第63話 魔剣ハロルドスレイヤー
学校での武器の授業が終わった後、私は猫ボディになり、ひとり桜の木の拠点へと帰ってきた。
今日の学校の授業では反省点が多かった。あの男と裏切りものの剣のせいも多分にあると思うし、午前中に受けたハロルド先生の座学の授業の時に、ハロルド先生に上手く乗せられたことも原因だと思うけど、本来弱っちい私が強くなったと錯覚してしまった。
本来の私は、人間ボディだと森の中を数分あるいただけで捻挫する程度の運動能力しか持っていないし、猫ボディだって、キジトラさんに言われたことは、猫として生きるのにイージーな能力っていうだけだもんね。つまり、言い方を変えれば、狩りをしてご飯を得る力はあっても、それは本格的な争いごとに向いた能力とは違うと思うの。
桜の木の下でへそ天で寝っ転がり、改めて今日の出来事を思い出す。
実技の授業では、結局あの後1勝も出来なかった。しかも、負けた相手は悔しいことにハロルド先生だけじゃない。あの後生徒同士での戦いも軽くすることになったんだけど、アルバート君には振り下ろしを小手でガードされた後、防具の上からとはいえお腹を殴られ、シャーリーさんにはムチでハロルドスレイヤーを絡めとられた。それどころか、ロイスちゃんにもシールドバッシュとかいう技で吹き飛ばされたし、ティリーちゃんに至っては気が付いたら槍の先端が目の前にあった。
浮かれてた私も流石に理解した。戦いと無縁だった日本で生活していた私じゃ、戦いが身近なものであるこの世界の子達には通用しないと。
ならどうすればいいのか? あのクラスの中でもぶっちぎりの最弱だと開き直って諦める?
ううん、それはダメ。それじゃあ武器の授業がつまらなくなっちゃうし、このままだと学校へ通うのも嫌になっちゃうに決まってる。
じゃあどうすればいいのか?
この難問に、私も相当悩んだけど、ついに答えを導き出した。その答えとは。そう、私がハロルド先生に勝った時のように、愛剣ハロルドスレイヤーに勝手に勝ってもらえばいいんじゃないかな? っていうことだ!
ふっふっふ、他力本願な解決法だけど、悪くないよね!
ということで、そのためにハロルドスレイヤーの強化をします!
ハロルドスレイヤーには、今でも強敵ハロルド先生を相手に、勝手に勝ってくれるというスキルが付いている。たぶん。でも、現状ではそのスキルの発動確立は決して高くない。今の発動確立のままだと、来週の武器の授業の時、負けまくること必至だ。それに、ハロルドスレイヤーは木製だからね。授業で使う分には問題ないかもだけど、あの男とあの剣相手には、ちょっと強度が不安だ。
だから、イージーにゃんこライフ魔法で強化して、どんな相手にも、何度でも勝ってくれるように強化することにしたというわけだ。
猫ボディの魔法も、ものに込めれば人間ボディの時も使えるのは、ポーションで実証済みだからね。
というわけで、私はイージーにゃんこライフヘッドにお願いする。ハロルドスレイヤーを強くするのはどうしたらいいの?
お願い教えて~!
おお~、流石はイージーにゃんこライフヘッド、ハロルドスレイヤーの強化方法が一瞬で判明する。
その方法は、モンスターの血をハロルドスレイヤーに吸わせて、その際にイージーにゃんこライフ魔法を込めればいいというものだった。なるほど、木には目に見えない隙間がいっぱいあるって言うし、そこを埋めて強化しようって言う事だね!
そのためにモンスターの血を吸わせるっていうのはちょっとグロテスクだけど、愛剣ハロルドスレイヤーのためだ、そのくらいのことは我慢しよう。
さっそく私はこの辺のモンスターの中でもそういう事に使うのに向いているモンスターを探すために、五感を澄ませる。
すると、イージーにゃんこライフボディはあっさりとそのモンスターのいる場所を特定する。
『よし、いくよ。ハロルドスレイヤー!』
返事は無い。でも、きっとハロルドスレイヤーも喜んでくれているはずだ。私はサイコキネシスでハロルドスレイヤーを浮かせて、共にモンスターを狩りに行く。
目的のモンスターは、でっかいトカゲだった。このトカゲ、以前私が拠点周辺で暴れていた時にも何度か狩ったんだけど、凄く美味しかったんだよね。細かい味は覚えていないけど、ミノタウロス達よりもある意味美味しかった気がする。今度ギルドのみんなにも分けてあげようかな。
私はでっかいトカゲをサクッと狩る。そして土魔法で土の器を作り、水魔法ででっかいトカゲの血を土の器へと入れて、そこにハロルドスレイヤーも入れる。
あとはハロルドスレイヤーが強くなるようにって念じながら魔法をかけてっと、これでいいのかな? 何となくハロルドスレイヤーがでっかいトカゲの血を吸い取っているような気がするから、これでいいのかな?
私は魔剣ハロルドスレイヤーが血を吸う横で、でっかいトカゲのお肉を美味しくいただく。私がお肉を食べ、ハロルドスレイヤーが血を吸う。うん、いいね! この一緒に食事をしている感じ!
私がお肉を食べ終えても、ハロルドスレイヤーはまだまだ血を吸っているみたいだ。
『ハロルドスレイヤー、このままもっと血を飲む?』
私はハロルドスレイヤーに話しかける。なんとなく、うん、このまま飲むって言われた気がした。なので、木の器ごと桜の木の拠点へと戻る。
『それじゃあハロルドスレイヤー、私は寝るけど、ここは安全だから、ゆっくり食事の続きを楽しんでね』
ハロルドスレイヤーが肯定した気がしたので、私は寝ることにした。今日は人間ボディで凄くいっぱい運動したからかな? なんだか、凄くよく寝れそうなんだよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます