第9話 初めてのお買い物

『じゃ、早速買い物に行こうぜ!』

『うん、街に行くの?』

『いや、売店だ! そこにあるだろ?』


 アオイの視線の先には、売店と書かれたカウンターがあった。でも、物がどこにも置いてない。ううん、カウンターの中に置いてあるんだ。これって、日本によくあるような、陳列棚からほしい物をレジに持っていくっていう方式じゃなくて、レジでほしいものを言って、取ってもらう方式なのかな。


 アオイは売店に近づくと、小さ目な冊子2冊取ってから、喫茶店みたいな部分で腰を下ろす。


『さ、カタログを見ようぜ』


 そして、1冊を私に渡してくれる。なんか、喫茶店のメニュー表みたいだ。私もサイコキネシスでカタログをめくる。


『へ~、いろいろあるんだね』

『だろ? 狩りで遠くに行くこともあるからな。野営用の道具なんかは一通り揃ってるんだよ。ほれ、こっちのページに、塩胡椒を始めとした香辛料関係も揃ってるぜ。あの干し肉レベルのものを作るのは大変だが、塩胡椒だけでもあれば、狩りで仕留めた獲物を食うにも、だいぶ味は変わるぜ』

『うん! 塩胡椒は絶対にほしいな。あ、でも、私の手持ちのお金で買えるかな?』


 地球だと、大航海時代なんかの頃の胡椒は高かったっていうもんね。ていうか、スパイスって、ものによっては今の日本でも結構高かったし。


『大丈夫だぞ。まあ、香辛料はものによっちゃあ値の張るのもあるけど、そんな高いのはここじゃあ扱ってない。そういう高級香辛料は、街の専門店に行かなきゃないな』

『なるほど、なら安心だね』

『普通の塩胡椒もおすすめだけど、その他には、こいつをお勧めするぜ』

『これは?』

『こいつは数種類の香辛料を混ぜたやつなんだ。ここの料理人が作ったやつなんだけど、肉を焼いてからこれをパラパラっと振りかければ、どんなお肉でもたちまち美味しくなるって代物だ。味のほうも、好みにもよるが、そんなに悪くないぜ。俺も塩胡椒に飽きるとたまに使ってる』

『へ~、面白いね』


 この世界のミックススパイスか~、面白そうだし、これも買ってみようかな。これで美味しい肉料理がいつでも作れるね! やっぱり快適な食生活に塩コショウや香辛料は欠かせないよね。


 あと必要なのは、ポーションを入れる瓶かな? それと、常識を仕入れたい。え~っと、ポーションはっと。


『ねえアオイ、このポーションの容器って売ってないのかな?』

『ポーションそのものじゃなくって、入れ物だけでいいのか?』

『うん』

『う~ん、正規の売り物じゃあないが、頼めば安く仕入れてくれると思うぞ』

『ありがとう。あと、私ってちょっと常識知らずなところがあるから、常識を知れる本とか売ってないかな?』

『ん~、それなら、図書室に行ってみたらどうだ?』

『図書室?』

『そうだ。図書室にはいろいろな本があるから、大抵の知識は仕入れられるぜ。俺もこっちに来たばかりのときは、周辺のモンスターの分布とか、この国の生活様式、妖精の国との違い、あとは妖精の国とこの国の歴史や政治的な関係とか、一通り調べたぜ』

『そうなんだ。じゃあ、この後寄ってみるね』

『ま、今は買い物しようぜ。もう買うものは決まったのか?』

『うん』

『じゃ、カウンターへ行くぜ』


 私はカウンターにあった鈴を鳴らす。すると、さっきの受付の妖精さんがこっちに移動してくる。まさかとは思うけど、ハンターギルドの受付って、ワンオペなの?


「はい、何を買いますか?」

『えっと、塩と胡椒、それと、この料理人おすすめのミックススパイスを下さい。あと、カタログになかったのですが、ポーションの空き瓶がほしいです』

「ええ、分かったわ。ポーションの空き瓶は今はないから、受け取りは明日でもいいかしら?」

『はい』

「じゃあ、お代はちょっとおまけしてこのくらいでどうかしら?」


 金額を出してくれるけど、そもそも貨幣の価値がぜんぜんわかんない。


『はい、これでお願いします』


 なので、私はさっき貰ったお金を、袋ごと渡す


『それと、ここで言っていいのかわからないのですが、図書室をお借りしたいのですが』

「ええ、大丈夫よ。図書室は奥にあるから、遠慮なく使ってね。ただ、持ち出しは禁止なの。だから、図書室の中でだけ見てね」

『はい』

『うっし、じゃあ、図書室まで案内してやるよ』

『ありがとう!』


 私は買い物を済ませると、買ったものは全部袋に入れてもらって、それをもってアオイと図書室へと向かう。


『それじゃ、俺はいくぜ、また何かあったらいつでも聞きに来な。俺は大抵ここの食堂で飯食ってるし、寝てる場所も、ここの職員に聞いてくれりゃあみんな知ってるからな』

『うん、今日はありがとう!』

『いいってことよ!』


 私はアオイが見えなくなるまで見送る。


 さってと~、次アオイに会った時に、私の常識猫っぷりを発揮するためにも、がんばって学ばないとね!



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