第87話 王女様からの依頼をやっちゃおう

 お姫様からのポーションとレプリカハロルドスレイヤー作成の依頼を受けた翌日から、私は頑張ってポーションとレプリカハロルドスレイヤーを作っていた。


 依頼は私個人にというよりも、妖精の国のギルドへの依頼だったので、森にある青い果実を採ることや、それをすりつぶす作業はアオイやペルさん他、にゃんこハンターさん達が手伝ってくれた。なので私は、にゃんこボディで、ただひたすらに魔法をかけるという、ザ・作業プレイに没頭していた。


 ポーション作りは、中ランクまでならガーベラさんも出来るということで、二人で頑張ってたくさん作っている。


「ガーベラさん、これは出来たらどこに納品するんですか? ロジャー将軍に渡せばいいんでしょうか?」


 すでに結構な量の中ランクのポーションが出来上がってたんだけど、ふと、こんなにたくさんどこにしまうんだろうって思ってガーベラさんに話しかける。


「いいえ、バーバラ姫のところよ」

「ということは、王都まで誰かが持って行くということですか?」

「そんな面倒な依頼は受けないわ。バーバラ姫は1月ほどこの街にいる予定なのよ。なので、納品先はバーバラ姫の泊まる王城ね。とはいっても、出来た分から兵隊さん達が取りに来てくれる手筈になっているから、私達は連絡だけして、取りに来てくれるのを待つだけだけどね」

「そうだったんですね」


 それなら楽ちんでよかった。猫ボディのサイコキネシスの魔法でなら大丈夫だと思うけど、人間としての私だと、お城とはいえ、納品するのに何往復しないといけないのかわからないくらいの量が出来上がってるからね。


「ええ。そういえば、昨日の会議の内容を、さくらちゃんには話してなかったわよね?」

「私が聞いてもいいんですか?」

「もちろんよ。機密とかそういう内容じゃないからね。昨日の話し合いではね、ミノタウロス戦への協力の感謝がメインだったんだけど、それ以外に、次の協力要請があったの」

「次、ですか?」

「ええ、なんでもこの国にある一番大きなダンジョンで、モンスターの大量出現の兆候が見られるって言う話だったの。そこで、ポーションの備蓄と、兵士の練度を上昇させたいから、私達に協力してほしいっていうことを話されたの」

「そうだったんですね」


 この世界にもダンジョンと呼ばれるものが一応あるみたいなの。ただ、ダンジョンの管理者がいたり、ダンジョンの中にお宝が眠っていたりするような、ゲームチックなダンジョンではないみたいなの。


 なんでも、地下に自然魔力が溜まる魔力溜まりっていうのが出来て、それが地上に噴出して生まれた洞窟がダンジョンって呼ばれてるんだって。だから、基本的には、ただ自然の魔力の高い地下洞窟みたいなんだよね。普通の地下洞窟との違いは、自然魔力の濃い場所には強いモンスターが生まれやすいみたいだから、ダンジョンって言う場所は、強いモンスターがいっぱいいる地下洞窟っていうだけの場所みたい。


 お宝が出ないってわかっちゃうと、ちょっとこう、ロマンを感じないよね。ちなみにこの知識も本で読んだだけだから、もしかしたらまだまだ知られざる秘密があるかもしれないけどね。


「バーバラ姫のほしがっている物のうち、高ランクの汎用ポーションと訓練用の木剣は、どちらもさくらちゃんの作品だから、本人が乗り気か直接確認してねってバーバラ姫に言ったんだけど、大丈夫だったかしら?」


 それで昨日バーバラ姫がわざわざ私に確認に来てくれたんだね。


「はい、大丈夫です! みんなが面倒なことをやってくれてるので、大した労力じゃないですし」

「ふふふ、ありがとう」


 じゃあ、中ランクポーションはもうたくさん出来てるからここで一旦中断して、汎用型の高ランクポーションでも作ろうかな。材料の問題があるから、高ランクポーションはそんなにいっぱい作れないんだけど、そこはお姫様もわかってくれてるみたいで、今回は10本あれば十分みたい。


 そうそう、ポーションや回復魔法には、汎用型、特効型、特化型と大きく分けて3つの種類があるんだって。


 まず汎用型のポーションっていうのは、誰が使っても同じように回復するポーションのことなの。猫が使ってもいいし、人間が使ってもいいし、妖精が使ってもいいしっていう感じね。ただこのポーション、製作難易度が結構高いんだって。私はイージーにゃんこライフな魔法があるからあっさり作ってたけど、よく考えるとたしかに凄いよね。これがもし地球だったら、人間にも猫にも効く薬ってことだもんね。最も、この世界のポーションや回復魔法は、物理的に治しているんじゃなくて、魔力的な作用で治しているらしいから、なんにでも効くみたいな物理法則を無視した治療ができるんだって。


 次に特効型ポーションっていうのは、特定の種族に特に良く効くけど、他種族にもそれなりに効くポーションのことみたい。例えば人間、エルフ、ドワーフ、それに一部の獣人や魔族なんかは、大きさも生き物としての構造も似てるから、体を構成する魔力も、ある程度似てるんだって。だから、人間用の特効型ポーションなら、エルフやドワーフなんかにも、少し効き目が落ちるけど、そのまま使えるんだって。流石に妖精族や私達猫だと、大きさとか違う部分が大きいみたいで効き目が凄い落ちるらしいけどね。


 最後に、特化型ポーション。これは特定の種族にだけ効果のあるポーションみたい。一見不便そうなんだけど、これが一番製作難易度が低いんだって。だから、この国で普通に流通しているポーションは、人間特化型のポーションが多いんだって。


 ただ、いくら特化型の製作難易度が低いとはいっても、あくまでも同ランクの中でならってことみたいだから、特化型の高ランクポーションを作るより、汎用型の中ランクポーションのほうが製作の難易度は低いみたい。


 私以外のメンバーだと、ガーベラさんが妖精用の特化型ポーションが作れるんだって。だから汎用型も中ランクまでなら作れるみたい。あと、ペルさんも確か猫用の高ランク特化回復魔法が使えるって言ってたかな? でも、ペルさんは汎用タイプの魔法が苦手なんだって。


 なので、本来なら私達が汎用タイプのポーションを作るより、この国の人が特化型ポーションを作れれば、そのほうがなにかと便利だし楽なはずなんだ。


 じゃあ人間ボディで人間特化型のポーションを作ればいいんじゃないのって? それはダメです! なにせ魔法や、こういった魔法薬に関しては、そんな理屈が関係ないほどに魔法が得意な種族のほうが向いているんだそうなんですよ。


 この世界、体の大きさに反比例するように魔力が高くなるみたいなの。だから、体の小さい猫や妖精は、魔法が得意なの。なんでも、生き物には魂の容量がうんたらかんたらで、それを大きな体に使っちゃうと、魔力に回す分が無くなって魔力が弱くなり、大きな魔力に魂を使っちゃうと、体が小さくなるんだって。一応本にそう書いてあったんだけど、難しすぎて細かいことはよくわかんなかったんだよね。


 ただ、はっきり言えるのは、体重ベースでいったら、私の人間ボディは、猫ボディより軽く10倍は重いからね。逆にいっちゃうと、魔力は10分の1以下でもおかしくないのです。だから、イージーにゃんこライフボディ関係なく、人間ボディでポーションを作るのは無謀なのですよ!


 そう、決して魔法の授業に出続けているにも関わらず、全然魔法の腕が上がっていないからとか、そういう理由でやらないわけじゃないのです!




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