第77話 対蚊対G殲滅部隊

 ここはお城の一室、闇にうごめくものたちを殲滅せんとする特殊部隊の拠点だ。そのお部屋は闇にうごめくものたちを殲滅するものたちの拠点ということもあり、かなり薄暗い。毒を持って毒を制す。闇を制するには闇しかないということだ。そして、そのお部屋の中には、何人もの闇の者が集まっていた。


「さくら~、なんかくらぼったいからカーテン開けるぞ~」


 そう言ってジョン君がカーテンを開ける。


 ああ、私の作りだしたこの特殊部隊の拠点っぽい雰囲気が!


「ん? まずかったのか? それよりみんな集まったみたいだし、始めようぜ」


 私はあたりを見回す。うん、みんないるね。じゃあ、始めるとしますか!


「ではこれより、対蚊対G殲滅部隊、第1回作戦会議を行う。お互い初対面のメンバーもいると思うため、まずは自己紹介から始めたいと思う。では、まず私が手本を見せる。他の者は私の後に時計回りで続くように。ではいくぞ。私はこの対蚊対G殲滅部隊の隊長をロジャー将軍より任された薬師のさくらだ。得意な獲物はこのハロルドスレイヤーだ!」


 私はそう言ってハロルドスレイヤーを掲げる。あ、あれ? かっこよく言ったつもりなのに、なんか場の空気が悪い気がする。特にあの男の憐れんだような目がむかつく!


「こほん、時計回りですと次は私ですな。私はこの対蚊対G殲滅部隊の副隊長に任命されたデスモンドと申します。以後お見知りおきを。得意な得物は槍ですが、軍では戦闘訓練の教官をしていることもあり、一通り何でも使えます。昨年までの害虫駆除では指揮を執っていたのですが、不甲斐ないことに大きな成果を出すまでには至りませんでした。今回、こうしてさくら様を中心とする新たな部隊に副隊長として招いていただいたこと、感謝の念に堪えません」


 デスモンドさんが一礼すると、ぱちぱちぱちと拍手が起こる。


 あ、あれ? 隊長である私の自己紹介の時とは空気が違う。だって、さっきは拍手なんてなかったよね? 私の自己紹介ダメだった?


「私は職務柄ここにいるメンバーとは全員面識があると思いますが、改めて。この街の警備部隊の隊長をしているバーナードと申します。得意な武器は剣で、最近の相棒はこの剣になります。デスモンド先生同様、昨年までの害虫駆除部隊に参加しておりました。今年こそ積年の問題を解決できるのではないかと、期待に胸を膨らませております」


 最近の相棒はこの剣というセリフと共に剣を私に見せつけてくる。むぐぐ、相変わらず嫌味な男だ。でも、いいでしょう。その期待に膨らんだ胸、圧倒的戦果で爆発させてあげましょう!


「学生のジョンです。得意な武器は剣と盾です。今回は夏休みの課題の社会見学をやるために、知り合いで妹とも仲のいいさくらの仕事を見に来たのですが、何やら面白そうなことをやるって言うので参加しました。よろしくお願いします!」

「リチャードです。同じく学生です。得意な武器は斧です。ここにいる経緯はジョンと同じです。よろしくお願いします」

「ジルです。ジョンとリチャードとは同級生になります。ここに来た経緯も同じような理由になります。得意な武器は槍です。よろしくお願いします」


 ジョン君とリチャード君とは久しぶりに、ジルちゃんとは初めて会ったんだけど、なんでもジョン君達の学年は、夏休みの課題に社会見学があったんだって。それで、妹のロイスちゃんやティリーちゃんと仲のいい私のところに、社会見学に来たいって連絡を貰ったんだけど、タイミングが悪いことに、丁度ロジャー将軍にこの話をした翌日だったんだよね。


 だから一度は断ったんだけど、3人とも薬作ってるの見るより楽しそうだからむしろ参加したいっていうことになって、現在に至ります。我が隊は人手不足だったから、丁度よかったかな?


 ちなみに、ジョン君はロイスちゃんのお兄ちゃんにして、私を迷子の子供と勘違いして学校に連れて行ったおっちょこちょいさん。リチャード君はジョン君の友達にして、私調べではロイスちゃんのことが好きな男の子。最後にジルちゃんは、ティリーちゃんのお姉ちゃん。ハロルド先生が言うには、3人とも問題児らしい。


「あ~、俺も全員と知り合いだが一応。学校の教師をしているハロルドだ。本来なら夏休みの課題の社会見学には教師はついて行かないんだが、問題児4人が集まるってことで急遽派遣された。よろしく頼む」

「あれ? 4人? もしかして誰か遅刻してるの?」


 ここにいる学生はジョン君、リチャード君、ジルさんの3人だ。私が聞いていない4人目がいるのかな?


「あん? 何言ってんだよさくらさん。さくらさん、ジョン君、リチャード君、ジルさん、4人だろうが」


 なあ! 私は児童じゃない!


「じゃあ、次は僕の番かな!」


 え? 私の話はまだ終わってない!


「妖精族にその人ありと言われた偉大なる妖精にしてこの街のギルドマウター、ユッカとは僕のことだ!」


 私がハロルド先生のセリフを訂正しようと思ったのに、それを遮って挨拶をしたのはギルマスのユッカさんだ。緊張しいなのか、ギルドマスターのことをギルドマウターって噛んでる。


「得意なことは書類仕事だ!」


 あ、そのまま誤魔化した。まあ、いっか。


 なんで妖精族のギルドマスターがいるのかといえば、私が対蚊対G殲滅部隊の隊長に任命された件をガーベラさんに話したら、ガーベラさんがGの殲滅にかかわることならこちらからも人を出さないわけにはいかないって言いだしたんだよね。ただ、こっちのメンバーが本決まりではなかったために、念話が使えないとコミュニケーションに困る、アオイをはじめとしたにゃんこハンター達は不参加となり、ユッカさんが来ることになったみたいなんだ。


「最後は私ね。ハンターをしているゼニア、よろしくね。得意な得物は秘密です」


 はう。今日は子供達もいるということで、いつもの色気ある服装は避けてもらったんだけど、それでも秘密ですのあたりで漏れ出す色気がすごい。後で私も真似してみようかな。


 って、耐性のないジョン君とリチャード君が見惚れてる。ジョン君はともかくリチャード君はロイスちゃんが好きなんでしょ? 言いつけちゃうよ!


 ううん、いまはそれどころじゃないね。隊長としてバシッと会議を進めないとだ。


「うおっほん! では、ここにいる8名が我が隊のメンバーである。皆、仲良くするように!」

「「「は~い」」」

「ほっほっほ、仲良くするように、ですか。言われるのは久しぶりですね」

「「はあ、先が思いやられる」」


 子供達は元気よく返事をくれる。デスモンドさんはそうだよね、仲良くしなさいって言う事はあっても、言われることはもうないよね。そしておっさん二人! ため息つかない!


 まあいいでしょう。何はともあれ今ここに、私、デスモンドさん、バーナード隊長、ジョン君、リチャード君、ジルちゃん、ユッカさん、ゼニアさん、計8名からなる特殊部隊、対蚊対G殲滅部隊の輝かしい歴史がスタートした!



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