第26話
エンドロールが終わり、画面が戻り現実へと引き戻される。一度思い出したくも無いことを思い出してしまい、本当にこの作品を観ても良かったのかと考えてしまった。だがそれでも幸せな結末を見届けることができた。なぜなら隣にこうして彼がいたから――。
「あ……」
私はいつの間にかハヤトの手を握り締めてしまっていたことに気づいた。それと同時に、彼と目が合った。
「あ、いや、これは、その……」
「いいよ。このままでも」
どうやって言い訳しようか考えていた私に、ハヤトは優しく微笑んでくれた。何も言わずに、手を握り返してくれた。ハヤトがいたから、私は――。
……もし、私が召喚魔法で召喚したのが、別の人間だったら?
私は、想像した。
*
「キスしてくれ!」
「はい!?」
「だから、キスだ」
「ちょっと、言ってることがよくわからないんですが……。なんでそんな事しなくちゃいけないんですか!?」
「キスしてくれ!」
「へ!?」
「……んちゅ。ちゅううう……」
「ま、待った! ストップストップ!」
「キスしてくれ!」
「いいぜ!」
「そうか! なら遠慮なく!」
「ああ!」
「んー…………」
「ど、どうしたんだ!?」
「と、届かない……」
「うぐぅっ!? そんな馬鹿な!?」
「今馬鹿って言ったか!?」
「キスしてくれ!」
「ぽぽぽぽぺぺぺっぺっぴぴぴ!?」
「何故動揺して赤くなっているんだ? ともかく早くしろ!」
「ぽぽぺぺぺっぷっぽぺぺぺえぴ!」
「落ち着け!」
「ぷぺぇ!!」
「キスしてくれ!」
「嫌です」
「なん……だと!?」
「頼む! 一生のお願いだからキスしてくれ!!」
「俺には彼女がいるんだ」
「そんなこと言っても無理矢理してやる!! 覚悟しろ!!」
「キスしてくれ!」
「何で俺を召喚した?」
「無視かっ!」
「あぁ、悪いな。俺は忙しいんでね。早く家に帰りたいんだけど……」
*
……こんな風に、他の人間も大して変わらないリアクションをしていただろうと思った。ハヤトはやはりたまたま私の召喚魔法に選ばれただけの人なのだろうか。
合理的に考えると、そうなのかもしれない。だが、そうだとしても、私が転移の影響で動揺してしまっても、それでも受け入れてくれた。ハヤトは特別な人間では無いのかもしれない。だけどそれでも、私のために、たくさんの事を考えて、たくさん動いてくれている。
……そうか。だから私は。
「ハヤトの事が好きなんだ」
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