第3話豊胸少女登場
「なんだよカイル、お前腹話術できたのか?」
「まぁな、最近習得したばかりだけどな」
「お馬鹿な事いってないでどくなり屈むなりしなさいな!」
「ガフゥ!」
2人の小馬鹿にしたような小芝居に怒りを煽られ、カイルの脇腹に豪快な中段蹴りが炸裂する。
先程の声の少女は、どうやらカイルの後ろにいたらしい。
ようやく目が合ったその少女を見てサクヤは思った。
「いや……バランスおかしいだろ」
「咲夜様、声に出ておられます」
ゴウガイに指摘され、ヤベッっとわざとらしく口を塞ぐ動作をするサクヤに少女の鋭い鉄拳が繰り出されるが、サクヤはそれをなんなく
(う〜む、やはりバランスがおかしい。胸がでかすぎる)
彼女は巨乳いや、爆乳であった。
こうじ色の髪を高い位置で2つに結んだ150センチ程度の少女。そのくせ胸元には、今にもシャツのボタンを弾け飛ばそうとしている包容力の権化を2つほど携えている。体躯が華奢な分より一層目立ってしまうのだ。
橙色の瞳に若干の涙を浮かせてサクヤを睨んでいる。
「父上が女性を泣かせてはいけないとよく言っていたけれど、なるほどね。……確かに涙で顔を歪めた女性というのは、なかなかどうして見るに耐えないな」
「どういう意味ですの!」
怒りの鉄拳が再びサクヤに向かうが、サクヤはそれを片手で止めて話を戻させる。
「悪かったって、もうからかわないよ。それよりなんで無理なの?」
「咲夜様、女性に対しての接し方が雑すぎます」
サクヤの失礼な態度にため息を吐きながら、ゴウガイが一歩前に出て少女に近づいた。
「ラーシャ様。先程は主が失礼を致しました。よろしければお使い下さい。お可愛らしい顔立ちが勿体無いですよ」
「あ、ありがとうございます。こちらこそお見苦しいものをお見せしました」
爽やかな笑顔でそっとハンカチを渡し、さりげなく女性の容姿を褒めるモテテクを発揮する心までイケメンのゴウガイ。
顔に似合わず女性への接し方もお手の物らしい。
心なしか少女の顔もほんのりと赤くなっている。
「ん? ラーシャ? どっかで聞いた名前だな……確かいつも行ってる精肉店の店長の娘さんだったか?」
「誰ですのそれ⁈ 入隊時ランク5位のラーシャ・ランビリスですわ!」
「咲夜様……」
「おっと、こいつは失礼。本日2度目の失敗だわ、ってことで話を戻してくれ」
あくまでも自分の道を行くサクヤにゴウガイは頭を抑え、難しい顔をしている。
「先にこちらからの質問よろしいかしら?」
「どーぞ」
「あなたの後ろにいる方達はあなたの配下の方ですの?」
サクヤが振り向くとそこにはゴウガイを含む4人が立っていた。
ゴウガイ、ヤヨイ、ナルミ、リュウヤの4人である。
「そーだよー? ってか昔からよく遊んでたから友達に近いかもな。ヤヨイは違うけど」
「あら、酷いわ咲夜様。昔の事とはいえ
「おい剛鎧、こいつの頭半分に割ってくれ。記憶を失くしている可能性がある」
「照れなくても良いではありませんか、そのうち現実にしてみせますわ」
「おい剛鎧、こいつの口を
「私を無視しないで下さいまし‼︎」
ラーシャの怒りを受け、一歩前に出たのはサクヤと話していたヤヨイだ。
太腿くらいにまで伸びたレモン色の長髪はウェーブがかけられ、男性陣の内なる獣を呼び起こす様な程良い肉付き。ラーシャ程ではないが、ヤヨイも中々に胸がでかい。違うのはラーシャは律儀にシャツのボタンを全部留めているがヤヨイは胸の谷間を曝け出す程度にボタンを開けている点だろう。
まったりと優しさを感じさせる表情にはエメラルドの知的な瞳がよく映える。
ニコニコした表情がよく似合い、同性からも好かれそうな彼女は、一言で表すならばゆるふわ美人である。
ラーシャも無意識に警戒を解き、自分に視線を向けているヤヨイをうっとりとした表情で見つめ返す。
これはワンチャン百合展開が始まるか? とカイルが思ったその時。
「私と咲夜様の時間を邪魔をしないでもらえるかしら? チビブスちゃん」
ピシッとカイルとラーシャの時間が止まる。
(え? え? 今この方はなんておっしゃいましたの? チビ? ブス? え、初対面でいきなり? いやいや、まさかそんなはずありませんわ。きっと聞き間違いでしょう)
ラーシャはヤヨイの発言に混乱しながら硬直したままヤヨイを見続ける。
「私を無視するとはいい度胸ね、雌牛ちゃん」
「誰が雌牛ですのー! あなた失礼にも程があるのではなくて⁈ 普通初対面の相手にそこまでいいますの⁈」
(聞き間違いじゃなかった。この女は真正面から私を侮辱していますわ! しかも表情はまったく崩さずに! にこやかに言う事じゃないでしょう!)
ラーシャの言い分はもっともだとサクヤをはじめ全員が思う。
だがサクヤ、ゴウガイ、ナルミ、リュウヤの4人は知っている。このヤヨイという女がどんな女なのかを。
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