第80話 完成、さくら特製毒煙玉
第1回対蚊対G殲滅部隊の会議が終わった翌日、私はさっそく桜の木の拠点にやってきていた。
桜の木の拠点のある北の崖の上は、いろんなモンスター、植物、鉱物があって、何かを作るのにはとっても便利なんだよね。
早速私は、私の考えた最強の蚊用毒煙玉を作るべく材料を探す。昔ながらの蚊取り線香って植物性の毒が使われていたらしいんだよね。パッケージにお花の絵が描いてある蚊取り線香があったから、なんでお花の絵なんだろうって調べたら、除虫菊っていう菊の花からとれる成分が、蚊を殺す毒になるんだって。
というわけで、私はイージーにゃんこライフな素晴らしい嗅覚等を駆使して菊を探す。私の拠点にしている桜の木は、日本で言うところの河津桜みたいな桜の木だから、気候的には菊も探せばあると思うんだよね。
見~っけ、流石イージーにゃんこライフボディ、あっさり見つかったね。というか、結構近くに生えてたみたいだ。うう~ん、全然印象にないや。ま、お花はご飯にならないから、しょうがないよね。しかも、この菊の花、なんか日本にあったのよりもでっかいし、茎も長い。それに、下から菊の花を見上げたこともなかったもんね。でも、でっかいってことはきっと毒の成分もいっぱいあるってことだからいいことだよね。
さて、これで毒は手に入ったわけだけど、あの蚊取り線香の煙って、何が燃えて煙になってるんだろう? まさか毒を直接燃やしてるわけじゃないんだよね?
私はパッケージを思い出そうとしてみるけど、あの特徴的な渦巻きの形と、菊の花のことしか思い出せない。ううう、成分表とかしっかり見ておけばよかった。
まって、蚊取り線香って名前なんだから、きっと燃えてるのは線香だよね。それなら話は早い、線香を作ってそこに毒を混ぜればいいんだよ!
って思ったんだけど、ダメだ。線香が何で出来てるのかも私は知らない。ううう、困ったな。毒のある菊の花は入手出来たから猫魔法で毒はきっと作れる。でも、煙がこれじゃ作れない。う~ん、う~ん。そうだ、この世界にはこの世界の蚊用の毒煙玉があるんだから、ガーベラさんに毒煙玉で燃えて煙になっているのが何か聞けば知ってるかもだよね。よし、何とかなりそうだね。
それじゃ、後はGによく効く毒を探さないとだね。ただ、G用の毒って、ホウ酸団子しか知らないんだよね。あれ、ちょっと待って、ホウ酸団子のことは知ってるけど、ホウ酸の作り方って、わからなくない? うん、わかんないね。
それに、Gに毒のエサを食べさせるなんてそんなまどろっこしい駆除方法じゃなくって、もっとこう、日本にあった部屋を煙で充満させるような、駆除するぞ~って感じの駆除方法がいいんだよね。
なんかそういうのに向いた毒ってないのかな~? 私は猫ボディだよりで、煙にしてもGによく効きそうな毒見つけて~って感じで思いっきり念じる。すると、猫ボディはあっさり目的の毒を見つけてくれる。流石イージーにゃんこライフボディ、博識だね!
私の猫ボディが見つけてくれた対G用の毒は、何かの花の根っこだった。
なんなのかさっぱりよくわかんないんだけど、猫ボディが見つけたものだからきっと大丈夫だよね。
そうして妖精の国のギルドに戻った私は、早速ガーベラさんにいろいろ相談する。
「なるほどね、話は分かったわ。つまりさくらちゃんが毒を集めてきたから、あとは煙玉にその毒を混ぜたいって言う事ね」
『はい!』
「煙玉ならギルドでも取り扱っているんだけど、どういう煙玉がいいのかしら?」
『煙玉に種類があるのですか?』
「ええ、そうよ。蚊用の煙玉みたいに弱い煙をず~っと出す商品もあれば、狼煙なんかに使えるように、そこそこの煙がそこそこの時間持続するものもあるわ」
『それなら、この街から蚊とGを排除しないといけないので、とにかくいっぱい煙の出る奴がいいです』
「わかったわ、それじゃあこれかしら。煙の持続時間はそんなに長くないんだけど、煙幕として使えるように強力な煙が出るわよ」
『じゃあ、それにします! それとこれって、魔法でもっと強化出来ますか?』
「ええ、大丈夫よ。材料が植物由来のものだから、植物関係の魔法が使えれば、煙の量をもっと増やしたり、煙の濃度を上げたり、煙が舞い上がらないように重くしたりできるわ。ただ、元の素材が強い魔力を含んだいい素材じゃないから、そこまで強力な強化は出来ないけどね」
『いえ、十分です。ありがとうございます!』
「どういたしまして」
『それじゃあ、倉庫で作ってきますね!』
「ええ、ボヌールがいると思うから、なにかあったら手伝わせていいからね」
『はい!』
そして、ボヌールさんのいる倉庫へと移動する。
「おうさくら、今日はどうしたんだ。その花はなんだ? 買取か?」
『いえ、この花から毒を抽出して、対蚊と対G用の毒煙玉を作ろうかと思ってます。倉庫の隅を借りていいですか?』
「ああ、構わねえぞ。ただ、その花、1本づつ見せてもらっていいか?」
『はい、どうぞ』
私は巨大な菊と、根っこに対G用の毒のあるよくわからない花をボヌールさんに1本づつ渡す。
「おいなんだこりゃあ、菊の方はまだいいが、こっちの毒はかなりやべえやつじゃねえか」
ふっふっふ、ボヌールさんお墨付きの毒だなんて、これはG達もいちころの素晴らしい毒が出来上がりそうだよね!
