第102話 鬼が島へ行こう
非常食とか、酔い止めの薬とか、旅行用のカバンとか、鬼が島へ行く準備をいろいろとしていると、ついに鬼が島へと向かう日になった。
私達の乗る予定のお姫様の船は、お城の近くの港に停泊中だから、今日は港の入口でゼニアさんと待ち合わせをしている。
今日の私の恰好は、小ぶりなキャリーバッグと、同じく小ぶりなリュックサック。一見するとデザイン優先で荷物があんまり入らないように見えるけど、そこは両方とも猫魔法で内部空間を拡張してあるので、見た目以上にたくさん物が入るのです。
ただ、魔法のおかげで体積は減らせても、重量を減らせないのが、なかなかに辛いところなんだよね。日本にいた時は、重さ何て気にせずに詰めれるだけ詰め込んじゃえって、旅行の準備をしてた気がするけど、猫魔法で空間拡張をしたカバンでそれをやると、重くて動かなくなる。というか動けなかった。
厳密にはキャリーバッグは車輪で動くし、路面が悪くてもいいように大きな車輪を選んだから、結構な重さでも引っ張ることは出来たんだけど、階段という難所を突破できなかった。なので持ち物を厳選しなおして、辛うじて階段を突破できる重さにした。
はふう~、やっと港に到着したよ。
ヘヴィー級のキャリーバッグを引いて、なんとか港に到着した私は周辺を見回してゼニアさんを探す。すると、木陰でまったりしているゼニアさんを発見した。待ち合わせ時間に遅れてはいないけど、カバンの想定外の重さのせいで到着がぎりぎりになっちゃってたんだよね。
「ゼニアさ~ん」
「あら、さくらちゃんおはよう」
「おはようございます! お待たせしました」
「ふふふ、まだ待ち合わせ時間の前よ。それじゃあ行きましょうか」
「はい!」
私達は船へと近づいていく。遠くから見ても存在感のある船だったんだけど、近くで見るとその大きさがよりよくわかる。
「はあ~、大きい船~」
「流石は王家保有の大型魔道船ね。私もこのサイズの船に乗るのは久しぶりよ」
お姫様の船は、とんでもなく大きかった。私が見たことのある船で例えるのなら、日本のフェリーくらいの大きさかな? フェリーにだっていろいろ大きさがあるでしょって思われるかもしれないけど、船に詳しくないのでそのへんはよくわかんない。
私とゼニアさんがお姫様の船を見上げていると、そこにロジャー将軍とあの男ことバーナード隊長達が現れた。
「どうださくら、この船はでけえだろ?」
「はい。あまりにも大きくてびっくりしました!」
「だが、驚くのはまだまだ早いぜ。こいつは分類としては輸送船なんだが、積載量だけが取り柄の船じゃねんだよ。何せ妖精の国に行くことすら出来る船だからな。船速も速けりゃ、最低限自衛の出来る武装まで持ってる。おまけに内装は王家所属ってだけあって豪華だぜ。俺も初めて乗った時は感動したもんだぜ」
「おお~、すごそうです!」
それは本当に凄いよね。船速が速いって、どのくらい速いんだろう?
