第36話 アオイと一緒にポーション作り
『アオイお待たせ~』
『おう!』
私は上空で待っててもらったアオイを呼ぶ。
『ようこそ私の拠点へ!』
『ああ、邪魔するぜ! へ~、ここがさくらの拠点か、このでっけえ桜の木が寝床か?』
『うん、普段はこの桜の木の上で寝てるの。もうちょっと早ければ花が咲いていたんだけどね』
私がこの世界にやってきた頃は結構奇麗に咲いていた。でも、こっちに来てからもうちょっとで1月くらい経つのかな? 最初は奇麗だった桜の花も、最近はほとんど葉桜だ。
『そうか、花ってあれだよな?』
そういってアオイは数少ない残りの花に視線を向ける。
『うん、一番多い時はこの木いっぱいに咲いてたの』
『そうか、あのデカい花がいっぱいってのは奇麗だろうな。ちょっと惜しいことをしたな。ま、来年見せてくれよ!』
『うん、わかった!』
そうだね、私はもうこの世界でずっと暮らしていくんだもんね。来年はアオイと、ううん、妖精の国のギルドのメンバーと一緒にお花見をしたいね!
『それじゃ、さくらのポーション作りを見学させてもらおうかな』
『うん!』
私はいつもの手順でポーションを作る。
『こんな感じなんだけど、どうかな?』
アオイはたぶん護衛に付いてきてくれたんだと思うけど、きっとポーションの作り方もアオイの方が詳しいよね。ということで、私のポーション作りはどうなのか、アオイに確認する。
『なるほど、青い果実と水はあくまでも回復魔法の効果を閉じ込めておく溶媒ってわけか』
『溶媒?』
『ああ、悪い。つまりな、さくらのポーションは、薬草とか回復効果のある植物から薬効を取り出すわけじゃなくて、さくら自身の回復魔法を液体に溶かし込んで作ってるんだなって思ったわけさ』
『へ~、そうなんだ』
『そうなんだってお前、よくそんなんでポーション作れたな』
『そこは、何となく?』
なんでこのポーションの作り方を知ってるかなんて言われても答えられない。それはこの猫ボディをくれたキジトラさんに聞いてほしい。というか私も聞きたい。
『まあちょっと強引なやり方だけど、さくらは魔力も多そうだし、これでいいのかも知れないな。ただ、一つだけいいか?』
『うん』
『なんで高ランクの汎用回復魔法を使ったんだ? この素材の魔力の強さを考えると、どう頑張っても高ランクのポーションにはならないよな? ならもっとランクの低い魔法でも良かったんじゃないか?』
『そうなんだけどね。私、汎用の回復魔法ってこれしか知らないの』
『そうなのか? いや、まあ、そうだな、汎用の回復魔法なんてあんまり使わないもんな』
『そだ、アオイってこのポーションの出来とかってわかる?』
『ああ、分かるぜ。中ランクのポーションだな』
よし、こないだ作ってガーベラさんに見てもらったのと一緒だね!
『ところでよ、さくらの作りたいのは汎用のポーションでいいんだよな?』
『うん』
『だよな~。でもまいったな、このやり方じゃあ俺、手伝えねえぞ』
私としては一緒にいてくれるだけで癒しになるから十分なんだけど、青い果実を取るのを手伝ってくれただけじゃなくて、ポーション作りまで手伝おうとしてくれるなんて、やっぱいいにゃんこだね!
『大丈夫だよ。アオイは護衛してて!』
『でもここ、安全なんだろ?』
『うん・・・・・・』
『俺も猫にのみ効果のある特化型の回復魔法なら割といけるんだけど、汎用回復魔法は使う機会も無かったからな~。そだ、青い果実をすりつぶしてやろうか?』
『いいの? あれ結構面倒だよ』
『まかしとけって! どのくらいすりつぶす?』
『この青い果実ってまだまだ取れるかな?』
『そうだな、時期的にはまだまだ大丈夫だと思うぞ。それに、この果実の木はこの北の森だけに生えてるわけじゃなくて、割とどこにでも生えてるから、いくらでも集められるな』
『なるほど~、そんなに一杯取れるんなら、全部ポーションにしちゃってもいいのかな?』
『じゃ、全部潰しちまうぜ?』
『うん!』
『おっけ~、分かったぜ! すり鉢用の土はこの辺の土を使ってもいいんだよな?』
『うん』
私がそう返事をすると、アオイは土魔法で大きなすり鉢を作り出す。大きさは、どのくらいあるかな? 下手な物置よりも大きいね。そしてそんなすり鉢に、アオイはサイコキネシスで果実を全部入れる。あれ? アオイがいない?
