第3節 人間界

アベルは王都から少し離れた村へ飛び立った。


静かな村の周辺には農作物が一面に広がっていた。


「尻尾も爪も隠した。これで人間と容姿は変わらぬだろう」


アベルは家屋が密集してる村の中心と思われる所に足を踏み入れた。


静まり返った夜の村には松明のパチパチッという火が飛び散る音だけが響いていた


「見かけない顔……誰?」

ふと背後から声がした。小柄で華奢な容姿、小動物のような目をした女だ


「この辺りを旅していたのですが道に迷ってしまい……そこでここの明かりが見えたので気付けば向かっていました」


「泊まるとこない……私のお家すぐそこ。泊まってって」


家に案内してくれた少女の名はナターシャ。

1人で暮らしているらしい。

ナターシャからは王都サラザーンやその周辺、商業など色々なことを聞いた。書庫で読んだ人間界についての本には記載されていないことが多くあり、興味深いものばかりだった。そして何よりも気にかかるのは悪魔祓い。通称「エクソシスト」と呼ばれる輩だ。どうやら奴らは我々悪魔を消滅させる力を持っているらしい。確かにここ最近悪魔界では天使族以外で悪魔を殺す種族がいるとは聞いていた。まさか人間界にいたとは。これは警戒するべきだ。


そしてアベルは人間に聞きたかったこと

『 愛とは何か』をナターシャに問いかけた


「愛……離れたくないって思うこと…そばにいたいって思うこと……それが愛」


「ナターシャ。お前は愛を知っているか?」


「もちろんだよ。愛はなによりも凄い」


その言葉を発したナターシャは虚ろな目をしていた。




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