第24話
『私に懐いている……! 懐いてくれてる!』
近所を散歩していた犬に顔を舐められながら明るい笑顔を見せている彼女。
『わ、私にだって、恥じらいはあるんだぞっ!』
うっかり着替えているところを見てしまったときの、顔を紅くして怒っている彼女。
『こんなの……づらずきる……じゅびびび』
アニメを見ているとき、敵との戦いに勝っても悲劇が待っている主人公の過酷すぎる運命に涙しているときの彼女。
『世界はこんなに広かったんだな!』
展望台から見える風景にテンションを上げながらやたら大げさなことを言っているときの彼女。
「竹浦くんっ!」
あ、え……あ?
「竹浦くん! ぼーっとしてどうしたの?」
目の前には不思議そうな顔をした萌乃がいた。
「えっと……何?」
「何って、そりゃ移動教室だよっ! いどうきょーしつ!」
「ああそうか。そうだったね」
「大丈夫? 気分とか悪かったり?」
「いや、そんなことはないよ。ちょっと考え事してた」
「考え事ぉ? なになに気になる!」
「いや、言えない」
「えーなんでー!?」
言えないものは言えない。というか俺は今何を考えていた。マーちゃんの顔を思い浮かべて、それで……。
「ちょっと待ってよー!」
顔が紅くなっているのを嫌でも感じたので、萌乃から逃げるように教室を後にする。
俺は、マーちゃんのことが好きなんだな。好きでたまらないんだな。
自分でも、そう思えるくらい、俺はこんな風に、マーちゃんとのあることないことを常に想像し続けていた。
……早く。早くどうにかしないと、俺はおかしくなってしまう。
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