第109話 鬼が島のハンターギルド
宿屋さんの確保に成功した私達は、鬼が島にあるハンターギルドへと向かうことにした。
「それじゃあジェームズさん、行ってきますね」
「ああ、大丈夫だとは思うが気を付けてな」
今回ハンターギルドへと向かうのは、私とゼニアさん、それと副隊長で盾役の重戦士のアレックさん、槍使いのジャックさん、弓使いのジョーさんの5人だけ。隊長であるジェームズさんとヒーラーのロビーさんは、お城にいるロジャー将軍の遠征軍の隊長さんのところに、宿泊場所が決まったことを報告に行くんだって。街中だしそこまで危険はないということで、今回は二手に分かれての行動になりました。
私達5人は、宿の従業員さんの操る馬車に揺られながらハンターギルドへと向かう。この宿屋さん、高級宿屋さんというだけのことはあって、サービスも抜群にいいみたい。まさかハンターギルドへ行くのに、宿屋さんの馬車を御者さんごと貸してくれるとは思わなかったよ。ハンターギルドは1門と呼ばれるダンジョンから一番近い門の近くにあるらしく、割とすぐに到着した。
「ここがハンターギルド・・・・・・、すごく大きいですね」
馬車を降りた私の目の前には、イーヅルーの街のハンターギルドよりもはるかに大きなハンターギルドが建っていた。
「ふふふ、この街のハンターギルドに登録しているハンターの数は、この国で一番多いのよ」
「それでこんなに大きいんですね」
私のつぶやきにゼニアさんが答えてくれる。そっか、この国で一番大きいハンターギルドなんだね。
「は~、にしてもでけえな。イーヅルーの街のハンターギルドの倍以上あるんじゃねえか?」
「だな、いったい何人いるんだよって話だな」
「うむ・・・・・・」
アレックさん達もこのハンターギルドの大きさに驚いているみたいだった。それから、治安維持が大変そうとか、そういう難しい話もしだした。警備隊の隊員さんからすると、ハンターイコールトラブルの多い職種っていうイメージなのかな?
「さ、みんな中に入りましょう」
「「「「はい」」」」
ゼニアさんに促されてみんなで鬼が島のハンターギルドの中へと入っていく。
「内部の構造はイーヅルーの街のハンターギルドと同じ感じなんですね」
「ええ、ハンターギルドはどこも似たような構造なのよ」
内部は珍しさこそなかったけど、国内最大のハンターギルドというだけのことはあって、人がそれなりにいた。でも、今は午後の4時くらいだし、きっとこれでも閑散としている時間帯なんだろうね。受付とかはらがらだ。
私達はそんながらがらの受付へと進んでいく。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」
「拠点登録をお願いできるかしら?」
「かしこまりました。ギルドタグをお願いします」
ゼニアさんと一緒に受付さんにギルドのタグを渡す。この拠点登録っていう行為なんだけど、ハンターが拠点を移す時に真っ先に行う行為なんだって。これをすることによって、ハンターギルドは街にいるハンターを把握できるし、ハンターもハンターギルドからランクに応じた優遇をしてもらえるのだそうだ。
「後ろのお三方は?」
「俺達はハンターじゃない、軍人だ・・・・・・」
「これは失礼しました」
そうだよね、5人で一緒に行動していたら5人組のパーティーって普通思うよね。
「いや、構わない・・・・・・。この組み合わせを見れば、5人組のハンターパーティーだと思うのは普通のことだ・・・・・・。二人のギルドタグを見ての通り、俺達はイーヅルーの街から来た・・・・・・。そして俺達はゼニアさんの技術を学ぶために、臨時パーティーを組ませてもらっている最中だ・・・・・・」
これはいわゆる表向きの理由なんだって。アレックさん達は、本来は私の護衛というか、お目付け役というか、トラブル避けのために来てくれているんだけど、それだとまるでハンターを軍人さんが護衛するという、この国の常識では良くわからない行為になるんだそうです。
そこで、同行者に高ランクハンターであるゼニアさんがいるので、高ランクハンターと軍人さんの交流パーティーという表向きの理由を考えていたみたい。ハンターの狩りの技術は軍隊とは全然違うものらしくって、高ランクハンターに軍人さんが教わるっていうパーティーを組む依頼は、割とあることなんだって。
ただ、この表向きの理由も、かなり穴だらけみたいだけどね。だって、私みたいな小娘がいるし、重戦士のアレックさんみたいな、ゼニアさんとはまるで違うタイプの人もいるからね。
でも、そんな穴だらけな表向きの理由でも、受付さんはそれ以上聞いてはこなかった。きっと本拠地がロジャー将軍のイーヅルーの街だからだね。他の街では変わったことをするのですね、くらいに思ってくれたのかな?
