第81話 煙もくもくバタンキュー大作戦

「これより、第2回対蚊対G殲滅部隊、作戦会議を行う」


 私は出来る限りかっこよく、そしてしぶい声で会議の開催を宣言する。


 ボヌールさんと対蚊用、対G用の毒煙玉を作ってから数日、私の毒煙玉も十分な数が揃ったし、デスモンド副隊長たちの水溜まりの対策も終わったということで、本日第2回対蚊対G殲滅部隊の会議の日となった。あれ? でも、何でか人数が少ないね。


「今日はデスモンド副隊長とバーナード隊員、それにハロルド隊員がいないようですが、何かあったのでしょうか?」


 今日はいつものメンバーから、デスモンド副隊長と、バーナード隊員、ハロルド隊員がいなかった。お城の関係者だけ3人いないというのは、なにか急用でもあったのかもしれないね。


 すると、ユッカさんが手を上げて答えてくれる。


「あ、それなら僕が聞いてるよ。何でも、この間のミノタウロスとの防衛戦の慰問に、王都からお客さんが来るんだって。それで、その対応にお城はてんてこ舞いみたい。本当はさくらさんに直接言いたかったらしいんだけど、最近さくらさん森に行ってたでしょ? だから、今朝僕のところに伝言がきてたよ」


 最初に採取した分だけでは、この街分の大量の毒煙玉を作るには足りなかったから、ここ数日ずっと桜の木の拠点に引きこもってたんだよね。そっか、3人は忙しいのか~。


「そうなんですね。対蚊対G殲滅部隊はこのまま活動してもいいのかな?」

「大丈夫じゃない? 3人が来れないとは言われたけど、この会議を中止してほしいとか、延期してほしいとかは言われなかったし」


 なるほど、本当は人手が欲しいところだったけど、しょうがないね。お客さんがくるなら、その前に蚊もGも退治しちゃったほうがいいと思うし、この人数で決行だね!


「わかりました。では、今いるメンバーで頑張りましょう! それでは、本日の作戦を発表いたします! 作戦名は、煙もくもくバタンキュー大作戦です!」


 ぱちぱちぱちぱち~!


 みんなが拍手してくれる。今日はお城勤めの3人がいないからか、みんなの雰囲気がちょっと緩くてノリがいいね!


「作戦内容は、この特製対蚊用毒煙玉と、特製対G用毒煙玉を用いて、この街とその周辺の蚊とGを殲滅、つまりバタンキューさせようという作戦です。みんなにはこの2種類の毒煙玉を持って、街中にこの2種類の毒煙をばら撒いてきてほしいのです」

「へ~、なんか楽しそうだな!」

「うん、面白そうだね」

「ええ、昨日までの水溜まりが出来そうな場所探しよりは面白そうよね」


 学生3人組からの評判はよさげだね! 確かに水溜まりが出来そうな場所をめぐって対策するより、こっちのほうが派手だもんね!


「それで、みんなで同じ場所を回ってもしょうがないので、今から撒く場所を決めたいと思います。撒く場所はお城、街、街の外になりますが、希望の場所はありますか?」

「はい」

「はい、ジョン君」

「じゃあ俺達3人は街の中に撒くよ。家族や友達に声掛ければ人数揃えるのも簡単だしよ。リチャードもジルも構わないだろ?」

「うん、もちろんいいよ」

「ええ、私もジョンの作戦に乗ってあげる」

「それじゃあ、街中は3人に任せるね!」

「それなら、私はハンターギルドで協力者を募って街の外に撒いてくるわ。蚊やGを街から一掃するためといえば、付き合ってくれるハンターは多いと思うからね」

「わかりました。それでは街の外はゼニアさんお願いします」

「了解よ、隊長さん。ただ、それにあたってひとつ聞きたいのだけれど、街からどのくらいの距離まで撒けばいいかしら?」

「ん~そうですね。街にやってくるGや蚊を退治できればいいので、1km以内くらいの範囲にいっぱい撒いてください」

「わかったわ」

「僕の担当は~?」

「ユッカさんは、軍事施設に撒いてきてもらっていいでしょうか? たぶんジョン君達だと入れない可能性が高いので」

「おっけ~い。了解したよ! 空から撒いちゃえばいいってことね!」

「はい、お願いします! 最後に私ですが、私はこのお城に撒こうかと思います!」

「さくら大丈夫か? 迷子になんない?」


 私がこのお城に毒煙玉を撒くといったら、ジョン君がスーパー失礼なことを言ってくる。まったく、私が同じ失敗を何度もする女だと思うなよ。


「大丈夫です。この煙は空気よりも重たいので、お城のてっぺんで大量にもくもくさせれば、お城中に煙が充満するはずなのです」

「なるほど、城の中を歩くわけじゃないから迷子にならないってことか。でも、城のてっぺんに行くのに迷子になるなよ?」

「ならないよ!」


 だって、猫ボディになって外から行くもん。


「それでは、このバッグの中に毒煙玉が入っていますので、バッグごと持って行ってください。ちなみにですが、使い方は煙幕タイプの煙玉と一緒です。そして、対蚊用の毒煙玉は、見た目がカーキー色の毒煙玉、こちらは煙もカーキー色の煙です。それで、灰色のほうが対G用になります。煙の色が違うのでわかりやすいと思いますが、どちらもまんべんなくお願いします」


 ちなみにその色にした理由は、わかりやすいからです。対蚊用なので、KAから始まる色って思ったところ、カーキー色が思い浮かんだので対蚊用はカーキー色になりました。同様に対G用の毒煙玉は、Gから始まる色、グレイになりました。


「あれ? もしかしてこのバッグ、魔法のカバン?」

「はい、そうです。毒煙玉を入れるようについでに作ってきました!」


 なにせ街全体を煙で覆うほどの量の毒煙玉だからね。魔法のカバンにでも入れないと、体積が凄いことになっちゃうからね。幸い毒煙玉は重さは大したことないので、バッグは極端に重くはなっていないはずだ。


「すげ~、いいな~、これ貰っていい?」

「おいジョン、良いわけないだろ。魔法のカバンは高いんだぞ」

「そうよジョン、常識で考えなさい」


 ジョン君がそんなことを言い出したけど、リチャード君とジルちゃんがジョン君をたしなめる。私としては手伝ってくれたお礼に、プレゼントしても全然問題ない。ただ、このバッグって、女物のデザインなんだよね。だって、男物のバッグのデザインって私知らないんだもん。


「ふふふ、確かに可愛らしいデザインのバッグよね。私も欲しいわ」

「僕はいいかな。ちょっと大きすぎるし」


 おお~、ゼニアさんにも高評価だなんて嬉しいね! ユッカさんは妖精族だから、確かにこのバッグは大きすぎるね。


「デザインがどちらかと言えば女物だけど、手伝ってくれたお礼にあげるよ」

「まじで!? やった!」

「ええ? いいの? さくらちゃん」

「いいのですか?」

「ふふふ、ありがとう、さくらさん」

「それじゃ、作戦開始!」

「「「「「はい!」」」」」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る