第116話 ゼニアさんのハンター仲間
私のドングリ型毒煙玉が、ジェームズさん達の前衛と後衛、それぞれの中心で爆発すると、大量の煙が出てきてすぐさまジェームズさん達を飲み込む。
「「「「「ぎゃあああああ!!」」」」」
あ、あれ? なんか普通に効いているっぽい?
ジェームズさん達はエアカーテンの魔法で毒煙玉対策をしていたはずなのに、どうして?
私がゼニアさんの方を見ると、ゼニアさんふふふっと笑いながらこちらに歩いてきた。
「ゼニアさん、エアカーテンの魔法を使われているのに、なぜか普通に効いてます!」
「あのエアカーテンの魔法はね、魔法の起点で空気を作り出し、そこから発生する弱い気流をもって気体の毒を防ぐ魔法なの。だから、今みたいに周囲に漂っている状態の毒の煙なら防げても、毒煙玉の発動時の勢いのある煙を防ぐのは難しいのよ」
「そうだったんですね。じゃあ、何も警戒する必要無かったんですね」
「ええ、その通りよ」
私とゼニアさんの会話の最中も、ジェームズさん達は悲鳴をあげ続けている。大急ぎで走って毒の煙幕から脱出、その後私の渡したポーションを飲めば助かるんだけど、そんな簡単なことすら出来なくなるのがこの毒煙玉の恐ろしさだ。全身を襲う痛みで、ビックリするほどなにも出来なくなるんだよね。
実際私もイーヅルーの街でハンター登録をする際の模擬戦で巻き込まれたとき、猫ボディに戻る以外何にも出来なかったんだよね。あの時は人間ボディの力だけでハンター登録しようと思っていたのに。
「さくらさん、そろそろ彼等を助けてあげましょうか」
「はい、お願いします!」
私とゼニアさんは見つめ合う。
私とゼニアさんは見つめ合う・・・・・・。
「さくらさん?」
「ゼニアさん?」
あ、あれ? ゼニアさん助けてくれないのかな?
「さくらさん? そろそろ助けてあげましょう?」
「えっと、私、毒煙玉の影響をポーションで治してあげることは出来ても、毒の煙そのものにはなにも出来ませんよ?」
「あら、それは大変ね、どうしましょう? この煙って、すぐに消えたかしら?」
普通の煙ならちょっとした風ですぐに拡散して消えると思うんだけど、この毒煙玉の煙は、そうやすやすと消えないような効果があるんだよね。だって、そういう魔法をかけたから。
「えっと、確か30分くらいは毒として十分な効果があったかと思います」
「どうしましょうね。悲鳴は聞こえなくなったけど、無事ではないわよね」
「そうですね。困りましたね」
すでにジェームズさん達の悲鳴は聞こえない。かわりにうめき声のような音や、かひゅー、はひゅーという音が聞こえるだけになっている。
ただ、命に別状はないはずだ。毒煙玉って名付けたけど、中身は玉ねぎの目にしみる成分と、唐辛子の辛み成分だけだからね。ジェームズさん達には申し訳ないけど、30分くらい我慢してもらおう。軍人さんならそのくらい平気だよね! 煙さえ消えてくれれば、ポーションで復活できるしね!
「それじゃあゼニアさん、毒煙玉の効果が切れるまで、お茶でもしますか?」
「そうね。この状況でお茶というのもひどい気はするけど、やれることはないものね」
私とゼニアさんは毒の煙幕のすぐ横で腰を下ろす。毒の煙幕はじょじょにその範囲を拡大しつつあるけど、ゼニアさんが魔法でこちらにはこれ以上毒の煙幕が来ないようにしてくれたので、この場所はすでに安全地帯になっている。訓練場にいる他のハンターさん達とは距離があるから、イーヅルーの街の時みたいな2次被害も気にしなくて良さそうだね!
「はい、ゼニアさんどうぞ」
私はマジックバッグの中からコップと水筒を取り出して、ゼニアさんにお茶を渡す。
「ありがとう、さくらさん」
私も自分のコップにお茶をいれて、それからお菓子も取り出す。そしてまったりとゼニアさんとお茶をしていると、別の場所で訓練をしていたハンターさん達の一部がこちらに近づいてきた。
こちらに近づくハンターさん達は全部で3人、男の人二人と女の人一人だ。歩き方を見ただけでわかる、この人達、強いね・・・・・・。っていうのは嘘です。歩き方を見てそんなことがわかる人なんていないよね。でも、強そうなのなのは本当だよ。だって、男の人二人は薄着なんだけど、ぱっと見ただけで筋肉質なのがわかるくらい筋肉が付いているからね!
二人の男の人の内、三人の真ん中を歩く人はきっと剣士だね。腰に剣を差しているし、これぞアスリートっていう感じの筋肉が付いているから、間違いないと思う。
そしてその右にいる女の人は回復魔法使いか、強化魔法使いかな? 手には大きな杖を持っている。杖を持っているだけだと、攻撃魔法使いの可能性もあるんだけど、回復魔法や強化魔法といった、味方を回復したり強化したりする魔法使いと、攻撃魔法や弱体魔法を得意とする魔法使いだと、服装や雰囲気が違うんだよね。この女の人は服装の雰囲気がロビーさんと近いから、きっとロビーさんと同じようなタイプの魔法使いのはずです。ちなみにロビーさんはジェームズさん達のパーティーのヒーラーです!
最後に、剣士の人の左にいる男の人は、ボヌールさんやロジャー将軍のような縦にも横にも大きい人だ。いわゆるゴリゴリマッチョな人だね! 武器を持っていないからどんなタイプのハンターかはわからないけど、きっと重戦士だね。
ハンターさん達が私達の方に近づいてくると、ゼニアさんが立ち上がる。3人のハンターさんは私のほうも少し見てきたけど、主にゼニアさんのところに視線が向いているね。もしかして、ゼニアさんの知り合いなのかな? そんなことを考えていると、真ん中の剣士さんがゼニアさんに話しかける。
「よう、ゼニア、久しぶりだな。イーヅルーの方が片付いたって聞いたからな、こっちに来ると思っていたぜ」
「お久しぶりねトム、元気そうで何よりだわ。ミシェルとサイモンも元気そうね」
「ええ、ゼニアも変わりないようで何よりよ」
「うむ! この通り我輩の筋肉は今日も絶好調よ! ゼニアの筋肉は・・・・・・、昔とさほど変わらぬようだな!」
ゼニアさんは3人と挨拶をしながら、ミシェルさんと抱き合う。サイモンさんと呼ばれたゴリゴリマッチョさんは、腕を90度曲げて筋肉をぴくぴくさせている。
「他のメンバーは?」
「今日はパーティーの休養日だからな、他の連中が何をしているかは知らん」
「うむ! 我輩達は趣味の模擬戦をしているだけだからな!」
「私は怪我をしたときのために呼ばれました」
「はあ、相変わらずの戦闘好きね」
「何言ってんだよゼニア。ハンターは程度の差こそあれ、基本的には同類だろうが。それで、そっちの女の子は誰なんだ? 見たとこ新人ハンターのようだが、まさか俺達が何度誘ってもパーティーに入ってくれなかったお前が、そんな小さな子とパーティーを組んでいるわけじゃないんだろ?」
「あら、そのまさかよ。紹介するわね、ランク4のハンターのさくらさんよ。それからさくらさんにも紹介するわ、この3人はランク6ハンターのトム、ミシェル、サイモンよ。以前私がこの街で活動していた時に、臨時パーティーを何度か組んだことのあるハンターよ」
「どうも初めまして、さくらと申します」
「俺はトム、よろしくな。一応パーティーリーダーをしている」
「私はミシェルよ。よろしくね」
「我輩の名はサイモンだ! ふむ、いくら女の子とて、剣を扱うハンターならもう少し筋肉をつけたほうがいいのではないか? ゼニアどころか、ミシェルより細いではないか!」
「私も筋肉をつけたくて鍛えているのですが、ぜんぜんつかないんですよね」
学校で剣を習い始めてすでに1か月以上経過したけど、筋肉が付く気配は全くない。折角学校で剣を習っているわけだから、出来れば強くなりたいんだけどね。やってみると意外と楽しいし。
「ふ~む! 筋肉がつかないとな!? よかろう、我輩がアドバイスをしようではないか!」
「ありがとうございます!」
「うむ! では普段の食事とトレーニングの内容を教えてもらおうか!」
「はい、もちろんです!」
こうして私は、ゼニアさんの友達のハンターさん達と知り合った。私とサイモンさんがいきなり筋肉トークで盛り上がったのがちょっと意外だったのか、ゼニアさん達3人が驚いていたけど、筋肉は剣を使うものとしては決して外せないものなのですよ!
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