第31話 籠城戦の準備をしよう。ご飯編

 ロジャー将軍と会って第2拠点をもらった翌日。私は人間としてのいままでの拠点であった、湖の貴婦人を発つことにした。湖の貴婦人は、豪華なお部屋に美味しい食堂もあって、十分すぎるいい宿屋さんなんだけど、ロジャー将軍に用意してもらったお城のお部屋の方が、何かと都合がいいからね。


 オーナーのジュディさんも、最初は私が出ていくことに反対というか、出ていかれるんですか? っていう顔をしていたんだけど、ロジャー将軍から、お城の中のお部屋をもらったことと、その証拠のロジャー将軍の紋章入りの鍵を見せると、なんかホッとしたような顔をされて、快く見送ってくれた。


 食堂のご飯は美味しいし、ゼニアさんの拠点でもあるので、頻繁に通うことになりそうだけどね!


 とはいえ、まずはお城の中の第2拠点をより便利に、快適にしないとだね! ミノタウロス達との防衛戦も近いのに、そんなことしてていいの? って思われるかもしれないんだけど、これはロジャー将軍に言われたことなんだよね。ミノタウロス達との防衛戦は場合によっては長引くかもしれないみたいで、その場合、拠点の快適さはけっこう重要なんだって。だから、本格的な戦いが始まる前に出来るだけ快適に過ごせるように工夫しないとね!


 というわけで、今日は街でショッピングを楽しみつつ、第2拠点の快適性向上のために頑張ろうと思います。






 快適な生活と言われて私が思い描くのは現代日本だね。つまり、現代日本並みの衣食住が確保出来れば、私にとっては十分だよね! そして、お部屋はすでに立派過ぎるお部屋があるし、服もキジトラ柄の迷彩服があるから、ここは食べ物と服を重点的に買いに行こうかな。


 というわけでまず訪れたのは、香辛料屋さんだ。ご飯は一番重要だもんね!


「こんにちは~」

「は~い、いらっしゃ~い」


 香辛料屋さんの中には、多種多様ないろいろな香辛料が置いてある。お塩も胡椒も何種類もあるってすごいよね。


 私はまずはお塩でしょってことで、お塩コーナーでいろいろと見てみる。なるほど、お塩は海のお塩でも産地によって味が違うし、岩塩なんかもいろいろあるんだね。とはいえ、自分で選ぼうにもその知識が無いんだよね。ここはお店の人に聞こうかな。


「あの~、すみません。こちらのお塩はいろいろありますけど、どれがおすすめなんですか?」

「ご予算や用途を聞かせていただいてもよろしいでしょうか?」

「お金は大丈夫です、いっぱいあります! 用途は、ミノタウロス達との防衛戦時に備えて、美味しいものが食べられるようにしたいという感じです」

「なるほど、確かに防衛戦時に同じ食事ばかりでは飽きてしまいますものね」

「はい」

「では、普段の食事では絶対に出てこないような高級塩をお勧めいたします。例えばこちらの岩塩は、強力なモンスターの生息域と言われるこの街の北方で取れた岩塩になります」

「味は美味しいんですか?」

「もちろんです! 強力なモンスターが生息する地域というのは、イコール自然界の魔力が濃い場所なのです。ですので、そういった自然界の魔力の濃い場所で採集された植物や岩塩などにも、その濃い魔力が含まれているのです。そして、食材というのは魔力の豊富さがイコールで美味しさです! ひとなめして頂けるとわかりますが、この岩塩は別次元の美味しさですよ」


 そう言って店員さんがお塩を少しだけ取ってくれたので、私はそれを舐める。なにこれ、すっごく美味しい! こんなお塩食べたことない!


「すっごく美味しいです! これください!」

「お値段がこちらになるのですが、大丈夫でしょうか?」


 確かに値段も超高い。でも、これは本気で美味しかった。絶対買う!


「はい、大丈夫です!」

「それから、今のお塩よりはグレードが落ちますが、こちらのお塩もおすすめですよ」

「では、それもください」

「かしこまりました」


 その後も胡椒をはじめ、いろいろな香辛料を購入していく。この店員さん、売り方が上手いよね。普通の香辛料だけじゃなくって、おすすめのミックススパイスや、おすすめのドレッシングなんかも買っちゃった。






 香辛料をたくさん買った後は、飲み物屋さんへと向かう。ジュース屋さんみたいな完成品の飲み物を売っているお店もあるし、お茶屋さんみたいな茶葉を売っているお店もある。私は何か所か訪れて、こちらも大量に買いあさる。そうそう、荷物は全部お城までの配達をお願いしちゃった。香辛料も結構買ったし、ジュースは重いから、手で持ってお城まで行くのは正直つらかったんだよね。宅配サービスがあって助かっちゃったね。


 ちなみにジュースも茶葉も、強力なモンスターの生息域で取れたものはビックリするくらい美味しくて、そしてお高かった。


 それと、お茶を入れるお水は水道水でいいみたいなの。なんでもこの世界、ビックリすることに上下水道完備なんだって。しかも、現代日本並みに水道水の水質がいいみたいで、そのまま飲んでも大丈夫みたいなの。地球でも外国の水道水はそのまま飲めないって言うから、念のために水道水ってそのまま飲めるんですかって聞いたら、飲めない水道水なんてあるの? って言われたから、この街が湖の隣で特別ってわけじゃなくて、この国の常識としてそうみたい。


 しかも、この街の水はもちろん湖の水なんだけど、この湖には北や東の強力なモンスターの生息域からも水が流れ込んでいるらしくって、その影響でこの国屈しの美味しい水が水道水から出てくるみたい。ちょっとお得だね!


 でも、お水に関して言えば、強力なモンスターの生息域ではないけど、私の第1拠点、桜の木の拠点の湧き水の池のお水の方が上かな? あっちは天然水だしね。今度時間があったら汲みに行くのもいいかもしれないね。


 とりあえずこれで食の問題は解決だね。あ、食材を買ってないけど、食材はお城の備蓄が山ほどあるから、そこから持って行ってもいいよって言われてるの。だから、そこは大丈夫! なんでも、街へ籠城するみたいな戦いになるけど、湖の水路は生きているし、攻めてくるミノタウロス達は、お肉として美味しいらしくって、籠城戦だけど、食材にはあんまり困らないみたいなの。




 でも、散々買い込んでから気付いたんだけどね、私、食事に関してはあんまり文句なかったんだよね。だって、妖精の国のギルドの食堂にしても、湖の貴婦人の食堂にしても、出てくるご飯はどれもとっても美味しかったし!


 自分で料理すればいいんじゃないかって? え~っと、私の腕じゃあんなに美味しいご飯は作れないよ? あれ? っていうことはこのお買い物って、無駄遣い? そんなことないよね? ないよね?



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