第41話 ミノタウロスの強さ
「さくらちゃん、先にお昼食べてきちゃって」
『は~い』
ふ~、もうお昼か~。肉体的にも魔力的にも全然平気だけど、精神的に疲れたかも。でも、今はご飯だね、ご飯! 美味しいご飯をいっぱい食べれば、疲れも緊張も忘れられるってね!
私はギルドの食堂へと向かうと、そこではアオイを始めとした、猫さん達がご飯を食べていた。
『ようさくら、こっちで一緒に食おうぜ』
『うん!』
私はご飯を貰うと、アオイのいるテーブルへと座る。今日は非常時ということで、ご飯にメニューはない。あるのは、ワンプレートのステーキセットオンリーだ。しかも、出来立ての熱々というわけにもいかないみたいで、全部作り置きだ。とは言っても、もともとの料理人の腕がいいし、状態保存の魔法が掛かっているみたいで、ステーキなんかは出来立てと遜色ないほど温かくて美味しい!
『どうださくら、朝は緊張してたように見えたが、だいぶ慣れたか?』
『うん、今はもう全然平気だよ! 100人でも1000人でもかかってこいって感じだよ』
私の対戦相手は怪我人なので、増えないでほしいけど、増えても全然問題ないかな?
『そうか、そいつは頼もしいな。ところでよ、さっき熊親父が言ってたんだが、さくらって、あの火の玉受け止めれるのか?』
『うん、サイコキネシスで簡単に受け止められるみたい』
『魔力の消費はどうだ? 怪我人治すのと火の玉をキャッチするのと、どっちが疲れそうだ?』
『よくわかんないんだけど、どっちも大したことない感じかな?』
『ほう。じゃあ、怪我人をこれ以上出さないためにも、出来るだけキャッチしてみてくれ』
『うん、わかった。怪我人も多いから、怪我人の治療をしながら、気になった火の玉をキャッチすればいいのかな?』
『ああ、よろしく頼むぜ。ただ、無理はしなくていいからな』
『うん!』
よ~っし、午後は回復魔法を使いながら、私の華麗なレシーブを見せてやる!
『何考えてるのかわからんが、くれぐれも無理はするなよ?』
『うう、わかってるよ。それよりアオイは何してたの?』
『俺か? 俺達は基本的には城壁の上から魔法攻撃だな』
『魔法大砲みたいにど~んって攻撃魔法撃ってるの?』
『ああ、大体そんな感じだぜ。ただ、ちいっと狙いが違うんだけどな』
『そうなの?』
『ああ、魔法大砲は威力は高いんだが、如何せん細かい狙いを定めるのが苦手でな。とりあえず敵の多いとこに撃ち込むって運用なんだ。もちろん純粋に火力が高い攻撃ってのも大事なんだけど、こういう籠城戦の時には、もっとピンポイントな火力が重要な場面ってのもあるんだ。さくらは攻城戦のやり方知ってるか?』
『ううん、知らない』
『んじゃ、参考になるかわからんが教えておくぜ。敵の城壁の落とし方ってのはだいたい相場が決まっててな。強力な攻撃で城壁や城門をぶち破るか、城壁を乗り越えるかの2択なんだよ。ミノタウロスどもがやろうとしていることもこの二つだ。城壁や城門を打ち破るために火の玉を撃ってるし、でっかい杭を横に打ち付けることの出来る車を城壁にくっ付けようとしている。んで、それと同時に、城壁を乗り越えるために、梯子をかけようとしたり、でっかい階段付きの車を城壁にくっ付けようとしてるってわけさ』
なるほど、日本のゲームや漫画にも、そんな兵器が出てきてた気がする。
『そうなると籠城側が優先的に壊したいのは、杭付きの車や、階段付きの車ってことになるんだが、魔法大砲はそういうのを狙うのが苦手だ。かといってそういう車は防御力が高いから、人間達の使う普通の魔法や弓なんかじゃなかなか壊れない。人間ってのは俺達猫や妖精達と比べると、体はデカくてパワーはあるけど、代わりに魔力が低いから、攻撃魔法はそんなに強くないんだよな。てなわけで、人間達の壊しにくい車タイプの攻城兵器をぶち壊すのが、俺達妖精の国のギルドのメンバーってわけさ』
『アオイ凄いね!』
『そうでもないさ。みんな俺と一緒のことをやってるしな』
『みんな凄いんだね! そだ、火の玉を撃ってるやつらは退治しないの?』
『やりたいんだが、ちょいとばかし遠くてな。魔法が届かないわけじゃないんだが、距離があって威力をキープしにくいんだ。向こうも火の玉を撃っている兵器の周辺には防御魔法を展開してるっぽいしな。まあ、その内隙を見てロジャーの部下あたりが直接叩きに行くと思うがな』
『なるほど、そうだったんだね。そういえば、火の玉をサイコキネシスでキャッチしたりは、アオイはしないの?』
『ん~、やろうと思えば出来るんだが、正直魔力が惜しいな』
『そうなんだ』
『ぶっちゃけ今はお互いに様子見なんだよ』
『様子見?』
『ああ、ミノタウロスってのは大きさである程度の強さと役割がわかるんだがな。今姿を見せて街に攻撃をしてるのは、3mくらいの下位のミノタウロスどもなんだよ』
『3mって結構大きいよね? それでも下位なんだ』
『ああ。3か月前の戦いの報告によると、3mの奴らが一番下で、3mの奴ら10匹くらいまとめるリーダー的なのとして4mの奴がいたんだと。んで更にその4mの奴らをまとめる存在として5mの奴がいて、もう一個上、6mの奴まで確認出来たそうだ』
『6mって、そんなに大きいのがいるの!?』
『ああ、前回いたって報告だ。ロジャーを始めとした人間の強い連中に大怪我させたのも、5mの奴と6mの奴だったって話だから、間違いねえだろ』
『そうだったんだ。その時アオイは怪我しなかったんだよね?』
『ああ。3か月前の戦いの時は、ロジャーの奴に軍とハンターの強いやつを大量に連れてくから、街の守りを頼むって言われててな。俺達妖精の国のギルドのメンバーは誰も参戦してないんだ』
そっか、それで妖精の国のギルドのメンバーには重傷者とかがいなかったんだね。
『だから、ミノタウロスどもの5mの奴や6mの奴が出てくるまでは、俺もロジャーもあんまり体力や魔力を使いたくなくてな』
うう~ん、そんな事情があったんだね。でも、そうなるとますますアオイやロジャー将軍には休んでてもらわないとだよね。
『ありがとうアオイ! いろいろと分かった気がする! 取り合えず、私が魔力を使う分には問題ないよね?』
『ああ、でも、怪我人の治療も立派な仕事だからな?』
『うん、もちろんそれは忘れないよ! それじゃ、そろそろガーベラさんとご飯休憩交代してくるね!』
『ああ、くれぐれも無理はするなよ。長丁場になるかもしれないんだからな!』
『うん! わかった~!』
よ~っし、午後も張り切って行ってみよ~!
『んったく、さくらのやつ本当にわかってんのか? まあ、ガーベラが一緒なら無理をさせることはないか? ん~、一応俺からもガーベラにさくらのこと気を付けるように言っておくか』
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