第76話 任命! さくら隊長
私がこちらの世界にやってきたのは桜の咲く季節だった。けど、季節はすっかり夏になった。ミノタウロス達の攻撃で壊れた建物の多かった街も、いまではほとんど元通りだ。
「この街に来て、もう3か月くらい経ったのか~、すっかり私もこの街の住人だよね。でも、この街の夏はそこまで暑くなくていいね」
夏だから当然それなりに暑いんだけど、日本の猛暑に慣れている私からすれば、こんなの夏の内に入らない。凄く快適だ。
なにせ日本にいたころは、夏といえば最高気温30度越えの真夏日とかいうのが平然と毎日のように続いてたし、それどころか最高気温35度越えの猛暑日なんてのも珍しくなかったからね。夏日の基準が最高気温25度越えって知った時は、すごいショックを受けたのを今でも覚えてる。最高気温25度って、夏じゃなくて春か秋の気温だよ! 暑いと言うか快適な気温だよね。
そんなわけで、春に買った私のお洋服たちなんだけど、いまでもそのまま着ています。気温25度くらいで薄着するほど、暑さに弱くないのですよ、私は!
そんなことを考えながら、のんびりお城の廊下を歩いていた私だったんだけど、やつの気配を感じ、ハロルドスレイヤーを手に取る。
・・・・・・。
「そこお!」
私はハロルドスレイヤーを振るうと、見事に一撃で奴を仕留めることに成功した。
「はあ、まさかこっちに来てまでこいつと戦うハメになるだなんて」
お城の中なのに敵がいるのって? いるんです。それがいるんですよ! 地球にも存在した、私の夏の天敵が。英語ではモスキートと呼ばれ、フランス語ではムスティック、イタリア語ではザンザーラと呼ばれている悪魔だ。
そう、その日本語で蚊と呼ばれる、超ウルトラスーパーうざいやつです!
たかが蚊だよね? って思うかもしれないけど、蚊は結構危ないやつなんだよ。彼を知り己を知れば百戦殆うからずっていうから、私は天敵のこともちゃんと調べたことがあるの。
そもそも蚊っていうのは、地球だと一番やばい生き物なの。なにせ、地球上で一番人間を殺している生き物ランキングでトップと言われているほどの危険性があるんだからね。映画とかニュース、見た目の影響でサメとか、スズメバチ、ライオンなんかが危なそうに見えるけど、そんな奴らぜんぜん大したことないってくらい、蚊はやばいんだよ。ちなみに私が見たことある情報だと、地球で一番人間を殺してる生き物ランキング1位が蚊で、2位が人間、それで3位が蛇だったの。
蚊にどうやって殺されるの? 刺されても痒いだけだよね? って思うかもしれないけど、奴らはいろいろな病気をばら撒くからとってもやばいの。昔から有名な奴だと、マラリアとかね。日本にいる蚊はそんなやばい蚊じゃないみたいなんだけど、ここの蚊がやばい蚊なのか知らないので、私はサーチアンドデストロイで徹底的に奴らを倒してる。
ちなみに猫だって油断できない。イージーにゃんこライフボディが蚊ごときに負けるとは思えないけど、猫だって蚊に刺されるとフィラリアとかやばい病気になるリスクはあるからね。
「くう、ここのところ日に日に奴らの数が増えている。このままじゃ、結界を張ってある私の拠点以外に、出歩けなくなっちゃう。何か対策を考えないと」
私は速足で私の聖地、私のお部屋へと戻る。
不幸中の幸いか、イージーにゃんこライフな魔法によって、好き放題に結界を張れるので、私のお部屋には奴らは侵入してこれない。
でも、基本あっちこっち開けっ放しなこのお城には、とにかくあっちこっちに奴らが潜んでいて、私のお部屋以外では全然安心してすごすことができない。
「蚊の退治方法っていったら、やっぱり蚊取り線香だよね。でも、蚊取り線香って、お部屋で使うイメージなんだけど、私のお部屋は結界のおかげで安全なんだよね。だから、問題はお城中とか街中の蚊だね。うう~ん、どうしようかな。まさかお城中に蚊取り線香を設置するわけにもいかないよね? そうだ、ここはとりあえず、ロジャー将軍に相談してみようかな」
そんなわけで私はロジャー将軍のお部屋へと向かった。ロジャー将軍は丁度休憩中で、すんなり通してもらえた。
「ロジャー将軍大変です!」
「お、さくらじゃねえか、どうしたんだ?」
「ロジャー将軍、このお城は奴らに支配されつつあり大変危険です。早急に対策を立てるべきです」
「おいおい、いきなり物騒じゃねえか。奴らって誰だ? 何がどう支配されて危険なのか説明してみ?」
私はロジャー将軍に懇切丁寧に、新たなる敵のことを説明した。
「なるほど、蚊か。確かに俺も毎年毎年うんざりしてたんだ。よしさくら、お前にこの城の、いや、この街の害虫対策を1任する。失敗しても文句なんか言わねえから、好きにやってみろ。俺の部下も、そうだな、デスモンドとかバーナードあたりは好きに使っていいぞ」
「はい!」
「それと、出来ればついでにゴキ対策も頼んでいいか?」
「それは、あの黒くてちょっとテカテカしてて、カサカサ動くやつのことでしょうか?」
「そうだ。時々飛ぶし、1匹いたら何十匹もいるって言うあいつのことだ。正式名称は」
「いえ、結構です。あいつの名前は口にするのも耳にするのもおぞましいです。私は奴のことをGと呼んでおります」
「そ、そうか」
その名前は聞きたくなかった。兵隊さんとか、学校の子達の話から、この世界にもいるということは知っていた。でも、幸運なことに私はまだ出会ったことがなかった。だから、もしかしたら蚊と違って、Gはいないと期待してたのに、期待してたのに・・・・・・。
いや、ダメださくら。戦う前から負けちゃいけない。地球にいた時と違って、今のお前にはキジトラさんからもらった、このイージーにゃんこライフパワーがあるんだ。きっと勝利できるはずだ!
よし、女は度胸、やってやろうじゃないですか!
「ロジャー将軍、この不詳さくら、蚊とGを殲滅すべく今より作戦を立ててきます!」
「お、おう。なんか妙に張り切ってるが、ほどほどにな」
「いえ、必ず殲滅して見せます!」
こうして、私はロジャー将軍公認の、対蚊対G殲滅部隊の隊長に就任した。
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