「おいさくら、とりあえず試作品が出来たら俺に見せろよ? さくらがユッカとかを巻き込んで害虫駆除をするって話は聞いてるが、こんなやべえ毒使って、害虫駆除用の毒が出来るか不安しかねえ」
『大丈夫ですよ。Gもいちころの毒をつくりますから!』
私は早速作業を開始する。まず、蚊用の菊と、G用のよくわかんない花から毒を抽出する。この作業がなかなか難しいなんてこともなく、猫魔法により一瞬で終わる。
この毒たちなんだけど、きっとそのまま使っても蚊やGに破滅をもたらせてくれるに違いない。でも、それだけじゃあまだだめだと思うんだよね。日本でだって天然の毒はつかってたし、きっとこの世界でも使ってる。にもかかわらず蚊もGも殲滅できてないんだもん。だから、私はこの2種類の毒に、さらに毒の魔法をかけて、超強力な毒にするのです。
私は過去の蚊とGにやられた様々なことを思い出す。深夜に蚊と戦闘になって、寝不足になったあの日のことや、朝起きたら我が家のにゃんこからの贈り物として、枕元に置かれていたGのせいで最悪の目覚めになったあの日のことなど、私のありったけの蚊とGへの怨念を込めて、毒魔法を放つ。
「ふ~、にゃ~!」
私の積年の怨念のこもった魔法により、2種類の毒は超強力な毒へと変貌してくれたはずだ。これで、完成だね。
『ボヌールさん、出来ました』
「ほう、どれどれ、ちょっと見せてみろ」
私は出来上がった毒をボヌールさんに見せる。するとボヌールさんは受け取ることもなく、何かの機械、魔道具かな? を近づける。
「おいさくら、あんまりこっちに寄せるな! 何だこの毒。俺の持ってる毒物探知機がメーター振り切ってるぞ。こんなので毒煙玉作ったら、人間だってあっさり死ぬぞ?」
ボヌールさんが警戒したのは対G用のほうだね。蚊よりもGのほうが防御力が高いからね。そっちの方が強力なんだよね。でも、この毒は一見物騒に見えてそんなに物騒じゃないんだよね。なにせ、人間に害を与えることは出来ないからね。
『ボヌールさん、平気ですよ。植物の毒にさらに毒魔法を混ぜましたけど、それによって特化毒になっているので』
この世界、ポーションにも汎用品と特価品があるように、毒にも汎用毒と特化毒があるみたいなんだよね。
それはある意味当然だよね。この世界では猫も人間も妖精も、知的生命体というくくりでは一緒だし、対モンスターという意味では同士ともいえる存在だけど、生物としては結構違う生き物なんだもん。だから、普通は回復魔法もポーションも、使い手、あるいは作り手と同じ種族になら効果が高いけど、他種族だと効果の落ちる特化型が多いんだって。
そして、それは毒も同じだ。蚊とGは同じ害虫ってくくりだけど、それぞれ全然違う生き物だからね。汎用型の毒で両方に効くようにも出来るけど、特化型でより凶悪な毒を作ることも出来るのです!
もう少し細かく言えば、その種族にしか効果のない完全特化型。その種族には効果的だけど、他の種族には効果の落ちる半特化型。種族問わない汎用型っていう3種類があるみたい。
あ、蚊やGにも種類がいるよねって話もあると思うし、私の猫魔法でならピンポイントでこの種類の蚊、この種類のGっていうことも出来るらしいんだけど、今回はそこまで極端な特化はさせてないの。なにせこの世界の蚊やGの種類を知らないからね。特にGなんて調べたくもないし。だから、そこは種族全体に効くようにって猫魔法に頑張ってもらいました!
「そうか? ちょっと試すぞ? そのままサイコキネシスで浮かせとけよ」
『はい』
するとボヌールさんは、何かの棒みたいなもので毒に触れる。対蚊用の毒に触っても、対G用の毒に触っても何にも起きない。
「お、何にも反応しねえな。んじゃ、今度はこれならどうだ?」
そう言って今度は別の何かで毒に触る。すると、蚊用の毒には反応しなかったのに、G用の毒にそれが触れたとたん。ちょこっと煙を出しながら消滅してしまった。
『え?』
「ほほう、こいつはすげえ。こりゃ見事じゃねえか」
『あの、ボヌールさん、いまのは?』
「ああ、最初のはなんてことないただの骨だ。ゼボンが料理した後に出たゴミだな。んで、2回目のほうは、Gの一種。といってもそっちは体長1m以上あるモンスターになるんだが、それの素材だな。いや~、それにしてもさくらの作るもんはすげえな。まさかこんな強力な毒が、ピンポイントでGにしか効かないなんてよ」
1mの大きさのGタイプのモンスターがいる? なにそれ? そんなの聞いてないよ? いくら何でもそんなのに出会ったら、ううんダメ、想像すらしたくない。ここは、そんなのに出会う前に、さくっと殲滅しなくちゃだ!
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