第100話 ハンターギルドの説明
私とゼニアさんは、受付さんと試験官さんに案内されるままに、ギルマスさんのお部屋とは別の個室へと移動する。
「では、登録の続きをさせていただきます。実技試験の結果ですが、合格とさせていただきます。あの威力の毒煙玉の作成が可能なら、モンスター相手でも十分戦えるという判断です。ですが、今後広範囲無差別攻撃をする際は、必ず周囲の人に許可を取るようにしてください」
「はい・・・・・・」
「次に、当ギルドの説明をさせていただきます。当ギルドはハンターギルドの名の通り、モンスターを狩ることを生業としているハンター達のために、フージ王国が経営している組織となります。そして、当ギルドの役割は主に4つございます。ハンターの管理、モンスター情報の管理、ハンターの教育、討伐報酬の支払いの4つです。では、それぞれの機能について、簡単にご説明させていただきます。一つ目のハンターの管理は、ハンターランクに関することですとか、各ハンターの得意分野の把握になります」
これは最初の書類で私が書かなかった部分のことだよね。私の場合どう記録されるんだろう? ハロルドスレイヤーを持っていたから、剣士になるのかな? でも試験ではハロルドスレイヤーの出番がなかったし、毒煙玉を使ったから、毒使い? う~ん、でもそもそも薬師だってことはバレてるんだよね。なら、毒もポーションもいけちゃう戦える薬師とかかな? ちょっと聞いてみたい気もするね。
「二つ目はモンスター情報の管理です。モンスターの生息域を調べたり、モンスターの強さを調べランクを付けたり、といったことになります。先のハンターの情報と合わせて、ハンター達が安全に狩れる狩場をご紹介することなどに利用しています」
なるほど、ハンターの強さに合わせて狩場を紹介してもらえるのなら、安全に狩りが出来るね。いままでは猫ボディで、北の崖の上のモンスターばっか狩ってたけど、これからは人間ボディで安全に狩れるモンスターを教えてもらうのもいいかもしれないね。あと、海産物の美味しい島に言った時に、どうやって美味しい海のモンスターの居場所を探そうかと思ってたけど、ハンターギルドで聞けば良かったんだね!
「三つ目はハンターの育成です。こちらはそのままですね。戦闘訓練から野営の仕方まで、講義内容はいろいろとありますので、もしよろしければご利用ください」
戦闘訓練は受けてみたいかもしれない。でも、野営の訓練はいらないよね。何せ私はこの世界に来てしばらくの間、本当に何にもない状態でのサバイバルをしていた、野営のプロだからね!
「四つ目は討伐報酬の支払いとモンスターの買取です。討伐報酬はその名の通り、モンスターごとに国が定めている討伐の報酬をお支払いする制度です。そして、これは当ギルドだけの独占事業というわけではないのですが、モンスターの買取もしております。もし、独自の販路をお持ちでない場合は、当ギルドで買い取らせていただきます」
これは妖精の国のハンターギルドと一緒だよね。ただ、人間ボディだと、猫ボディの時みたいにサイコキネシスで何でも持って動けるっていうわけじゃないから、たくさん持ってこれるかは微妙だね。
「ものすごく簡潔に言ってしまえば、モンスターを狩ったらギルドに持ってきてください。お金と交換できますよ。どの狩場でどのモンスターを狩ればいいかわからない時は、ギルドで相談してくださいね。ということですね」
「はい!」
「では次に、ハンターランクの説明をさせていただきます。ギルドのランクは1~8までの8段階があります。そしてさくらさんは、ランク4からのスタートになります」
「あら、凄いわね」
ゼニアさんはすごいって言ってくれたけど、ランク4がどういったものか、よくわからない。
「凄いんですか?」
「そうですね。これは公式のものではありませんが、世間ではランク1は見習い、ランク2で半人前、ランク3になってようやく1人前という評価です。ただ、ランク3ではぎりぎり一人前という評価をされることが多いのも事実です。その点ランク4になると、誰の目から見ても1人前、という評価をされることが多いです」
「それじゃあ私は、ちゃんとした1人前ってことなんですね!」
「はい、そうなります。ちなみにランク4になられた理由なのですが、ものすごく簡単にいってしまうと、実力と身分証明書によるものです」
「実力はわかるのですが、身分証明書も関係してくるんですか?」
「はい。ギルドのランクというのは、ハンターの強さの指標であるだけでなく、ある種の信頼の証でもあるのです。ですので、いくら強くとも、身元の分からない者を最初から厚遇することはないのです。とはいえ、ランクアップ制度は公正なものですので、実績を上げていただければ、どんな方でも上のランクに行くことが可能です」
「そうなんですね。ちなみにゼニアさんのランクはいくつになるのですか?」
「私はランク6よ」
「ゼニアさん凄いです!」
「ゼニアさんはハンター全体で見てもかなりの実力者ですよ。当ギルドでも、ソロハンターでランク6の方は数えるほどしかおりません」
流石ゼニアさん、本当に凄いよね!