「では、拠点登録が終わりましたのでギルドタグをご返却いたします」
「ありがとう。現在のダンジョンの様子を聞いてもいいかしら?」
ダンジョンの様子か~、確かに気になるよね。もしダンジョンがまずい状況だったら、魚釣りどころじゃないもんね。
「かしこまりました。現在のダンジョン内は、自然魔力の濃度の上昇が確認されております。そのため、すべての層において、平時よりも1ランク以上強力なモンスターが出現しております。上層のモンスターはもともとが弱いため、そこまで影響がないのですが、中層以下のモンスターの強化が問題となっております。現状では、軍が上層と中層の間に陣地を張って、中層のモンスターが上層に上がるのを防いでおりますが、いつまで持ちこたえられるかわからない状況です」
「そう、あまりかんばしくない状況ということね?」
「はい。出来ればゼニアさんのような高ランクハンターの方には、軍への合流ないし、中層以降の階でのモンスターの間引きをお願いしたいです」
「さくらさん、どうしましょうか?」
う~ん、この島に来た一番の目的は海産物、もとい海のモンスターなんだけど、それもこの鬼が島の街があってこそだよね。となるとここは、ダンジョンの鎮静化に協力するのが一番重要だよね。
「私の目的は海のモンスターですが、この街があってこそのんびり海のモンスターを食べられると思うので、私としてはダンジョン中層以降の間引きに協力するのは問題ありません」
「わかったわ。そう言う事だから、協力させてもらうわね」
「ありがとうございます。では、中層以降のモンスターの情報を、出来る限り提供させていただきます。それと、海のモンスターを狙っている理由をお聞きしてもいいでしょうか?」
海のモンスターを狙う理由なんて一つだよね!
「美味しいと聞いたからです!」
「それでしたら、下層にいることが確認されております。この島にあるダンジョンは、地下の魔力溜まりが原因で発生したとされておりますが、このダンジョンの周囲は当然海になります。ですので、ダンジョンの一部は海にも通じており、ダンジョンの中にも海の一部が広がっているのです」
「そうなんですね! ダンジョンの中の海のモンスターって美味しいんですか?」
「もちろんです。モンスターというのはご存知かと思いますが、自然魔力の濃度の濃いところほどより強く、より美味しくなります。そして、通常海の中で自然魔力の濃度の濃い場所というのは、波の荒い場所であったり、あるいは海の深いところだったりと、行くのが難しい場所が多いのです。ですがその点、この街のダンジョンは好都合です。ダンジョンの下層に一部存在する海エリアは、ダンジョン下層の濃い自然魔力の影響を受けつつも、到達することが比較的容易だからです」
おお~、それは凄いね!
「ふふふ、でもさくらさん気を付けてね。ダンジョンの中というのは、確かに私達からすると、海の底や荒波の中よりも戦いやすいフィールドではあるけど、今のダンジョンで下層にたどり着くのは、中々大変のはずよ」
「それはもちろんわかっています!」
「ふふ、それでは、ダンジョンにてモンスターの間引きをしつつ、隙あらばダンジョン内で海のモンスターの狩り、この方針でいいかしら?」
「はい!」
「俺達もそれで構わない・・・・・・」
やったね。まさかダンジョンの奥に行くだけで、美味しい海のモンスターと出会えるなんてラッキーだよね! 正直、お姫様の船での釣りの経験から、海のモンスターをまともに釣れるか不安だったんだよね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます