第30話 お城の中の第2拠点
お昼ご飯をロジャー将軍と食べた後、デスモンドさんの案内で、私はロジャー将軍が私にくれるというお部屋へと向かう。
「この部屋にございます」
そう言ってデスモンドさんが案内くれた部屋の扉は、大きかった。ロジャー将軍はそこそこ広い部屋って言っていたけど、両開きの扉が付いてる部屋って、十分広いお部屋だよね?
「あの、扉が立派な気がするのですが?」
「お気になさらずに、どうぞ中にお入りください」
そう言ってデスモンドさんが扉を開けてくれるので中に入ると、確かに湖の貴婦人ほどではないと思うけど、十分豪華なお部屋が私を出迎えてくれる。部屋の中央には応接セットが置いてあって、窓も大きな窓が付いている。
「あの、豪華すぎませんか? このお部屋」
調度品もだけど、部屋のサイズも何というか、凄く大きい。天井もすごい高いし。
「ここは元々客室なのですよ。ですので、最低限の調度品がもとより置かれているのです。お気に召しませんでしたか?」
「いえ、ちょっと豪華すぎて私にはもったいないといいますか」
「そんなことはございません。もしお気に召していただけたのでしたら、このままお使いください」
「はい」
「それでは、部屋の中をご案内いたしますね」
デスモンドさんに案内してもらったこのお部屋は、凄く充実したお部屋だった。最初に出迎えてくれたリビングの他に、ベッドルーム、キッチン、バスルーム、トイレ、バルコニーと、普通にこの部屋で生活できるレベルの充実っぷりだ。それどころか、従者の人の部屋なるものまである。しかも、どの部屋もやたらと大きいし。
「それから、こちらにある札をドアに掛けて置いていただければ、部屋のお掃除や洗濯、食事の手配等、こちらでやらせていただきます」
「あの、そんなことまでしてもらっていいのですか?」
「もちろんです。例えば料理ですが、いくらキッチンがあるとはいえ、この部屋は城の中でも少々奥まった位置にありますので、食材を運び込むのが大変です。それに、洗濯はそもそも設備がありませんし、掃除に関しても同様です。ですので、そのあたりのことはこの札を使い、遠慮せずにお任せください」
「ありがとうございます」
「それから、こちらの鍵をお渡しいたしますね。この部屋全体の鍵であり、各小部屋の鍵にもなっておりますので、例えばサービスの者に入られたくない小部屋には、鍵を掛けて置いてください。もちろん大元の扉に鍵をかけていただければ、部屋に無断で立ち入ることは出来ません」
「あの、2本あるのは?」
「普段ですと1本は予備の鍵としてこちらで管理するのですが、お渡しいたします」
「いえ、無くすかもしれませんので、1本は通常通り保管してください」
「かしこまりました。では、1本はお預かりいたします。それから、そちらの鍵にはロジャー将軍の紋章が刻まれており、一種の身分証明書としても使用できます。例えばこの城に入るのにも、その鍵を門番に見せていただければ問題ありませんので、ご利用ください」
「はい、ありがとうございます!」
「では、後はこの城に関することのご案内をしたいのですが、お時間よろしいですか?」
「はい、お願いします!」
その後も、このお城の構造、設備、立ち入り禁止の場所などなどを、デスモンドさんから丁寧に教えてもらった。そして、一通り案内してもらってわかった。私が覚えるべきなのは、この部屋といくつかの施設、それとお城の入口への通り道だけだっていうことを。あんまり欲張って覚えようとしても、きっと迷子になる。
そして、その日はそのまま泊まることはせず、一度湖の貴婦人に戻ることにした。私の第2の拠点は、もともと客室ということもあって、すぐにでも泊まれるっぽかったんだけど、荷物とか、湖の貴婦人に置きっぱなしのものもあったからね。そして何より、ゼニアさんに戦勝報告をしたかったんだよね! というわけで、ゼニアさんを捕まえて、一緒にお夕飯を食べる。
「さくらさん、面会はどうでしたか?」
「はい、ゼニアさんのアドバイスのおかげもあって、万事うまくいきました! あの男の監視の件も、ロジャー将軍に言って、ガツンとやってもらえることになりました!」
「あら、それは素敵ね。その様子だと、監視の件はあの男の独断だったということで当たりだったのかしら?」
「そうだと思います。ロジャー将軍も知らなかったようなので」
「やっぱりそうよね、ロジャー将軍はそういうことをするタイプとは思えないもの」
「はい、私もそう思います。ロジャー将軍は見た目はちょっと怖かったですけど、ゼニアさんの言う通りいい人でしたし、そういう監視みたいな事をしそうな性格の人には思えませんでした」
「ふふふ、そうでしょう? あの男がロジャー将軍からガツンと言われているところを見れないのが少し惜しいけど、万事うまくいったようで良かったわ」
「ありがとうございます。でもガツンの件は確かにそうですね。目の前でガツンとやってもらえば良かったのかな?」
「まあ、あんな男のことは忘れて、女同士の話をしましょう。さくらさんはお城にお部屋を頂いたのですよね? ということは、近いうちに移る予定ですか?」
「はい、明日いろいろ買い揃えて、移っちゃおうかと思います」
「そう、それは寂しくなるわね」
「私もせっかく仲良くなれたのに寂しいですが、訳あって一人きりになれる拠点がどうしてもほしかったのです」
「今度、無事にミノタウロス達を退治したら、お邪魔してもよろしいかしら?」
「もちろんです! ご招待しますよ!」
「ふふふ、ありがとう。実は、明日からハンターとしてとある作戦に参加するために、街から離れることになっていたの。最後に面白い報告が聞けて良かったわ」
「あの、危険な任務なのですか?」
「そうね、多少は危険かしら。でも安心して、死ぬつもりなんてさらさらないから」
「絶対無事に帰ってきてくださいよ?」
「ええ、もちろんよ」
この後も、私はゼニアさんと楽しくお夕飯を食べた。私とゼニアさんは、職業も年齢も性格も違うけど、不思議と気があうんだよね。やっぱり気の合う仲間がいるっていうのは良いよね!
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