「そういや、ゼニアもいるが、お前さんも鬼が島へ行くのか?」
「ええ、さくらさんと一緒に行くわ。ハンターギルドとしても、鬼が島へ戦力を集中させたいらしいからね」
「そうか、まあお前ならどこへ行っても活躍できるだろ」
「ふふふ、ありがとう」
「将軍」
私とゼニアさん、ロジャー将軍が仲良く話していると、あの男ことバーナード隊長が割って入ってくる。
「おっと、そうだったな。本題があるんだった。まだ出港まで時間あるし、今時間あるよな?」
「はい」
「私も聞いていいことかしら?」
「ああ、さくらと一緒に行動するならむしろ聞いてくれ。バーナード」
「はい。今回さくら様とゼニアさんが鬼が島へと向かうということですが、現在の鬼が島は、ダンジョンが危険な状態になっているだけではなく、街も各所からの応援の軍や、ハンター、それに傭兵達が溢れていて、何かとトラブルの多い環境になっているそうです。そこで、護衛を兼ねてこの者たちを同行させていただけないでしょうか?」
バーナード隊長のセリフに合わせて、5人の兵隊さんが前に出てくる。その5人の兵隊さん達は、私もよく知ってる兵隊さん達だ。
「ジェームズさん達ですか? ジェームズさん達なら知らない仲じゃないですし、護衛していただけるのならありがたいのですが、護衛が必要なのですか?」
「こういってはなんですが、さくら様は子供に見えますし、同行者がゼニアさんでは、トラブル避けというよりも、より強くトラブルを引き寄せる結果になるでしょう。その点、ロジャー将軍の正規兵であるこいつらがいれば、トラブルに巻き込まれにくくなると同時に、何かトラブルに巻き込まれても、対処できます」
私としては構わないんだけど、ゼニアさんがどう思ってるんだろう? ジェームズさん達に思うところは無くても、ジェームズさん達の上司は、私もゼニアさんの嫌っているあの男だ。そう思ってゼニアさんを見ると、首を縦に振ってくれた。これは、おっけいってことだね。
「ジェームズさん達がご迷惑でないのなら、私達こそよろしくお願いします」
「「「「「っしゃあ!」」」」」
すると、突然ジェームズさん達が過剰なまでに喜びだした。ええ? な、なんで? あ、もしかしてゼニアさんっていう美人と旅が出来るのが嬉しいとかかな?
「ああ、何かおかしなことを考えていそうなので、彼らが喜んでいる理由を説明させていただきます。こういう街の外での活動は、本来は外回りの部隊の仕事で、警備部隊の仕事ではないのです。ですので、警備部隊は今回の鬼が島への遠征に参加しない予定だったのです。ですが、警備部隊の中からも、対モンスター戦の経験を積むために行きたいと志願する兵がおりまして。普段なら絶対に許可しないのですが、そんな時にさくら様が鬼が島へと向かうと聞き、その護衛でなら、となったというわけです。さくら様も、見知らぬ兵よりも見知った警備隊の兵の方がいいでしょう?」
な~んだ、ジェームズさん達の目的はゼニアさんじゃなくて、ダンジョンのモンスターでの武者修行なのか。
「お前達、さくら様のことは知っていても、お前達のことだ、ちゃんとした自己紹介などしたことないだろう? 今しなさい」
「「「「「はっ!」」」」」
あの男ことバーナード隊長の一言でジェームズさん達が整列する。
「今回さくら様の護衛部隊の隊長を任されましたジェームズです。戦い方は機動力を重視した剣士で、斥候も出来ます。よろしくお願いします」
「副隊長のアレック、盾役の重戦士だ。よろしく頼む・・・・・・」
「槍使いのジャックだ。二人ともよろしく!」
「弓使い兼斥候のジョーだ。よろしくな!」
「ヒーラーのロビーです。よろしくお願いします」
よし、ここは私もみんなと同じように挨拶しよっと。
「剣士のさくらです。ハンターランクは4です! よろしくお願いします!」
すると、みんながちょっとおかしな顔をする。ふっふっふ、まさか私がハンターランク4の剣士とは思わなかったみたいだね! ハンターランク4って、俺らと同格か? って驚いてる。
「ゼニアよ。得意な戦い方は一般にレンジャーと呼ばれている戦い方ね。ハンターランクは6よ。よろしくお願いしますわ」
ゼニアさんも私に続いてあいさつする。ゼニアさんもノリがいいね! すると、ジェームズさん達は、ちょっと顔を赤らめていた。うんうん、ゼニアさん美人だもんね。
「それじゃ、俺達は式典の準備があるから行くぜ! お前らも怪我しないように気を付けて行って来いよ!」
「はい!」
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