第58話 いざ学校へ!

 今日は朝から学校か~。こっちに来てからは、朝から何かしなきゃっていうことがなかったのよね。だから、朝から学校へ行くっていうこの感覚が、懐かしくもありちょっと楽しいよね。


 私は仕度をして部屋を出てる。正門への通り道の階段を下りて、そこにいる軍人さんから学校への行き方を聞いて学校へ向かう。


 昨日は迷っちゃったけど、ちゃんと行き方を聞けば大したことないね。あっさりと学校へと到着した。


 学校って言っても、このお城の学校は、日本に多くある学校みたいな、独立した建物っていうわけじゃないんだよね。お城の一角を学校にしてるだけって感じなので、見た目では全然わからないね。


 私はそんなお城の学校の中へと入っていく。


 まず私を出迎えてくれたのは、結構広めのロビーだ。


 私はきょろきょろとあたりを見渡す。へ~、なんか同じお城の中なのに、他の場所と全然印象が違うね。内装に強いこだわりを持った先生がいるのかな?


 すると、ちょっと離れた場所から聞き覚えのある声がする。


「さくらちゃん、おはよう~!」


 ロビーにあるテーブルでロイスちゃんが待っててくれたみたいだ。


「おはようロイスちゃん! 待っててくれたの?」

「うん、さくらちゃん教室の場所知らないでしょ?」


 そういえばそうだった。危ない危ない。このままだと無差別に教室に突撃するか、諦めて帰るしか手が無くなるところだった。


「ありがとう!」

「いえいえ~、それじゃあ、教室へいこっか」

「うん。そう言えば、ティリーちゃんは?」

「ティリーちゃんはまだだよ。ティリーちゃん、いつもギリギリだから」

「そうなんだ」


 壁にかかっている時計によると、今は8時30分だ。45分から朝の時間って言ってたのにまだいないなんて、本当にぎりぎりに来るんだね。避難宿泊所と学校は近いみたいだから、それでも平気なのかな?


 そういえば、私が日本で学生だった頃も、遠くの子より近くの子の方がぎりぎりで来ることが多かった気がする。


 私とロイスちゃんは学校の中を歩いて教室へと向かう。


 教室は日本の小学校や中学校みたいな、ひとりひとりの机と椅子があるタイプじゃなくって、横に長いテーブルが並んでいる、講堂みたいなタイプだ。う~ん、自分の席がないとはいえ、こういう場合、座る位置って自然に固定されるよね。どこに座るんだろ?


「ロイスちゃん達はいつもどの辺に座っているの?」

「窓際の前のほうだよ」


 窓際の前のほうって、なかなかいいポジションだよね。私はロイスちゃんにいつもの場所に案内してもらい、一緒に座る。流石は前の方の席だね、近くにいる他の子達も、みんな真面目そうな子達だ。


 私はロイスちゃんに紹介されて周辺の子達と挨拶をする。むむむ、流石は真面目な子達とでもいうべきだろうか、記憶力もいいみたいで、何人かは私の正体をみやぶっていた。


 でも、あっさり受け入れてくれるあたり、みんな心が広いね。


「おはよう! ふ~、ちょっとギリギリになっちゃった」


 そんなことを言いながら、ティリーちゃんが時間ギリギリにやってくる。


「おはよう~」

「もう、ティリーちゃんはいつもでしょ」

「いつもはもう1分くらい早いの!」


 そして、ティリーちゃんのすぐ後に先生が教室に入って来て、朝の時間が始まる。


 この先生、昨日の魔法の授業の時にいた、女の先生だ。


「ではまず、新しい仲間を紹介します。さくらさん、前へ」


 それはそうだよね。普通クラスに一人増えたら、絶対そうなるよね。でもどうしよう、どんなことを言えばいいんだろう。少なくとも何人かにはバレてるだろうから、正直に言う? うう~ん。私は頭をフル回転させる。タイムリミットは、教室の前に到達するまでだ! って、ここはほぼ最前列だった。


 私は考える間もなく前に立つことになってしまう。まずい、大ピンチだ。私は熟考すればそこそこ良いアイデアが浮かぶタイプって自負してるけど、アドリブにはとことん弱いんですよ!


 すると先生が、小声で話しかけてきてくれた。


(大丈夫ですよ、まずは私が上手く言いますので)

(ありがとうございます)


 良かった~、助かった! 流石先生! 流石先生だね!


「では、皆さんにゲストを紹介します。さくらさんです。皆さんもご存知かと思いますが、さくらさんは薬師として今回の防衛戦に際し、大変ご尽力されてくださった方です。そして、防衛戦が終わった今、この街の教育に関してご興味があるということです。昨日や今日のように、時折授業に参加されるかもしれませんが、皆さんは同級生のお友達として振舞ってあげてくださいね」

「「「「「は~い」」」」」


 おお~、すご~い。これで私が好き勝手にこのクラスの授業に参加できることが出来るし、大人の私が学校に来ることに違和感もない。流石先生、完全無欠の話術だね!


「ただいま先生に紹介していただいたさくらです。皆さんよろしくお願いしますね」


 私も一応ペコリと挨拶をする。


「「「「「は~い」」」」」

「ではさくらさん、席に戻ってください」

「はい」


 その後は、朝の時間っぽいみんなへの連絡を先生がする。


「それでは、朝の時間を終了します。1時限目の授業まで後5分ありますから、トイレに行きたい人がもしいたら、すぐに行ってきてくださいね」


 どうやら朝の時間はこれで終わりみたいだ。トイレに行ったり、おしゃべりしたり、教室は騒がしくなる。ティリーちゃんは教室の外にさささっと出ていったので、トイレかな?


「ロイスちゃん、1時限目の授業はこの教室で受けるの?」

「うん。1時限目から3時限目までの午前中の授業は全部この教室だよ。4時限目の実技授業だけは、訓練場に移動だけどね」

「そうなんだ~、ありがとう」


 9時から1時限目で午前中に3コマあるってことは、一つの授業は1時間くらいってことだね。


「授業の内容は、武器の使い方を3回やるの?」

「うん! 楽しみだよね! あそこに時間割が書いてあるの」

「ありがとう」


 ロイスちゃんの教えてくれた教室の隅っこには、1週間の時間割が書いてあった。


 なるほど、普段は国語とか算数とかの授業があるけど、魔法だけの日もあれば、武器のだけの日もあるんだね。


 でも、5分は短いね。ロイスちゃんとのおしゃべりを少ししただけで、あっという間に終わっちゃった。


 そして、鐘の音と共に、これぞ戦士って感じの男の先生が教室に入ってくる。


「お~し、ガキども、今から授業を始めるぞ!」

「「「「「は~い」」」」」


 よ~っし、私もしっかり学んで、あの男を倒せるようにならないとね!




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