「ありがとう。でも、ハンターランクを上げても、大したメリットはないのよ?」
「そうなんですか?」
「それに関しても私から説明させていただきます。ハンターランクを上げるメリットはいくつかあるのですが、まず、さまざまな場所で優遇措置を受けることが可能になることです。例えば各ギルドでは、受付がランクごとに分かれていることが多いのですが、当然ランクの高い受付ほど優先的に対応してもらえます」
「でも、さくらさんにはあまり関係ないのよね」
「そうなんですか?」
「え、ええ。さくらさんのように、高ランクのポーションを作れるといった別の能力がありますと、ハンターランクにかかわらず、優遇対象になります。ただ、これはギルドが不公平なことをしているという意味ではないことをご理解ください」
「えっと、すみません。よくわからないのですが」
「例えばさくらさんの場合ですと、薬師として薬師ギルドに登録していた場合、間違いなくランク7や8の薬師として扱われます。そして、受付の優先度などは、他ギルドの高ランク者に対しても、配慮するようになっているのです」
「そう言う事なんですね」
「ご理解いただけたようで何よりです。では話を戻しますが、ランクを上げる大きな利点として、その他に政治的権限があります。この国では、どのギルドでもランク3から、さまざまな政治的な投票権を得ることが出来ます。そしてその一票の強さは、ランクが上がるにつれて増していきます」
この国の政治制度はよくわかんないんだけど、ランク4の私なら投票が出来ちゃうんだね。でも、私この国の国民じゃないのにいいのかな?
「さくらさんの人間の姿の時の身分証明書の件で、さくらさんが薬師ギルドではなく、ハンターギルドを紹介された理由も、恐らくその政治的権限のせいだと思うわ。もし薬師ギルドでランク8なんかになってしまったら、その政治的権限はロジャー将軍に匹敵するほど巨大なものになるの。そうなるとさくらさんの望む望まないかかわらず、面倒ごとが押し寄せてくるわ」
「そ、それは嫌かもしれません。ただ、私は本質的には妖精の国の猫です。ランク4とはいえ、政治的権限を持っていいのですか?」
「その辺は非常にデリケートな問題になりますのでかなり複雑になります。また、さくらさんの場合非常に微妙な立場になりますので、私では確実なことは言えません。その上で説明させていただきますが、本来であれば、妖精の国が友好国ということもあり、さくらさんの投票権は、国家の方針への投票権はないが、街やギルド方針への投票権くらいはある。とお考えいただければ良かったのですが、さくらさんの場合、当ギルドへ登録したのは、妖精の国の猫のさくらさん、ではなく、ロジャー将軍の庇護下にいる人間のさくらさんになるため、恐らくこの国の国民と同じ権利を持っていると考えていいと思います。ただ、私では確実なことは言えないため、その時になったら、選挙管理の人間にお尋ねください」
それは確かによくわかんない立場だよね。政治に興味がないわけじゃないけど、この国のことも、この世界のこともまだまだ知らないことだらけだもんね、もうちょっと理解できるようになるまでは、投票はしないでもいいかな。
「わかりました。その時になったら聞いてみます」
「よろしくお願いします。では次の説明を致します」
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