第64話 真! ハロルドスレイヤー!

 翌朝、私が起きると、ハロルドスレイヤーが土の器の中で、何故か真っ直ぐに立っていた。まだまだ血はいっぱい余ってるけど、もうお腹いっぱいなのかな?


『ハロルドスレイヤー、もうお腹いっぱいなの?』


 なんとなく、うんって言われた気がした。


 私はハロルドスレイヤーを血の溜まった土の器から取り出す。不思議と血は一滴たりともついてこない。


 強化を終えた真ハロルドスレイヤーは、昨日までのハロルドスレイヤーとは違って、元の木の色から、凄く赤黒い色に変色している。なんか、禍々しい色だよね。でも、強そうな色だ。 うん、いいかんじ!


 そだ、この大量の余った血はどうしよう? 何か使い道あるのかな? ん~、取り合えず保存用の樽でも作って、ボヌールさんにでもプレゼントするかな。ハロルドスレイヤーを強化出来たくらいだし、きっと色んな木材の強化に使えるよね。


 私はハロルドスレイヤーとでっかいトカゲの血の樽を持って、急いで街へと帰る。


 今日も学校だから、8時45分には学校に行かないとだからね。


 でも、まずはギルドに寄って血の樽を預けちゃおう。なにせ血の樽だもんね。持ってるだけでちょっとと呪われそうな気がするよね。実際にはただの素材なんだと思うけど、血って、お肉と違ってなにか独特の怖さが無いかな?


 あとそうだ、戦争も終わったことだし、桜の木の拠点にある牙や爪も、近いうちに全部片づけたいね。


『おはようございます~。ガーベラさん今お時間ありますか?』

「あら、さくらちゃん、おはよう。時間なら空いてるわよ」

『ガーベラさん、これ、木材を強化出来る血です。重いので気を付けてくださいね』

「あら、ありがとう。とりあえずボヌールに査定させとくわね。ところでさくらちゃん、その赤黒い棒は何かしら?」

『私の愛剣、ハロルドスレイヤーです!』

「ハロルドスレイヤー?」

『はい、どんな強敵に対しても勝利を導いてくれる。伝説の魔剣です!』

「そ、そうなのね。そう言えば、ボヌールがあの時使った剣は、ロジャー将軍のところに置いてきちゃったんだっけ?」

『そうです。私が一緒に帰ろうとしたのに、あの剣が拒絶したので。あんな剣のことなんか忘れて、このハロルドスレイヤーと一緒にこれから強くなろうと思います』

「それ、木剣よね?」

『はい。なのであの男とあの剣の組み合わせにそのまま勝つのは難しいと思い、強化してきました』

「そうなのね。ちょっと見せてもらってもいいかしら?」

『もちろんです』


 私はガーベラさんに真ハロルドスレイヤーを渡す。するとガーベラさんはいろいろな角度からハロルドスレイヤーを見る。それからその小さい手で剣を握って素振りをする。身長30cmくらいしかない妖精族のガーベラさんが持つと、ハロルドスレイヤーも超巨大な剣に見えるね!


「この剣、面白いわね」

『そうなんですか?』

「ええ、この剣の能力、さくらちゃんは正確に知っているかしら?」

『いえ、わからないです』

「じゃあ、説明するわね。この剣、ハロルドスレイヤーはね、事前に魔力を込めておくと、ハロルドスレイヤーを使う際に、その魔力を利用して、剣自身と使用者を強化し、その上で自動で戦ってくれるっていう魔剣みたいね」

『ということは、猫ボディの時に魔力をチャージして、人間ボディで使えばいいってことですか?』

「そうね。ただ、あまり強力な力は引き出さないようにしたほうがいいかもしれないわ。過剰な魔力による身体強化は、あとで反動が凄いからね。魔力をチャージする人と使用者が同じならそう言う事にはならないけど、さくらちゃんの使い方としては、魔力の強い状態でチャージして、弱い状態で使うってことよね?」

『はい』

「どうやらこのハロルドスレイヤーは、使用者が耐えられる範囲を把握できる機能のあるみたいだけど、さくらちゃんがお願いすれば上限を突破することも可能な気がするの。くれぐれも気を付けてね」

『はい! 分かりました。ハロルドスレイヤーには、反動が辛くない程度に戦ってもらいます!』

「ええ、それがいいと思うわ」

『いろいろとありがとうございました。それでは、これから学校なので、失礼します』

「ええ、またいつでも来てね。ここは妖精の国の子達のお家でもあるからね」

『はい!』


 私はお城の拠点目指して空を走る。


 あれ? そういえば、なんでガーベラさんがあの剣のことを知ってるんだろう? う~ん、そっか、英雄ボヌールさんが7mのミノタウロスを倒した剣だもんね。情報通のガーベラさんなら知っててもおかしくないかな?




 私はお城の拠点で人間ボディになって、学校へと向かう。そうそう、学校なんだけどね、私はしばらくの間通うことにしました! ロイスちゃんやティリーちゃんと一緒に授業を受けるのも楽しいし、まだまだこの世界の常識やこの国の常識について知らない部分が多いからね。


 仕事は? って思われるかもしれないけど、幸いポーションを売って手に入れた大金があるから、当分休んでいても大丈夫なの。それに、私の一番の得意先である軍隊には、ポーションの在庫が過剰にあるんだって。なんでも、ミノタウロス達との戦いの準備の際には、最悪を想定して、長期戦になってもいいようにって、大量に備蓄を持ったらしいんだけど、大方の予想通り短期決戦で終わっちゃって、ポーションの消費が少なかったんだって。


 国全体としてみればまだまだほしいらしいから、もし作ったのなら買ってくれるみたいなんだけど、当分の間は閉店でも問題なさそうなの!




 そして学生生活をエンジョイしていると、あっという間に月日は流れ、1週間が経過した。つまり、今日は武器の実技のある日というわけです。そして同時に、真ハロルドスレイヤーお披露目の日というわけなのです!


「さくらちゃん、なんか楽しそうだね」


 ロイスちゃんが声をかけてくれる。ハロルドスレイヤーと共に活躍するところを想像していたんだけど、顔に出てたみたいだね。


「うん、今週の私は、先週までの私とは全然違うの!」

「そうなの? じゃあ楽しみにしてるね!」

「うん!」

「その自信は、その布に入ってる物の影響?」


 ティリーちゃん、なかなか鋭いね!


「そうなの。今日はティリーちゃんにだって負けないからね!」

「うう~ん。普通なら1週間であたしとさくらちゃんの実力差が埋まるとは考えにくいけど、その顔、自信があるんだよね?」

「うん!」

「じゃあ、あたしも楽しみにしてるね!」

「うん!」


 そして、1週間ぶりの武器の授業がはじまった!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る