第101話 猫として、人として
その後も、受付さんの説明は続いた。途中から細かな注意事項とかをこれでもかって言われ始めた時は、もうやめて~って思ったんだけど。
「申し訳ありませんが我慢してください。さくらさんは間違いなくトラブルメーカーです。後で聞いていなかったなどと言い訳をされないように、そういう方にはすべてきちんと説明するというのが、当ギルドのルールなのです。実技試験の試験官がこうして立ち会っているのも、私が間違いなく説明したことの証人になるためとお思いください」
だって。酷くない? 私はトラブルメーカーなんかじゃないのに!
でも、我慢のかいあって、ついに、フージ王国のハンターギルドのタグをゲットできました!
そして今はハンターギルド内の食堂で、ゼニアさんとまったりおやつタイム中。
「ハンターギルドには始めてきましたが、ここのデザート、美味しいですね」
「ええ。普通の料理は味が濃くて量の多い、ハンター好みの料理が多いのだけど、ここの料理人は本来、こういう繊細なデザートを作る方が好きらしいのよ」
う~ん、本当に美味しい。こんなにハンターギルドのデザートのレベルが高いのなら、怖がってないでもっと前から利用すればよかった。
ちなみにこの食堂なんだけど、ハンターに対する福利厚生の一つということで、どこのハンターギルドにも基本的にはあるものなんだって。しかも、ハンターが夜遅くに帰ってくることをも想定して、休みなくやってるみたい。ただ、流石に深夜なんかだと、ちゃんとした料理が出てくることはなくて、作り置きの干し肉とか、そういうものになるみたいだけどね。
「このタグって、妖精の国のギルドのタグとあんまり変わらないんですね」
私の目の前には、先ほどもらったばかりの、星が4つ付いているハンターギルドのタグがある。もちろんこれも2個1組になっている。受付さんの説明によると、仲間が死んだ時に、一個は遺体につけたままにして、もう一個を死んだことの報告のために持って帰ってくるんだって。ハンターの死亡率は決して高いわけじゃないらしいんだけど、そういう話を聞くと、ちょっと腰が引けちゃうね。
「そうね、軍で使われている認識票も同じような形のものだったと思うから、同じ役割のものは、似た形に落ち着くのかもしれないわね」
「そだ、ゼニアさん。鬼が島に行く件なのですが、本当に一緒に行ってくれるんですか?」
「ええ、もちろんよ。さっきも言ったけど、私も丁度行こうと考えていたから」
「ありがとうございます! それじゃあ、お姫様に同行者が増えてもいいか聞いてきますね」
「それは大丈夫よ。ほら、あそこを見て」
私がゼニアさんの指さす壁をみると、そこにはお姫様の乗る船に一緒に乗って、鬼が島へ行くハンターを募集する張り紙があった。
「え? もしかして、ハンターさん達も一緒の船で鬼が島へ向かえるんですか?」
「ええ、そうよ。王女様の船はかなりの大型船らしくてね。王女様達に加えて、ロジャー将軍の遠征軍や物資なんかを積み込んでも、まだ余裕があるそうなのよ。だから、そのスペースにハンターを乗せてくださるそうよ。私としても船は大きい方が乗り心地が良くて酔いにくいから助かるわ」
船酔いのことは考えてなかった! 私、乗り物酔いは結構しちゃうほうなんだよね。でも、船は大きければ大きいほど酔いにくいって聞いたことがあるし、ゼニアさんの話だとお姫様の船はかなりの大きさみたいだから、そこまで警戒しなくても大丈夫かな?
でも、やっぱり念のために酔い止めのポーションみたいなのを作っておこう。うん、それがいいね!
「ゼニアさん。念のために酔い止めの薬を作ろうと思いますが、いりますか?」
「私は大丈夫よ。昔は船酔いをすることもあったけど、最近は大きな船では酔わなくなったわ」
「いいな~、羨ましいです。酔い止めの薬は多めに作る予定ですので、もし必要になったら言ってくださいね」
「ええ、ありがとう。気持ち悪くなりそうなら、相談するわね」
「はい!」
その後もゼニアさんといろいろおしゃべりをしてたんだけど、ハンターギルドが混雑する時間になっちゃいそうだったので、私達はギルドを後にした。
ゼニアさんと別れた私は、妖精の国のギルドに戻る。今日の報告をガーベラさんにしないとだからね!
ぽふん!
『ガーベラさん、これ見てください。無事この街のハンターギルドに登録してきました!』
「あら、さくらちゃんおめでとう。最初からランク4なんて、凄いわね」
『ありがとうございます!』
「そうそう、実はね、さくらちゃんの妖精の国のハンターとしてのランクも、上がることになったの。さくらちゃんは星何個まで上げたいかしら?」
『えっと、それって選ぶことが出来るんですか?』
「ええ、さくらちゃんの好きなランクでいいわよ。本当はもっと早くにランクを上げてあげたかったんだけど、妖精の国の本国にあるギルド本部の許可をもらっていたら遅くなってしまったの。ごめんなさいね」
『いえ、妖精の国の本国って、海を越えた別の大陸にあるんですよね? なら、時間が掛かるのはしょうがないと思います』
でも、ランクを好きにあげていいんだ~。そんなこと言われても迷っちゃうね。う~ん、ここはやっぱり一人前に見てほしいから、星4がいいかな? 確か、妖精の国のハンターランクも、星4から一人前に見られるって、前にガーベラさんが言ってたもんね。
『決めました。星4個でお願いします!』
「あら? たったの4個でいいの? アオイやペルちゃんと同じ星6個にも出来るし、最高位の8個にすることだって可能なのよ?」
『アオイやペルさんとお揃いというのは魅力的ですが、前にガーベラさんが星4個が一人前の証って、言ってた気がするので、一人前になれれば大丈夫です!』
「ふふふ、わかったわ。でも、もし星を上げたくなったらいつでも言ってね。すぐに用意できると思うから。それから、新しい星4のタグは、2~3日中にも用意できるから、近いうちに貰いに来てね」
『はい、わかりました!』
ついに妖精の国のギルドでも、人間の国のギルドでも、ランク4になれたね! これで猫としても、人間としても、名実ともに一人前の大人だね!
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