第2話 お盆の集まり

Sさんがかつて祖母から聞いた話。


Sさんの祖母マキさんが子供のころ、お盆になると必ず本家に親戚一同が集まる習慣があった。


本家がある場所の具体的な地名などは出せないが、とある山村の旧家で、かなり大きな屋敷だったという。


幼かったマキさんは従兄妹たちに会えるのが楽しみで、その年も両親とともに本家へと向かった。


親戚皆で墓参りを終えると夜は恒例の酒宴となった。


ちょうどその夜は雨が強く降っていたので、子供達は食事を終えると屋敷の中を駆け回って遊んだ。


マキさんは久しぶりに会った従兄妹たちと心ゆくまではしゃいで過ごした。


夜も遅くなったのでそろそろ寝る時分だった。

広い部屋に布団がいくつも敷かれ、子供達は皆そこで一緒に就寝する。


ただ子供達は興奮がさめていないので、すぐには寝付けない。


布団に横になりながらおしゃべりを始めた。


学校の事や最近の遊びのことなどをとりとめもなく話していたが、誰かがポツリと、いなくなったカヨちゃんの事を口にした。


カヨちゃんも従兄妹の一人で七歳になる女の子だった。

マキさんより少しだけ年下で仲も良かった。


でもカヨちゃんは三年前のある日を境に行方知れずになってしまった。

警察も含めて皆で大掛かりな捜索が行われたが、とうとう見つからなかった。

人攫いにあっただの神隠しだの色んな噂ばかりが飛び交ったがいまだに手掛かり一つないという。


「シノおばさんも元気なかったな」


また誰かが呟いた。


シノおばさんはカヨちゃんの母親だ。

昔は綺麗な人だったがカヨちゃんがいなくなってからすっかり窶れてしまった。


今日の宴席でも隅のほうに座って言葉少なく俯いていた。

かつて美しかった黒髪には白いものが混じり、生気のない顔で卓の上をぼんやりと眺めているばかり。


カヨちゃんの葬式は出していない。

夫には先立たれているので、シノおばさんは孤独の身だった。


「カヨちゃん、どこに行っちゃったんだろうね」

マキさんは何となく気の毒になり、暗い天井を見上げながらぼやいた。


「調べる方法はあるよ」

誰かが唐突に言った。


言ったのは従兄妹の中で年長のヤエノだった。

十四になったばかりだが、本家筋の長女で従兄妹皆から慕われている。


「調べる?どうやって?」


マキさんが訊くとヤエノは意味ありげに笑った。


「カヨちゃんをここに呼ぶ」


ヤエノの言葉の意味が分からず、皆の間に沈黙が流れる。


外では雨脚が強まっていて、風も出てきた。

閉めきられた戸板が時折ガタガタと音を立てる。

この分だと嵐になりそうな気配だ。


「"裏お尋ね"をやるんだ」


ヤエノは確かにそう言った。

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