第103話 豪華客船?

 ロジャー将軍と別れた私達は、船に乗り込む。


「ふんぬ! ふんぬ!」


 ちょっと淑女らしからぬ声が出ちゃったけど、このキャリーバッグ、やっぱり重すぎる! まさか船に乗るのために上りの階段があるなんて、聞いてなかった。


「さくらさん、重そうだけど大丈夫?」

「だ、大丈夫です。一応階段を突破出来る重さにしてきたので!」


 階段は確かに強敵だけど、この程度の障害、海産物のためなら乗り越えて見せる!


 私は1段1段えっちらおっちらキャリーバッグを持ち上げていく。・・・・・・つ、疲れた。でも、見事に階段を突破し、船に乗り込むことに成功した!


 船の中では、船員さん達が私達を出迎えてくれる。


「ようこそ当船へ。乗船券を拝見します」

「はい」


 私はポケットに入れておいた乗船券というか、お姫様からもらった招待状を船員さんに渡す。すると私の招待状を受け取った船員さんが、ちょっと驚いたような顔をする。


「これは大変失礼いたしました。さくら様、お話は王女様から聞いております。直ちにお部屋へご案内いたします。お荷物もお預かりしますね」

「よろしくお願いします」


 ゼニアさん達も個別に別の船員さんに乗船券を見せている。残念だけど、ゼニアさん達とはお部屋の位置が全然違うみたいなんだよね。


 すると、私がゼニアさん達のことを気にしているのに気付いた、私の対応をしてくれていた船員さんが、みんなに声をかけてくれる。


「皆様はさくら様の従者でしょうか?」

「いいえ、私はただのお友達よ」

「我々はさくら様の護衛になります。ロジャー将軍からの辞令がこちらです。ですが部屋等の配慮は不要です。さくら様の泊まる部屋でしたら、護衛など不要でしょうから」


 ジェームズさんがそう言いながらも、ロジャー将軍の辞令の書かれた紙を船員さんに見せる。


「こちらこそご配慮くださりありがとうございます。ですがご安心ください。幸いさくら様のお部屋には護衛の方の為の前室もございますし、お部屋はそもそも2人部屋になりますので、皆様をご案内することが可能です。どうぞこちらにお越し下さい」


 そう言うと船員さんは私達全員同じ方向へ案内してくれる。これ、きっと私が泊まる予定のお部屋の方に案内してくれてるんだよね? でもいいのかな? ジェームズさん達は分からないけど、ゼニアさんはお姫様や近衛兵のいる堅苦しいエリアはいやよって言っていたんだよね。


 私はちらっとゼニアさんを見る。するとゼニアさんは、仕方ないわねって仕草で答えてくれた。この船員さん達も国に仕える人達だもんね、好意を無下には断れないよね。ジェームズさん達も同じ考えだったようで、私達は船員さんの好意をそのまま受け入れて、みんなで私の部屋へと向かうことにした。


 船員さんの一人を先頭に歩いていると、すぐに私の目の前に登り階段という天敵が現れる。エレベーターかエスカレーターが欲しいって思ったけど、今は船員さんが荷物を持ってくれているので、さっきまでは天敵だった階段も、今ではただの雑魚敵だ。


 ふっふっふ、登り階段め、お前ごときが海産物の美味しい島に行くという、我の崇高な目的の邪魔を出来ると思うなよ!


 私は心の中で階段に勝利宣言をしてたけど、私のキャリーバッグを預かって、いままでがらがらと引いていた船員さんは、キャリーバッグを持ち上げようとして、え? この荷物こんなに重いの? って顔をしてる。私が持てるくらいだから、きっと船員さんも持てると思うけど、そのキャリーバッグ、異様に重いもんね。もし腰とかにダメージを受けるようなら、後でポーションをこっそり渡さないとだね。


 そして案内されるままに階段を登っていくと、そこには凄い豪華なエリアが広がっていた。


「凄い内装ですね。こんなに豪華なところ、私初めてです」

「本当ね。船の中とは思えないわ」


 ロジャー将軍のお城も、私のお部屋とかはすごいお部屋って思ってたんだけど、流石は王家所有の船だね。この豪華さは別格だ。ただの廊下とかがこんなに豪華だなんて、お部屋はどんなことになってるんだろう?


「ありがとうございます。お部屋もご期待に応えることが出来るものと自負しておりますので、楽しみにしていてください」

「はい!」


 ただ、内装が豪華で凄いのは嬉しいんだけど、警備のために、あちこちにいる近衛兵さん達の視線が少し気になっちゃう。


 そこまであからさまに不躾な視線って訳じゃ無いんだけど、なんでこんなところにハンターの小娘とロジャー将軍の兵隊がいるんだ? って感じで、さっきからちらちら見られてる気がするんだよね。そのせいで、ちょっと居心地悪いかも。そりゃあゼニアさんと違って、ハンターの服装の私や、警備部隊の服装のジェームズさん達は、この豪華さに似合う服装というわけじゃないけどさ。


 とは言えゼニアさん一人なら目立たない、というわけじゃないと思う。なにせ今のゼニアさんの恰好は、ゼニアさん本人の華やかさに負けないくらいの凄い奇麗なドレスを着てるからね。きっとゼニアさん一人でも、美しいお嬢様がいるっていう別の意味で視線を集めたと思う。


 お部屋の中にまで近衛兵さん達はいないだろうから、ここは早いところお部屋に逃げ込みたい。そんなことを考えていると、私の願いがかなったのか、割とすぐにお部屋に到着した。


「さくら様のお部屋はこちらになります。どうぞごゆるりとお過ごしください。お食事の時間を始めとしたスケジュールや、注意事項などは、護衛の方にお伝えしておきますね」

「はい。ご丁寧にありがとうございます」

「いえいえ、では失礼いたします」


 お部屋の中は、やっぱりすっごく豪華だ! 豪華なのは嬉しいし、ロジャー将軍のお城で豪華なお部屋にも慣れてきたと自負していた私だけど、ここまで豪華なお部屋だと、完全に気後れしちゃうね。寝てる時にシーツによだれとか付けちゃたらどうしよう・・・・・・。


「ふわ~、凄い豪華なお部屋ですね。ちょっと豪華すぎて、落ち着かないかもです」

「あら、気楽に過ごせばいいのよ。でも、本当に凄いわね。私もすべての物を知っているわけじゃないけど、見たところすべての調度品が国内で入手可能な最高級のもののようね。とりあえずさくらさん、ウエルカムドリンクがあるようだから、いただきましょうか」

「はい」


 ソファーに座ると、ゼニアさんがジュースを入れてくれたけど、うう~ん、どうしよう。こぼしちゃわないかとかが心配で、落ち着いていられない!




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