第114話 ランク4のハンターの実力

「こんにちは、訓練場を使いたいのだけど、いいかしら?」


 ジェームズさん達と手合わせをする約束をした翌日、私達は早速ハンターギルドへとやって来ていた。今はゼニアさんが受付で訓練場使用の許可を取っているところだ。


「使用目的をお伺いさせていただいても構いませんか?」

「ええ、パーティー内の戦闘訓練をしたいの」

「かしこまりました。では、訓練場内の5番のエリアをご使用ください。場所はわかりますか?」

「大丈夫よ。お借りするわね」

「はい」


 ゼニアさんとの会話が終わると、受付さんは壁にかけてある訓練場の見取り図の5番のところに、使用中の札を掛ける。この見取り図を見る限りだと、訓練場そのものは何もないただの広場みたいになっている感じかな? だから物理的な境目はないっぽいんだけど、内部は大まかに番号分けがされている。きっと複数のハンターが使用する際に、場所が被らないようにしてあるんだね。


 5番以外にも3つほど使用中の札が掛かっているけど、どの使用中のエリアも、5番とは離れているみたいだね。これなら遠慮なくジェームズさん達と戦えるね!


「行きましょうか」

「はい!」

「「「「「おう!」」」」」


 私達はゼニアさんの後に続いて行く。どうやら訓練場はこの街のギルドでもイーヅルーの街同様に地下にあるみたい。地下へと続く階段を降りると、そこにはとっても広い訓練場があった。流石はイーヅルーの街よりもハンターの数が多いギルドだね、訓練場もイーヅルーの街の訓練場よりはるかに大きい。


 そしてそんな大きな訓練場には、すでに3組の訓練中のハンターさん達がいる。新顔が珍しいのか、少しだけ他のハンターさん達に見られる中、私達は5番のエリアへと向かって行く。


「5番のエリアはこの辺りのようね」

「よし、んじゃあ準備運動をしたら早速手合わせしようぜ」

「はい!」


 私達は軽く走ったり武器を振ったり、ストレッチをしたりと、準備運動をする。


 うん、今日の私は絶好調みたいだね。船旅の疲れが残ってたりするかなって思ったけど、そんなの一切残っていないみたい。これはゼニアさん行きつけの高級宿屋さんのご飯とベッドのおかげだね!


 準備運動を終えると、再度みんなで集合する。


「それじゃ、最初は誰と誰がやる? 俺対ゼニアさんでいいか?」

「ちょ~っと待った~! ジェームズばかりずりいぞ、俺だってゼニアさんとやりたいんだよ」

「そうだぞジェームズ、隊長だからって抜け駆けするなよな。むしろ譲れ!」

「うむ。俺が最初にやる・・・・・・」

「僕は1対1での直接戦闘は苦手なので、怪我をしたとき用に待機していますね」


 ジェームズさん達は誰が最初にゼニアさんとやるかでもめだした。う~ん、ハンターランク6のゼニアさんと戦いたいその気持ちは分からなくもないけど、私と戦いたいという猛者はいないのかな?


「少し待ってもらえるかしら。私と戦いたいと言ってもらえるのは嬉しいけど、皆さんのお仕事を考えたら、遊撃手で構わない私よりも、護衛対象であるさくらさんの実力を確かめるのが先ではないかしら?」


 うんうん、ゼニアさんの言う通りだよね。


「それもそうか。よし、それじゃあまずは俺がさくらさんと戦うってことでいいか?」


 ゼニアさんの言葉で私と戦うことを決心したようだけど、どうやら彼我の戦力差は見抜けていないようだね! 私としてはあんまり自覚はないし、私とハロルドスレイヤーの力だけでそれが出来るとも思っていないんだけど、一般にランク4のソロハンターと、新兵さんの5人パーティーを比較した場合、ランク4のソロハンターの方が強いらしいんだよね。


「ちっちっち、甘いですよジェームズさん、甘すぎです! 5人まとめて相手してあげます!」

「ふふふ、さくらさんやる気満々ね」

「当然です! これでもハンターランク4ですからね。いくらジェームズさん達が軍人さんだからって、新兵さんには負けません!」


 ただ、こんなビッグマウスな発言をして負けると、盛大に落ち込む未来が見えるので、本当に大丈夫か小声でゼニアさんに最終確認をする。


(えっと、大丈夫ですよね?)

(ええ、大丈夫よ。毒煙玉一発でさくらさんの勝ちよ)


 そっか、毒煙玉一発で私の勝ちか。ゼニアさんがそう言うんなら安心だね!


「ほお、俺達を新兵扱いするってか? まあ否定はしないさ、実際軍人になってまだ日が浅いからな。でも、だからと言って弱いと思われてるのは業腹だな」


 ジェームズさんがそう言いながら威圧してくる。こ、これは、確実に学校のみんなよりも強そうな感じだ。圧が違う。本当に大丈夫なのかな? 私はちらっと視線でゼニアさんに確認を取ると、ゼニアさんは首をゆっくり縦に振ってくれる。よ、よし、ゼニアさんが大丈夫って言うんならきっと絶対大丈夫だ。


「いや、ジェームズ、油断するな・・・・・・。ランク4のハンターが俺達より強いのは普通の判断だ・・・・・・。それに、イーヅルーの街のハンターギルドは厳正だ・・・・・・。さくらさんがランク4ということは、それなりに理由があるはず・・・・・・」


 すると、アレックさんがジェームズさんをたしなめる。そうなんだよね、ランク4のハンターと新兵さんパーティーだと、本当にランク4のハンターの方が強いっていうのが常識みたいなんだよね。


「だな。こいつはアレックの言い分が正しいぜ。確かに嬢ちゃんはぱっと見弱そうだが、見た目に騙されたら痛い目見るかもしれないぜ」

「俺も同感だ。思い出してみれば、俺達は名目上は護衛となっているが、隊長は薬師の嬢ちゃんが起こすかもしれないトラブルの対処をしろと言っただで、モンスターから守れとは言ってねえ気がする。もしかすると、マジで俺達より強いかもしれねえ」

「そうですね。僕も油断するべきではないと思います。平均的なランク4のハンターなら、僕たちが5人がかりでも倒せないモンスターを倒せるはずですし」


 どうやらジェームズさん達の相談が終わったみたいだね。みんなさっきまでとは目が違う。それじゃあ、いざ尋常に、勝負だね!



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