇っていた彼はまだまだ幼い。
ーそれがテストが返却された後のお決まりだった
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