第71話 因果応報?

 木工職人さくらとして、レプリカハロルドスレイヤー達を作り終えた私は、いつものように学校に通う生活を送っていた。


 そして今日は、待ちに待った武器の授業の日だ。先週はハロルド先生をスレイヤーしただけで終わっちゃったからね。今日はアルバート君にシャーリーさん、それからロイスちゃんとティリーちゃんにも、私は大人だから弱くないってことを証明しなくては!


「さくらちゃん、今日こそは勝負しようね!」

「うん!」

「先週さくらちゃんがハロルド先生に勝ったって聞いたけど、本当なの?」

「本当だよ。その件も含めて、この木剣の名前が、正式にハロルドスレイヤーになりました!」

「ふ~ん」


 むう、ティリーちゃん疑ってるな。でもいいでしょう。今日こそは私の真の実力を、ハロルドスレイヤー共にお見せしましょう! ハロルドスレイヤーは猫ボディの作品だからずるい? うう~ん、それを言われるとちょっといたいんだけど、みんなは私より何年も前から戦いを学んでいるわけだからね、このくらいのことはきっと許容範囲内なのです。


「よし、お前ら。今日の授業の進め方も先週と同じだ。それぞれ教わりたい武器をもった先生のところにいきな」

「「「「「は~い」」」」」

「ん? さくらさんは今日こそ剣のところへ行くとおもってたんだけど、よかったのか?」

「はい。アルバート君やシャーリーさんとも戦わないといけませんので」

「なるほどな。でもよさくらさん、一応お前大人だろ? 子供に負けたことを根に持つってのは、どうかと思うぞ? しかも、そんな木剣持ち出してよ」

「ち、違います! アルバート君とは勝負しようって約束してたんですよ! ね、アルバート君」

「ああ。前回先生に勝ったその実力、本物かどうか見極めたいんだ。なんか前回の最後、剣が勝手に戦ってたように見えたからな。それと、もし本当に強くなってるんなら、どうやってたった1週間で強くなったのかも、見極めてやる予定だぜ」

「ふっふっふ、望むところです!」


 ふっふっふ、種と仕掛けしかない私の強さだけど、見極められるものなら見極めてみるがいい!


 でもその前に、まずはハロルド先生との1対1の模擬戦だ。今日はシャーリーさん、アルバート君、私の順でハロルド先生に挑んでいく。


 模擬戦って言っても、戦いながらハロルド先生が悪いところを指摘して、それを修正しながら戦うだけなんだけどね。


 シャーリーさん、アルバート君と順調に模擬戦は終わって、ついに私の番だ。でも、私には不要かな? なにせハロルドスレイヤーをもった私には、欠点などないからね!


 私はハロルド先生と向かい合う。今日のハロルド先生は、前回とは違って普通の木剣を持っている。


「ハロルド先生、その武器でいいんですか?」

「ああ、構わんぜ」

「では、行きます! いくよ! ハロルドスレイヤー!」


 私はハロルドスレイヤーと共にハロルド先生に切りかかる。かんかんかんかんと木剣の打ち合う心地よい音が訓練場に鳴り響く。


 あれ? おかしいな。今回は、ハロルドスレイヤーにストッパー解除は無しでってお願いしてるから、ハロルドスレイヤーの全力には程遠いのはそうなんだけど、それにしてもこっちの攻撃がぜんぜん通用しない。


 これって、私の気のせいじゃなかったら、先週より戦えてない気がする。そして、2分もしない内に完全に息が上がっちゃった。


「ん~、さくらさんはあれだな。剣のドーピング効果のおかげで一応様になってるけど、筋力もスタミナも根本的に無さすぎる。今のままじゃ、こないだみたいに全てを投げうってようやく一矢報いる程度のことしかできないぞ?」

「ぜえ、ぜえ、な、なんでですか? 先週よりも戦えてない気がします」

「そりゃああれだ、ほら、その剣訓練用にいいって言ったの覚えてるか?」

「はい、いろいろ勉強になるんですよね?」

「んでな、貸してもらってる間、俺もその剣使ってちょっと特訓してたんだよ。ロジャー将軍とか、デスモンド先生に付き合ってもらってな! だから、俺自身剣の腕は先週よりもだいぶ上がってるぜ? その剣に、足りてない部分をピンポイントで気付かせてもらえたからな」

「え・・・・・・」


 あれ? っていうことは、私とハロルドスレイヤーコンビの優位性って、もしかして、レプリカハロルドスレイヤー2号達が学校の授業に導入され始めたら、無くなるの?


「ちょ、ちょっと待ってくださいハロルド先生。もしかしてレプリカハロルドスレイヤー2号って、この授業で使ったりしますか?」

「使うぞ。そのためにロジャー将軍にお願いして買ってもらったんだし」


 こ、これはまずい。いくらオリジナルのハロルドスレイヤーが私のところにいるとはいっても、みんなのほうが元の身体能力が圧倒的に上なんだから、レプリカハロルドスレイヤー2号達の手でみんなが強くなると、みんなに勝てなくなっちゃう。このままじゃ、大人の威厳が!


「っていうか、もう使ってるんだよな。ほれ、お前と仲良しのロイスさんやティリーさんを見てみろ。丁度二人ともその剣の劣化コピー品で、先生と戦ってるぞ」


 私は恐る恐るロイスちゃんとティリーちゃんの方を見る。するとそこには、どこからどう見ても、私とハロルドスレイヤーのコンビよりも鋭い動きをしている、二人の女の子の姿があった。



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