『うおっしゃ~、一気にいくぜ!』
「う~ふしゃしゃしゃしゃしゃ~!」
アオイは大きなすり鉢の中でふしゃふしゃ言ってるみたいだ。もしかして、すり鉢の中に入ってすり潰すつもりなのかな?
私がアオイ特製巨大すり鉢の中を覗くと、アオイは肉球や爪だけじゃなく、背中や頭まで使って青い果実をつぶしてた。たぶん、問題は無いんだろうけど、何て言うか、今回作るポーションは、アオイの毛とかがいっぱい入りそうだね。
う~ん、よくよく考えると、私の猫パンチでも少しは毛が入ってた気がする。うん、細かいことを考えるのは止めよう。それより、アオイがすりつぶしてくれてる間に、湧き水の池のお水を集めとこっと。
私が水魔法で池の水をぷかぷかと浮かべて集めていると、アオイの作業が終わったみたいだ。
『おいさくら、俺のこともそれで洗ってくれよ』
『うん』
そう言ってすり鉢の縁から顔を出したアオイは、果汁まみれだ。私は取り合えず集めたお水をシャワーみたいにしてアオイにかけてあげる。
『ぷは~! 一仕事の後のシャワーは気持ちいいな!』
アオイ、猫なのに濡れるの平気って変わってるね。顔、首、背中、お腹、尻尾、お尻、などなど念入りにアオイに付いた果汁を落としていく。
『ふ~、サンキューさくら、奇麗になったぜ! あとはこのポーションを完成させれば終わりだな!』
うん、アオイの言うようにアオイに付いてた果汁は落ちたみたいだ。これで後はアオイの言うようにポーションを完成させるだけだね!
アオイを洗った場所? それは、うん、すり鉢の上だよ。だって、アオイに付いてた果汁勿体無かったし、池の水ももったいなかったんだもん。アオイがそれでいいって感じですり鉢の中で待ってたし、きっと大丈夫!
それじゃ、果汁と池のお水をよく混ぜながら、回復魔法をか~けよっと。うん、いい感じかな?
『どうかな?』
『ああ、奇麗に全部中級のポーションになってるぜ』
『やった! 大成功だね!』
『おう! 後は持って帰るだけだな。ポーションの瓶は100個しかないけど、残りはどうするんだ?』
『う~ん、このまま持ってくしかないのかな?』
『うう~ん、流石にデカすぎねえ?』
『そうだよね』
このサイズのすり鉢だと、確実に妖精の国のギルドの入口を通らない。倉庫なら通るから、ボヌールさんにお願いして倉庫に置いてもらう?
『そういやさくらってさ、空間魔法と保存魔法使えるんだよな?』
『うん』
『じゃあさ、俺が入れ物作ってやるから、さくらはそれに魔法をかけてくれよ』
『うん』
『じゃ、ちょっと待ってな、入れ物に向いた木を切ってくるぜ。さくらはポーションの空き瓶に移せる分だけ移しといてくれ』
『うん』
私がポーションの空き瓶に出来立てのポーションを入れ終わるころ、アオイは直径1mくらい、長さ3mくらいの丸太を持って帰ってきた。
『流石北の崖の上だな、なかなかいい木材があったぜ! んじゃ、ちゃちゃっと作っちまうから、ちょっと待ってな』
『うん』
アオイは器用に魔法で木をいじって、30cmくらいの樽を作る。そしてそれを横倒しにすると、転がらないように足を付けて、樽の下の方に口みたいなのをブスッてくっつけた。あれ? これって。
『ねえねえアオイ、これって』
『お、さくらも知ってたか? こいつは酒樽とかいうやつだな! 人間がよくこういうのに、酒っていう飲み物を保存してるんだよ。それを真似てみたけど、どうよ?』
『うん、かっこいいかも!』
『んじゃ、後は魔法頼むぜ?』
『うん!』
私はアオイ特製小型酒樽に空間拡張の魔法と保存の魔法をかける。
『ほう、やっぱいい腕だな、完璧だ』
『じゃあ、移しちゃうね』
『ああ』
私は巨大すり鉢ポーションの中身を酒樽に移す。うん、これで今度こそ完成だね! 何て言うか、ポーションサーバーって感じでかっこいいね!
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